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Challenge+(チャレンジプラス)

巻頭企画天馬空を行く

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共生の精神が根付く地域に学ぶ

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ダーウィンの進化論のように「時代の変化に適応することが大事」ということを力説する田原氏。成熟しきった日本経済において“適応”ではなく苛烈な“価格競争”が繰り広げられている業界もあるが、こと地域単位でみた場合、独特の企業文化が醸成されていることによって地域全体で成長している場所がある。

「今は“飽和の時代”などと言われるが、他社と同じものをつくったりサービスを提供しているからそう言われるのであって、これからは他社がつくっていないもの、やっていないサービスをいかに提供していくかが今まで以上に重要になってくると思います。
 その意味で僕は最近、京都の企業に注目している。ゲーム機でお馴染みの『任天堂』、電子・情報・通信器機の『京セラ』、日本トップクラスの電子部品専業メーカー『村田製作所』、分析・計測器機に強みを持つ『堀場製作所』、精密機器・医療機器・航空機器の『島津製作所』といった大手をはじめとする各企業は、世界シェアも高く非常にうまくいっている。なぜか。京都は狭い地域に企業が密集していることもあり、助け合いの精神や共生の意識が根付いているからなんですね。
 まあ、共生といったら言い過ぎかもしれないが、京都の企業はお互いの邪魔は絶対にしない。邪魔をしないというのはどういうことか。つまり真似をしない、ということなんです。歴史ある土地柄からか“独自性”を求める風土がどの企業にもあるので、結果としてオリジナリティの高い製品やサービスが生まれやすい。とはいえ、どうしてもオリジナルが生み出せずやむなく真似てしまうということもあるでしょう。でもそれは結局、他の会社の邪魔をしているということにほかならない。
 じゃあ、オリジナリティのある会社を創り上げるコツはなんだろう。1つは“下請け”という言葉を使わないことにあるのではないだろうか。京都の会社は基本的に“下請け”でなく“協力企業”と言う。実質的に下請け作業ではあるけれども、協力企業に格差を付けないんです。
 例えば堀場製作所という会社は毎年、多くの社員を関連企業に出向させたり海外に留学させるのだが、協力企業や現地企業と本社とで絶対に給料の格差を付けないとか。結果、それが功を奏している。
 一般的には本社の社員は給料が高く、関連企業の給料は安くて待遇も良くないというのが普通かもしれない。でも、本来ならそれはやっちゃダメ。格差を付けると関連企業がやる気を失うからです。仕事へのプライドも失い、優れた部品も生み出せなくなる。逆に言えば格差を付けなければ従業員の労働意欲が高まり、誇りを持つことができ、優れた製品を生み出せるはず。そしてそのなかからこそ、オリジナリティの高い製品は生まれるものだと僕は思う」。

社員を育てるために必要なこと

成熟社会においては「競争」ではなく「協力」─この姿勢がオリジナリティを生み出す秘けつだと氏は語る。戦後復興から高度経済成長期にかけては、国内の各企業が切磋琢磨しあう競争のなかから世界に誇れるだけの優れた製品や技術が数多く生み出されてきた。しかしボーダレス化が進み各企業が国際競争に勝ち残っていかなければならなくなった今、国内でのwin-winの関係づくりも求められつつある。それを踏まえたうえでの好例が京都という街であり、堀場製作所という企業なのだ。それと京都企業のもう1つの独自性に、「社員教育」が挙げられる。

「人の育成というのも、当然ながら企業にとって必要不可欠なことです。“人材”を教育して“人財”に育てるまで、最低でも5年はかかりますよ。でも昨今のブラック企業に代表されるように、人材を使い捨てようとする企業が増えている。こんなブラックな企業はうまくいくわけがない。じゃあ、どうしたらいいか。
 例えば村田や島津、堀場は、とにかくまずはチャレンジさせるそうです。チャレンジしたら99%失敗する。失敗したらどうするか。またチャレンジさせる。失敗してはチャレンジさせる、その繰り返しです。意味がないのでは、と思われるかもしれないが、人間は失敗したとき初めて自分の頭で考える。『どこがいけなかったんだろう』『どこを間違ったんだろう』と。つまり自分の頭で考えられる社員を育成することが、企業がすべき人材教育なのではないか。
 そういえばユニクロの柳井さんは、僕にこう言った。『日本の一部上場企業の社員は今、仕事をしたがっている。指示通り動くのは仕事ではありません。仕事のふりをしているだけ。自分の頭で考えて出た結論がノーならノーと言えばいいんです。納得したうえで自らするのが仕事なんですよ』と。
 やはり柳井さんも、自発的にものごとを考えられる社員を育成したいと思っていた。そのためには何度も何度もチャレンジできる環境を創出することが大事なんですね。さらに、何度も何度もチャレンジさせることで、チャレンジすることを恐れない社員を育てることも急務ではないか。先にも触れたが今の日本の大きな問題は、経営者がチャレンジをせず、守りに入ってしまっていること。要するに失敗するのが怖いんです。でも、京セラの会長・稲盛さんは言った。『田原さん、僕に失敗という言葉はないんです。チャレンジすることを諦めたとき、それを失敗という。50回でも100回でも、チャレンジし続ければ失敗ではないんですよ』」。

 

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