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高橋 恭介 TAKAHASHI KYOSUKE
千葉県生まれ。1998年に東洋大学経営学部を卒業後、興銀リース(株)に就職してリース営業と財務を経験する。その後、2002年にブライダルジュエリーの企画・販売を手がけるベンチャー企業、プリモ・ジャパン(株)に将来の起業を見据えて入社。入社時は数十名だった同社が500人規模になる過程において副社長として人事に深く関与したことから、そのキャリアを活かして2008年に(株)あしたのチームを設立した。「正当な人事評価制度の運用」を手がけるなかで、導入企業の業績を平均で30%向上させてきた実績を誇っている。
経済の成熟化やグローバル化に伴い、かつて日本企業の主流だった「終身雇用」「年功序列」が崩壊しつつある昨今。とはいえ協調を重んじる日本人の性質上、欧米で主流の「成果主義」もなかなか根付かず、結果的に今の日本企業の組織のあり方は「年功序列と成果主義の混合型」が約50%、「成果主義型」が約30%、「年功序列型」が約20%となっているという。そのなかで「年功序列と成果主義の混合型」の仕組みをブラッシュアップし、より社員が輝ける組織をつくるための人事評価ツールを提供しているのが(株)あしたのチームだ。同社を創業した高橋社長に、理想のチームのつくり方や人事考課の必要性について語って頂いた。
人を評価するということ
起業前、ブライダルジュエリーの企画・販売を行うベンチャー企業のプリモ・ジャパン(株)にて副社長や台湾子会社の代表取締役を歴任してきた高橋社長。同社が30人から500人規模に急成長するなかで要職を担ってきたかつての経験が、現在の「人事評価制度サービス」の事業に繋がったという。
「会社が成長する過程で、管理職が直面する悩みは2つに大別できます。1つは『人が育たない』と嘆きながら、1から10まで全て自分でこなしてしまうケース。もう1つは思い切って仕事を部下に任せるも、任せた人間が思うように動かないというケースです。どちらの課題に直面するほうが会社が大きくなるかと問われたら、やはり後者と断言しますね。実際に私は前職で“役職が人を育てる”というところにこだわりスタッフに仕事を任せてきた結果、副社長として着実に会社の規模を拡大させることができました。そして『組織づくりにおいて何が大切か』を実務を通じて学ぶことができたことから、そのなかで得たノウハウを、中小企業経営者の方々にご提供させて頂きたいと考えるようになったのです」
その思いを以て2008年に(株)あしたのチームを設立し、日本で初めて中小・ベンチャーに特化した「クラウド型人事評価制度運用支援サービス」をスタート。以来、順調に顧客は増加しており、そのサービスに関心を示す経営者も増えているそうだが、そもそも“なぜ人事評価が必要なのか”をまずは伺った。
「社員の労働生産性を上げていくことは、企業業績の拡大において非常に重要な要素です。そして社員の生産性を上げるのに効果的なのは、納得感のある人事評価を構築し、その評価を報酬に連動させることです。賞与や社員旅行、社内のレクリエーション行事などではなく、生活に直結する基本給、つまり“基準内賃金”が納得感を伴って支給されるかどうかという点は、働きがいのベースになるものだということは間違いありません。なぜならば“基準内賃金”は労働者が法律で守られている唯一の権利であり、経営者が守らねばならない唯一の義務であるからです。
社員旅行や忘年会をやらなかったからといって違法ではありませんが、最低賃金法を下回ったり残業手当を払わなければ違法です。経営者は“基準内賃金”をコストだと思い、場合によってはリスクだと考える。一方で従業員は権利だと考え、自らが得ていきたいものという動機付けがされている。この、法律で守られた権利と義務が生ずる“基準内賃金”の支給システムにこそ労使の関係性が体現されるべきであり、その部分がおろそかになっている企業はいわゆる『ブラック企業』の烙印を押されかねない─それほど今、労使の関係は緊張感が高まってきているように感じます。
労働者人口の減少、国の政策も相まって今はどちらかというと労働者保護といった風潮があり、人の流動化が進むなかで人材を繋ぎ止めていく必要性が高まっているという意味でも、従業員の労働意欲に直結する人事評価制度はより社会に求められていると思います」
その事実は現場の声にも裏付けられており、あしたのチーム調べによると、優秀な社員が辞めてしまった理由の一位は「給与と頑張りの連動がないこと」であるという。しかし実際問題として、納得感のある人事評価制度を導入している企業はどれほど存在しているのだろうか。
「企業全体では1%にも満たないと思います。例えば大手の場合、表面的には成果主義や目標管理などを導入している企業も多いですが、人数が多くて差を付けづらく、実質的には年功給というところがほとんど。頑張っても頑張らなくても同じだけ昇給するという意味では、平等という名の不平等な給与システムだと思いますね。『給与と頑張りの連動』のあることが、正当な人事評価制度であるわけですから」
“普通の社員”が活躍できるために
形式的に人事評価制度を導入している企業は多いが、それを効果的に活用して業績アップに繋げられている企業は少ない。そのなかで導入企業の業績を平均30%伸ばしてきた「あしたのチーム」が提供するサービスの最大の強みは、いったいどこにあるのだろう。
「我々のサービスの最大の特長は、人事評価制度を“運用支援”しているところでしょうか。人事評価制度というハードはあくまで手段であり、それを手に入れること自体が目的ではありません。ハードをリーズナブルに提供してソフトのサービスを充実させるという点において、ハードのみを販売する会社と一線を画していると思いますし、だからこそクライアント企業で働くスタッフの方々の労働意欲を引き出し、業績向上に繋げられているのだと自負しています。
具体的な内容としては、クラウドを使って入力データベースを共用しながらクライアント企業の状況を逐一把握させて頂いたうえ、適宜メールのやりとりをしていきます。全社員の目標設定の文章を3営業日以内に添削したり、中間面談の支援や評価方法のサポート、査定調整会議の評価結果分析資料の納品なども必要に応じて行います。継続的にご支援させて頂いている企業については、確実に業績が伸びているというのが現状ですね。
なお、結果が出るまで一般的には2年と言われていますが、“変化”という意味では導入した日から変わります。正当な評価をすることで社員の目の色が変わり、行動が変わり、すぐに個々の業績が上がったという社員を私は何人も見てきました。しかし逆を言えば、世の社員はそれだけ腐っているということ。社長や上司の顔色を窺いながら『及第点の仕事をすればいい』と考えている社員が大多数というのが、今の日本社会の実情と言えるかもしれません。と言うことは、一人ひとりの動きが業績に直結する中小企業において、人事評価を通じて彼らの行動変異を促すことができれば、短期的な業績の改善が見込めるとも考えられるでしょう」
業績や生産性の向上を考えるうえで、何も優秀な社員が多数いる必要があるというわけではない。高橋社長が理想とするのは「普通の人が活躍できる会社」だ。
「社員のやる気を引き出すには、各々の目標を明確にすること、そしてそれを達成したかどうかで個人の処遇に反映していくこと。すなわち人事評価制度の運用をしっかりしていくことが、もっとも大切なことだと思っています。仮に、“自発的に頑張れる人”と“どんなに言っても頑張らない人”が上位・下位の2割ずつだとすると、その中間にいる6割の人が確実に頑張れて、かつ報われる仕組みを整えることが、業績向上のカギになるのではないでしょうか。
頑張りが報われるという意味では営業の歩合給、成果報酬などもありますが、単に結果のみを評価するということだけで言えば、やはり普通の人が活躍できる会社とは言えない。ただ結果を出した人たちを褒めて高給を与えるのならば、荒っぽい言い方をすれば上司や経営者は必要ないのです。本来、経営者や管理職の人間がやるべきは継続的に成果をあげられる社員を増やしていくこと。繰り返しになりますが、やはり一人ひとりに目標を設定し、成長したことに対して評価をし、成果だけでなくプロセスも含めて報酬に反映させることができれば、必ず普通の人たちが活躍できる企業風土を形成できることは間違いありません」
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