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Challenge+(チャレンジプラス)

巻頭企画天馬空を行く

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なぜ、孤独な経営者になってしまうのか

こうして適材適所でスタッフの能力を引き出している小方社長に、日々のスタッフとの接し方について聞いてみた。

「普通にみんなと飲みに行きますし、オフのときは敬語なんて使わなくても全然いいですよ。飲みの場で社会人としての礼儀に欠く若いスタッフがいたら指摘しますけどね、アドバイス的な感じで『そんなことをしたら恥ずかしい思いするよ』って笑いながら伝えます。そこで説教なんてしたら、『アンタのほうがよっぽどセンスないよ』って言い返されそうですし(笑)。
よく“経営者は孤独”なんて言いますけど、スタッフを信じていない経営者って、意外と多いですよね。それなのに『スタッフから飲みに誘われないのはなぜだ』とぼやく・・・。僕に言わせればそれは当たり前のことで、もしスタッフと飲みに行きたいのなら自分から誘わなきゃダメ。それを実践した知人の経営者は『いきなり誘ったらみんな引いちゃってさ・・・』なんて嘆いていましたけど、それは突然やるからであって、やっぱり一工夫が必要です。例えば『友達が焼肉屋を始めたんだけど誰か付き合ってくれないかな』とか、自然な形で上手にやらないとね。
 その意味で経営者を含めた世の中のオジサンたちは、努力が足りないと思いますよ。趣味は仕事です、みたいな人をよく見かけますが、当然ですが仕事だけが人生ではありません。オシャレをしたり、ミュージカルを観たり、スキーに行ったり、釣りをしたり──人生をちゃんとやらないと、つまらないオジサンになってしまいます。・・・実は僕も最近までそうだったので、あまり偉そうには言えないのですが(笑)。でも、逆に言えばオシャレをして運動もして清潔感を保っていれば、60歳でも70歳でもオジサンではないんです。そうして野暮ったさを徹底的に排除していくことが、人生を豊かにする秘訣かもしれませんね」

人生を楽しみつつ、普通の感覚でスタッフと接することが大事であると説く小方社長。さらに昨今の中小企業経営者に思うこととして、次のように言葉を続ける。

「そもそも僕は“中小企業”という呼び方自体に違和感があるんですよ。創業当時、商工会の集まりで『今後の中小企業のあるべき姿』について話し合いが持たれたとき、私は議長におそるおそる『皆さんはこの先ずっと、中小企業であり続けるのでしょうか』と聞いたんです。たまたま今は規模が小さいかも知れませんが、永遠にそうだとは限らないですよね?そう思って発言したのですが、周りにいた経営者のほとんどは、僕の言っている意味が分かっていなかった。ずっと小規模のままでも不満はないという方が多いからなんでしょうけど、せっかく起業した以上はある程度、志が高くてもいいと僕は率直に思うのです。
 それに大手とか中小とか零細とか、そのくくり自体の意味もあまりないと感じています。1人でやらざるを得ない仕事もありますし、反対に規模がものを言う仕事もあります。自分の好きな大きさを決め、自分を信じて集まってくれた仲間たちと意味のある人生を楽しむこと──これこそが本当に大事なことなのではないでしょうか。
 それとよくあるパターンですが、何が欲しいか決めて事業をしないと迷子になってしまいます。一昔前はいわゆる『地位』『カネ』『名誉』が主でしたが、価値観の多様化に連れて求めるものの種類が増えている気がしますね。ちなみに僕に関して言えば、気持ちを同じくする仲間と1つのことを成し遂げたときの喜びは、非常に感慨深いものがありますね。ですから僕は、最もこれを求めているのかもしれません。
 そもそもビジネスは1人の力だけでは成功できないものですが、もし自分1人の力でうまくいったと勘違いしてしまったら、それはそれで孤独だと思いますよ。みんなで分かち合う幸せでなければ、孤独な盃を交わすことになるでしょう?そんな人生は、決してお勧めはできません。やはり最大の相談相手は、部下であるべきではないかと思いますね。僕はみんなと同じ1人のメンバーでいたいという気持ちがすごく強いんです。部下を信じられずに孤独な経営を続けるくらいなら、そのときだけは、いい意味で普通のオジサンでいてもいいんじゃないかと思いますね(笑)」

これからの時代に求められる能力

唯一無二のビジネスモデルを生み出し続けてきた小方社長だからこそ、今の日本社会に対して思うところがあるという。最後にその点について、語って頂いた。

「今の日本企業は、特に最近ではIT企業にみられる傾向ですが、右に倣えでどこも同じ会社になろうとしているように僕には感じられます。他社でうまくいっているサービスを必ずやりたがる、といった風潮ですよね。この現状があるので正直、日本にはグーグルやアップルのような会社が出てくる土壌があるとは言い難いです。しかし世界経済で考えた場合、例えば先に挙げた企業やアマゾン、アリババ、フェイスブックなどのIT企業は、極論を言えば1人も送り込まずに各国から巨額の外貨を奪い取ってくることのできるシステムを構築しているわけです。これは明らかに、新しい種類の経済戦争なんですね。正直、とんでもない驚異なわけで、国も外貨を稼げるサービスを応援すべき状況にあるにもかかわらず、なかなかそうした企業が出てこない・・・。だからこそこれからは自社で率先して、そうした取り組みもしていけたらと。
 これらはIT業界に限らず、どの業界にもあてはまる問題だと思います。私は20年近くこのことについて悩んでいるのですが──その答えはおそらく、高度経済成長期から作れば何でも売れた時代が長く続いたため、創造力を鍛える必要に迫られなかったからだと思うのです。でも、歴史が物語っているように日本人はやればできる民族です。ここはじっくり腰を据えて、その能力を鍛えていかなければなりません。これからの時代に本当に求められていくのは想像力ではなく創造力──クリエイティブな力なのではないでしょうか」

(取材:2016年3月)

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株式会社 ラクーン
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設立 1993年9月
資本金 813,467千円(2015年10月31日現在)
従業員数 111名 うち社員99名(2015年10月31日現在)

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