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Challenge+(チャレンジプラス)

巻頭企画天馬空を行く

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最新の民間宇宙飛行で自ら宇宙へ

また、宇宙に行く人のニーズを実現するには、それに適した宇宙船を提案する必要がある。そのために、山崎氏自身があらゆる宇宙船に乗っておかなくてはならないと考え、複数の宇宙船による宇宙飛行に申し込んだという。その中で最初の契約を結んだのが、ヴァージン・ギャラクティック社の宇宙船だ。

「僕は普通に宇宙飛行を契約するのではなく、ヴァージン社のリチャード・ブランソン社長に直接お会いしてその場で契約書にサインをもらい、一緒に写真を撮りたいと思ったんです。そこでアポなしでイギリスへ行き、ヴァージン社が展示する航空イベントに参加してみました。すると、たまたまリチャード社長が記者発表を行っていて。ファンに紛れて話しかけに行ったものの時間が短くて本題を話せなかったので、イベント終了後に出待ちしたんです。すると『また君か』と言われ(笑)、ヴァージン社の宇宙飛行が決まっている人を集めたパーティに招待して頂くことができました。そして、パーティでついに契約書にサインをもらえて、さらにリチャード社長本人に保証人になってもらうことができました。
 れからも同じ作戦で色々な宇宙飛行に申し込むことができ、現時点で3社の宇宙船に乗って4回宇宙飛行することが決まっています。2017〜2018年頃には、実際に宇宙に行くことができそうです。ちなみに、社長に直接宇宙飛行を申し込んで一緒に写真を撮ってもらうこの方法は、『宇宙飛行契約サポート』というサービスとしてお客様にも提供しています」

地球をマーケットにする時代

類まれなる行動力で、次々と新たな宇宙ビジネスを立ち上げていく山崎氏。一方で、多くの日本人にとって「宇宙に行く」「宇宙でビジネスをする」ということは、どこか現実味を帯びない話かもしれない。その現状について、山崎氏は次のように指摘する。

「日本は未だに国家事業として宇宙開発を進めていて、宇宙に行けるのは『宇宙飛行士』として選ばれたごく一部の人間だけ、というイメージが根強いのです。そして既得権益が非常に強いため民間企業も参入しづらく、結果として世界に遅れをとってしまっています。宇宙飛行ができるのは、国に認められた優秀なヒーローだけではありません。現に、宇宙飛行に申し込んでいる人の年齢は、乳児から90代まで様々。誰でも宇宙に行ける時代がやってきているんですよ。
 また、昨今の日本ではグローバル人材の育成が必要だと叫ばれていますが、『日本から世界へ』というような発想では時代遅れです。なぜなら、これから先のビジネスは横ではなく縦に広げることを考えなくてはならないからです。“特定の国”で売ることではなく、“地球”で売ることを前提にして、その上で“宇宙”で売るには、“火星”や“月”で売るには・・・といった発想をしていかなければなりません。いわゆる『グローバル』ではなく『ユニバーサル』な視点──例えば、Apple社が全言語に対応したiPhoneを世界同時発売するような、世界共通のサービスやものづくりが必要になるでしょう。その意味で宇宙ビジネスは、マーケットを地球規模にするためには最も手っ取り早い方法なんです。
 この先、宇宙ビジネスによって大きな革命が起きると思っています。今は宇宙旅行が注目されていますが、これはあくまで富裕層向けの宇宙体験に過ぎません。そこで多くの会社は、これまで上に飛ばしていた宇宙船を斜めに飛ばすようになるでしょう。そうすれば、宇宙空間を通過してどこか別のところに着陸できるようになる。つまり、海外への交通手段が飛行機から宇宙船に変わっていくはずです。宇宙船のスピードは、飛行機の約10倍。数分で宇宙空間に飛び出せますし、そこには空気抵抗もありませんから、慣性の法則が働いてエンジンをストップした状態で飛べるわけです。地球の反対側まで1時間程度で行けますし、何時間も燃料を燃やし続ける飛行機よりずっと経済的ですから、利用者が増えれば値段も飛行機より安くなるでしょう。
 そして国と国を宇宙船で行き来できるようになると、外国の会社や学校に通うことができるようにもなるなど、住んでいる国はもはや関係なくなるでしょう。だから、地上のマーケットの取り合いなんかする必要がなくなるんです。IT革命で世界は劇的に変わりましたが、次は仮想的に情報が流れるのではなく、本当に人が移動できるようになっていくのです。こうやって考えると、近い将来、皆さんが想像しているよりもずっと宇宙は身近なものになりますし、そのときには地上のあらゆるものが宇宙仕様になっている必要がある。宇宙ビジネスが他人事ではなくなるはずですよ」

きっかけを与えてくれた土星に

宇宙ビジネスがその加速度を一層増していく中で、山崎氏自身はどんなビジョンを描きながら歩んでいるのだろうか。

「色々な仕事をする人とコラボレーションをしながら、ゆくゆくは1000社のグループ企業をつくろうと思っています。企業の規模は問わず、もちろん個人で活動されている方でもいいので、あらゆるサービスや商品と宇宙を結び付けて、横のつながりが生かせるホールディングスをつくりたいですね。また、グループ企業とは別に1000社と顧問契約を結ぶことも目標です。これは、宇宙ビジネスに興味がある会社の顧問を無料で引き受けるというもの。実際に仕事が生まれてもお金は発生しませんが、代わりに事例を集めさせて頂きます。そうすれば、その会社にとっては宇宙の専門家を無料で顧問に付けられますし、僕にとっては会社として携わった様々な事例が顧問の実績となって蓄積されていくわけです。
 ──ただ、本当に自分が何をしたいかと言うと、最終的には土星に行きたいんです。小学生のとき、自作の天体望遠鏡で見つけて感動したあの土星に、いつか必ず行ってみたい。とはいえ、土星に行くためには宇宙も月も火星も当たり前、という時代をつくらないと到底実現できませんから、今は仲間を増やして、宇宙ビジネスを成長させる最初のきっかけをつくっているところです。一度みんなが足を踏み入れてしまえば、あとは勝手にビジネスは育っていくはず。そして将来、僕がいざ土星に行こうというときに、食事や商品、サービスが全部整っていて、快適な宇宙飛行ができる、そんな未来を楽しみにしているんです」

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(取材:2016年12月)

株式会社 ASTRAX
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設立   2016年7月
■新宇宙ブランド「ASTRAX」
有限会社 国際宇宙サービス
設立   2005年1月
資本金  600万円
URL http://www.astrax-by-iss.com/

 

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