巻頭企画天馬空を行く
指導者として超一流を目指す
今岡監督は、現役時代にも華々しい結果を残している。2003年首位打者、2005年には打点王を獲得。147打点という数字は、プロ野球歴代3位を誇る記録である。あらためて、ご自身の野球人生を振り返っていただいた。
「もともと僕が野球を始めたのは、親戚が少年野球のコーチをやっていたのがきっかけです。青春時代はずっと丸刈りの野球少年で、プロ野球選手以外の夢は考えたこともありませんでした。そんな夢が目標へと変わっていったのは、PL学園高校に入学したときです。実際にプロ野球選手を輩出している環境に身を置く中で、意識するようになりました。しかし当時の自分の実力では、まだプロの世界で通用しないと思いましてね。それで、東洋大学に進学しました。大学3年生の頃に、『今の俺だったら絶対にプロの世界で戦え抜ける』と確信したんです。そして1996年、ドラフト1位で阪神タイガースに入団。プロ野球選手としてのキャリアをスタートしました。
本当のレギュラーとして活躍できたのは5年間くらいでしょうか。短いですよね。そういう意味では、選手としては二流だったかもしれません。振り返ってみると、こうしておけば良かった、妥協しすぎてしまったと思うことはあります。その反省を生かすことで、今の僕は指導者として超一流になることを目指しているんですよ。指導者は他人と組織の探求が仕事です。そのため、己のさらなるパフォーマンスのみを求め続ける現役の考え方とは、アプローチの仕方がまるで違ってくる。それゆえ、現役のときの思考のままで選手に指導してもまったく通用しません。その点、僕は選手個々の能力や組織のポテンシャルを引き出すため、決して妥協しない強さを持っているんです」
すべては選手のために
名選手であっても、名監督になれるとは限らない。選手と監督では、必要になる能力が違うからだ。指導者として、超一流を目指す今岡監督のモチベーション、そして今後の抱負をうかがった。
「結局のところ今の僕のモチベーションは、頑張っている選手を優勝させてあげたいということに尽きるんですよね。どの選手も本当にひたむきになって、野球に取り組んでいます。その思いに何とか応えてあげたい。千葉ロッテマリーンズが最後にリーグ1位で優勝をしたのは、井口監督と僕の生まれ年である1974年。およそ半世紀ぶりの悲願を果たしたいですね。そこに向けて、みんなが一丸となっています。僕はロッテのユニホームを着ることができる限り、みんなの思いをかなえられるよう職務を全うしていく覚悟です!」
(取材:2020年5月)
取材 / 文:鈴木 貴之
写真:竹内 洋平
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