巻頭企画天馬空を行く
自分にしか突き進めない道を
芸能の世界で一定の地位を築きつつ、スタッフ50名を抱える中小企業の社長でもあるデビット伊東さん。世の中小企業経営者への思いを、同じ立場から語ってくれた。
「まだまだ経営のことは分からないことも多いですが、経営ノウハウを学ぶよりも目の前にいるスタッフを大切にしたほうが、より企業として成長できるのではないかと僕は思います。人を大切にすれば、人が必ず守ってくれるもの。武田信玄は自身の戦術書で『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』という言葉を残しましたが、すごく共感できますね。スタッフが成長できるよう種を蒔き、水をやって、個性という花が咲いてきたとき、個々が活躍できる場を与える─それが経営者の役割だと僕は考えているんです。
それと中小企業で働く従業員の方々には、『人には可能性はいくらでも眠っているので、自らそれを閉じないでほしい』と伝えたいですね。スタッフと喋るなかでよく感じるのですが、今の若い人って、スタート地点から自分のゴールが最初からある程度、頭のなかで出来上がっているんですよね。情報化社会のなかで生きてきたせいか頭でっかちになっているというか・・・。でもそうじゃなくて『スタート地点に立ったらまずは歩いてみない?』って僕は思う。歩きながら徐々にゴールを頭のなかに描いていったほうが周囲にある色々なものが見えてきますし、何より道中が楽しいでしょう?先入観を持たず、情報を鵜呑みにせず、ゴール地点を定めすぎないことが、自分の可能性を開花させることに繋がっていくと思いますよ」
一足のわらじを履き、二刀流で戦うデビット伊東さんは今後、どんな未来を思い描いているのだろう。
「実業のことで言うと、順調に会社が成長していれば、10年後にはスタッフに渡そうと思っています。将来、僕が食えないでいてもラーメンだけは食べさせてもらえるように(笑)。単純にスタッフの皆が潤うようにしてあげたいと思っているだけで、その実現のためにお客様に楽しんで頂けるような仕掛けを、たくさん施していければいいなと。15年にわたり出店・廃店を繰り返しながら店を続けてきて、芸能界に戻って役者としての仕事も並行してやってきて、ようやく経営者としてのスタートラインに立てたかなというのが今の率直な気持ちです。
その意味で今後、新ブランドとなる先に触れた地域再生型ラーメン店を、フランチャイズ化したいと考えています。ただしFCと言っても加盟金などで儲けようという気は毛頭なく、僕たちが失敗を繰り返しながら積み上げてきたノウハウを共有することで、地域活性や従業員の収入に繋がっていけばそれでいいのかなと。実際、今でもマカオの店舗からは利益は一切もらっていません。欲をかいて海外進出して失敗した人をたくさん見てきましたし(笑)、その店舗が海外で成長して10店舗くらいになったとき初めて、少しくらい利益をもらえたらという感覚ですね。
先は長いです。皆さんがやっていないことをやるのだから、失敗もたくさんすると思います。でも、何度も言うように失敗しても自分たちでフォローできるくらいの力が付いてきたとも感じています。僕が15年やってきて学んだのは、『底辺を磨かないかぎりそこにビルは建たない』ということ。飽和状態にあるラーメン業界において、新しいコンセプトの店舗を出す際も、それさえ守っていればなんとかなると思うのです。・・・とはいえ失敗したと思ったら、僕、撤退するのもものすごく早いですよ(笑)」
最後に「自分に肩書きをつけるとしたら?」という問いを投げかけてみた。
「もともと芸人で始まっていますから、芸人であるという意識は未だにありますね。今の芸能の仕事で言うと俳優業がメインですが、本業の役者さんには絶対に敵わないのでそれもちょっと違う・・・。ちょっと思い浮かばないですね、肩書きは皆さんで決めてください。ラーメン屋のオヤジでも何でもいいです(笑)」
(取材:2016年5月)
本社所在地 | 〒154-0015 東京都世田谷区桜新町1-8-10 2F |
URL | http://www.davidramen.com/ |
設立 | 2005年12月 |
資本金 | 2000万円 |
従業員数 | 50人 |
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