一歩を踏み出したい人へ。挑戦する経営者の声を届けるメディア

Challenge+(チャレンジプラス)

巻頭企画天馬空を行く

20170501_tenma_h1-02

 

一隅を照らすことで、活動を広げる

20170501_tenma_ex03社会の流れに合わせつつも、自分が正しいと思うことをひたすらに信じて突き進む。シンプルな哲学でありながら、刻一刻と変化する政治・経済動向に大きな影響を受ける企業経営において、その考えを実践し続けるのは決して容易いことではない。しかし中村社長は、この経営論を掲げるようになり、自分の中から迷いが無くなったという。

「ここに行き着くまでには色々な背景がありました。仕事で失敗して、会社が破綻しかけたこともあります。でも今になって振り返ると、そうした経験があったからこそ、仕事において本当に大切なことが分かってきたのだと思います。世の中に必要とされている間は、どうなってもやっていけるだろうと。『世のため人のため』と口では言っていたものの、月が欠ける時期がなければ、その本質に気付くことはできなかったはずです。
 ちなみに、こうして自分の中の軸が定まってからというもの、不思議なほどに人とのご縁が広がってきたんです。しかも、思いが通じ合える方と出会うと決断が早く下せるので、展開が進むのも早いんですね。例えば、2017年4月からは『戦国フォトスタジオSAMURAI』の京都支店がオープンしたんです。これは、忍者をテーマにしたエンターテインメントレストラン『NINJA KYOTO』を手がける方との出会いがあって実現した、コラボレーション事業。レストランの中にスタジオを常設し、忍者と侍が出会った、というユニークなテーマで売り出しています。こうやって、互いに相乗効果のあるコラボレーションを増やしていき、皆さんにもっと楽しんで頂けるものを追求したいですね。同様に、海外の企業ともうまく連携を図って、世界版の『戦国フォトスタジオSAMURAI』を立ち上げるのが、近い将来の目標です。
 実は、会社としては既存の事業を(株)アンビエンテと(株)アミューズプリント、フォトスタジオ事業を(株)サムライアローズとして分社化し、ヘキサゴングループをつくることにしました。こうすることで、一つひとつのブランドのカラーをさらに濃くしながら、新しい展開を増やしていきたいですね」

思いに共感し合える人とつながり、自然に活動範囲を広げていきたいと話す中村社長。一方で、個人的な夢や目標が定まっているわけではないのだという。

「自分の夢は、人の夢とイコールなんです。出会った人の夢を応援したいな、と思うと、そのときから人の夢が自分の夢になっている。自分の照らす明かりで人が楽しくなってくれたら・・・という思いと同じですね。だから、人と出会えば出会うほど自分の夢が膨らんでいくし、その意味で夢はどんどん変わっていきます。例えば、スタジオのポージングを監修してくださっている島口さんの『剱伎道』という新しいメソッドを世界中に広めるという夢も、『NINJA KYOTO』の“忍者文化”を世界に発信したい、という夢も、全部が私の夢。出会った人が『楽しい』と思ってくださることと、『かなえたい』と思っていることを応援する──それが、私が続けていきたいことなんだと思います」

仕事のコツは「楽しさ」にあり

中村社長に話を伺っていると、「楽しい」という言葉がキーワードになっていることに気付く。これほどまでに仕事を楽しめる、その秘訣は何なのだろうか。

「当社のスピリットには、『Enjoy!』という言葉を掲げています。これは、論語にある『知好楽』を元に掲げたものです。仕事を『知っている』人も、『好きである』人も、『楽しめている』人にはかなわないのです。しかし一方で、この『楽しむ』は、まず仕事を知り、好きになり、さらにその先に得られる感情だと思っています。『この仕事を知ってみたい』『この仕事が好き』という思いで働き始める人はいっぱいいますが、楽しめるところまで到達できる人は決して多くありません。逆に、楽しめるようになった人は、その仕事の本質を知ることができたということ。そこまで行けば、少しくらい辛いことがあっても、何だって続けられるようになるはずです。当社では、全員がその『楽しさ』に行き着けるようになることを目指しています。
 私は、イソップ寓話の『北風と太陽』の話が好きなんです。北風と太陽のどちらが旅人のコートを脱がせられるかを競う有名な話ですが、結局服を脱がせることに成功したのは、風を吹き付けてコートを強引に飛ばそうとした北風ではなく、温かな日射しを当て続けた太陽でした。太陽の勝因は、相手のことをよく考え、旅人自身が自然と行動するように促したことですよね。私も太陽のように、他社やお金ではなく、お客様のことを見て仕事をしていきたい。そして、お客様のためになることを精一杯やっていけたら、その先の結果はある程度自然の流れに委ねていいと思うんです。そうやっているうちに私自身、いつしか『仕事をしている』という感覚がなくなってしまったんですよ。お客様の思いや、出会う方の夢が全部自分のものになることは、プレッシャーがある一方で、嬉しくて仕方ないからです。だから、やはり一隅を照らし続けることと、それに夢中になること。楽しく働ける秘訣を挙げるとしたら、そこに尽きるのだと思います」

(取材:2017年3月)

株式会社 ヘキサゴン

創業   2000年4月1日
設立   2001年8月1日
資本金  1000万円
所在地  〒151-0053
東京都渋谷区代々木3-35-10代々木オーシャンビル3F
URL http://www.hxg.co.jp/

 

1 2 3