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Challenge+(チャレンジプラス)

巻頭企画天馬空を行く

バレーボール界を変えたい

栄光と挫折。バレーボールを通じて得た経験を子どもたちに伝えている大山さん。同時に、現在のバレーボール界の在り方に疑問を抱いている。

「バレーボール界を変えたい。これが私の活動信念です。今のバレーボール界では、せっかくバレーボールを好きになってくれた子どもたちが、不幸になってしまうことが多々あるのです。『勝利至上主義』のもと、大人たちから子どもたちが駒のように使われてしまい、ときには悲しいニュースが報じられることも。それが、今のバレーボール界なのです。実際、私のもとにもたくさんのSOSが届きますし、そのたびに胸が痛くなります。子どもたちがバレーボールを通じて、どうしてこんなつらい思いをしなくてはならないのだろうと感じてしまうこともある。そうなってしまうのであれば、バレーボールを辞めてみたり、他のスポーツをやってみたりしてもいいし、無理にスポーツをやる必要もない。というように思うわけです。バレーボールを好きになってくれた子どもたちには、バレーボールを通じて幸せになってほしい。続けることで不幸になる子がいては絶対にいけません。そのためには、子どもたちの周りにいる指導者や保護者など大人の意識改革が必要だと、私は考えています。
 そういった意味では、2020年東京オリンピックを機に、みなさんのスポーツの見方や価値観が変わっていけばいいなと思っています。どうしてもメダルの色や数、そういったことばかりに焦点があたりがちですよね。確かに、メダルを獲得するのは素晴らしいこと。でも、それ以上に肝心なのは選手やチームがそこに至るプロセスそのものだと思うんです。『メダル至上主義』からの脱却が、バレーボール界だけでなく日本スポーツ界の大いなる前進になると信じ、私もできる限り情報を発信していきます」

苦楽を共にした戦友たちの存在

取材を通じて、バレーボールへの「感謝」を幾度となく語ってくれた大山さん。誰よりもバレーボールを愛するからこそ、現状を憂い、明るい未来を切り開くべく、提唱を続けているのだろう。最後に、そんな大山さんにとってバレーボールの魅力とは何か。シンプルな質問をぶつけてみた。

「一人ではできないところです。バレーボールはチームスポーツであり、それでいて同じチームスポーツのサッカーやバスケットと異なるのは、一人の選手がボールに触れることができるのは一瞬だけということ。いくら才能が抜きん出た選手でも、1人で点を出ることは絶対にできない。ドリブルで相手をかわし、ゴールできませんからね(笑)。だから、個々の力以上に仲間との信頼関係が重要なのです。ミスもたくさん起こりますけど、そのたびに仲間同士フォローしあっていくのが魅力だと思っています。
 私は、バレーボールを続けてきてよかったと最近よく思います。それは決して日本一になれたからとか、ワールドカップやオリンピックなどの大舞台で試合に出場できたからではありません。楽しいときはもちろん、つらいとき、苦しいときにそばにいて励ましてくれる仲間に出会えたからです。一緒にバレーボールをやってきたみんなとは今でも仲が良いいですよ。そんな仲間の存在は、私にとって一生の宝ものと言えますね」

(取材:2019年12月)

 

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