巻頭企画天馬空を行く
組織はビジョンの浸透により成長する
「何を実現したいか」をたびたび口にして強調する上土氏。学生時代から変わらない一貫したその姿勢は、同氏が実践する経営スタイルにも表れている。
「私が志向するのは、言うなれば『ビジョン経営』です。会社や事業のトップは、何のためにこの事業を手掛けていて、社会に対して何を成し遂げたいのか、その世界観を語るべきだと考えています。それが、会社に意志がある、ということ。社員にも、それを理解し、共感した上で働いてもらうことが大切です。そうして会社の意志に一人ひとりが共感できれば、皆が自分の中に『こういう仕事をしたい』という内発的動機を持てるはずです。その動機は、個々人が良いパフォーマンスを発揮するために欠かせないもの。つまり、トップに立つ人は、社員の内発的動機を喚起できる組織づくりをするべきでしょう。また、その一点さえ守れていれば、それ以外は自由で良いと考えています。働き方も仕事観も含め、いろいろな考えや目的を持って働く仲間が集まるのが会社だと思いますしね。
そして会社側は、内発的動機を持つ社員がオーナーシップを持って仕事を進めていけるように、社員の判断ですぐに意思決定でき、瞬時にアクションを取れる体制を築いていなければなりません。今の時代、経営者や上層部だけでは答えなど出ません。それは、答えがマーケットにしかないからであり、そのマーケットや顧客のより近いところにいる社員たちの判断が重要なものであるからです。強い組織やサービスをつくるには、社員にとっての『手掛ける仕事』『会社の方針』『自身の考え』──この3つの軸を同期させてあげることが不可欠ではないでしょうか」
HR業界のさらなる可能性を探って
まだまだ進化途中にあるHR業界、そして「LINEバイト」において、「実現したいことはたくさんある」と話す上土氏。現時点で、どのようなビジョンを思い描いているのだろうか。
「これは一例ですが、労働者の待遇に関して言えば、今は雇用形態で給与がある程度決まってしまっています。アルバイト・パートなら、時給一律1000円であるとか。ただ、仮に飲食店において、気の利く店員が完璧なタイミングで『ドリンクのお替わりいかがでしょうか?』と尋ねてきたら、もう一杯頼もうと思うかもしれません。そうすると、その店員が働いているおかげで客単価が1000~2000円も上がり、お店の売上にしっかり貢献するようになるわけです。その上質なサービスができる店員も、それができない店員も、同じアルバイトというだけで同じ時給が支払われる。この状況は、明らかに社会における矛盾だと思っています。現状、こうした雇用形態ではなく、働きぶりに応じて対価が支払われる状況をつくるにあたっては、規制や構造が生み出すたくさんの壁が立ちはだかることでしょう。それでも、いずれ解決されるべき課題であるなら、そこに寄与するサービスを提供していきたいのです。
また、この雇用形態で切り分けるやり方は、HRのマーケットにも根付いています。今、多くの求人情報サービスは、アルバイト・パート、派遣、新卒採用、転職・・・といったように、雇用形態ごとにサービスがつくられて提供されています。しかし、本来ならもっといろいろな切り分け方ができるはず。例えば、業界ごとに採用情報をまとめてみても良いわけです。
こういったサービスは『LINEバイト』においても、あるいはプラットフォーマーという点を生かした新しい事業においても、チャンスをつくって展開できると思っています。いずれにせよ、世の中にない新しいHRサービスをどんどん生み出していきたいですね。そのために今は、個人的に業界の分析や現状の整理をしている段階ですから、準備が整い次第、爆速で進化させていきたいと思っていますよ」
ありたい自分を求め、挑戦を続ける
常に業界を俯瞰的に捉え、先を見据えてアイデアを出していく上土氏。そんな同氏には、個人的な夢や目標もある。
「自分自身は、『マーケットをポジティブに変革できるビジネスリーダー』でありたいと考えています。その根底を築くには、第一に自らが主体的であり続けることが不可欠。そして、主体者として周囲やマーケットに関与し、それがポジティブに変わっていくような何かを仕掛けたい。その影響を及ぼせる範囲が広ければ広いほど、私もわくわくするんです。
それを実践する場所として、今は社会的課題の大きいHR業界を選んでいます。でも、他の業界にもそのチャンスがあるなら、果敢に挑戦していきたいと思っているんですよ。中でも、やはりいつかは私のバックボーンである建築の領域でそれを手掛けたいという夢があります。個人に快適な空間や環境を提供し、ハッピーにできるようなサービス。これは、ビジネスとしてなのか、プライベートな取り組みとしてやるのかは分からないですが、必ずや実現させたいですね」
上土氏の口からは、「かなえたいこと」への思いが尽きない。今まさに挑戦をする真っただ中にいる同氏にとっての、「挑戦」の意義を尋ねた。
「挑戦とは、『自分が自分らしくあること』、それだけですね。結局のところ、自分の幸せを真に考えられる人は、自分しかいません。『将来幸せでありたい』『自分の理想の生き方をしたい』・・・そういう思いをかなえるには、自分自身が真剣に考える他ないのです。人生に大きく影響する仕事やキャリアのことなら、なおさらでしょう。私が学生時代、挑戦できなくなりそうな道を選ばなかったように、たくさんの制約の中で本当にやりたいことを追求していく過程には、必ず挑戦が生じます。それを乗り越えていくからこそ、人生一度きりのキャンバスに、自分らしい絵を描けるのだと思います」
(取材:2018年6月)
所在地 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿4-1-6 JR新宿ミライナタワー23F |
設立 | 2015年2月2日 |
資本金 | 3億円 |
URL | https://baito.line.me/ |
巻頭企画 天馬空を行く