巻頭企画天馬空を行く
渡邉 美樹
ワタミ株式会社 代表取締役会長・CEO
1959年生まれ、神奈川県出身。小学校5年生のとき、経営していた会社を清算した父親の姿を見て、将来社長になることを決意。大学卒業後、財務や経理の知識を得るため半年間会計システムの会社に勤めたのち、独立資金の獲得を目指して運送会社で働く。1984年、(有)渡邉美商事を設立。「つぼ八」FC店オーナーとして起業し、飛躍的に売上を伸ばす。1986年に(株)ワタミを設立、翌年にはワタミフードサービス(株)に社名変更する。1992年、居食屋「和民」の1号店を出店。1996年に店頭公開を、2000年3月に東証一部上場を果たす。2009年6月、代表取締役社長を退任し、会長に就任。
インタビュー・文:中原陽子 / 写真:?尾佳弘
イメージする力
人生はイメージの通りに進む
人間が持っている最大の能力は、「想像力」だと渡邉氏は言う。氏が示す想像力とは、「自らの未来をイメージする力」だ。
「不思議なことに、イメージすると脳からいろいろな指令が出てきます。例えばボールを投げるときのことを考えてください。漫然と投げてもそう遠くへは飛びません。でも、例えば25メートル地点に印を付け、その印を目指して投げると不思議と届く。あれは、イメージする力が働いているからです」
そう語る渡邉氏は、実際に何かを成し遂げられるかどうかを決めるのは、「いかに強く想像し、願うことができるか」にかかっていると言う。
「これも一つの例えですが、飛び越えなければならない川があるとします。飛べない人というのは、必ず飛ぶ直前でスピードダウンしたり、立ち止まってしまう。“飛ぶ姿”を思い浮かべられていないからです。飛べる人は、“飛ぶ姿”のイメージが強い。イメージが鮮明だからこそ、精神を統一し、意志を凝縮し、体を動かすことができるのです。実際に飛べるかどうかは、飛ぶ前から決まっているんです」
渡邉氏にとって、これは比喩ではなく、自らが生きてきた人生から得た 「真実」そのものだ。夢を追う道のりは、必ずその夢をイメージすることから始まる。夢を画像として描くことで、自分が何をすべきかが明確になるからだ。事実、氏は若いころからずっと、自らの夢をイメージし続けてきた。それは「夢見る」という行為ではなく、日々の習慣となっている。
「毎日毎日、こうありたいと思う自分像をイメージしています。今日、明日といった極めて短期的な未来から、20年、30年、そして一生をかけて目指す自分の姿。その両方を、常に思い描いています」
毎日イメージを繰り返すうちに、その映像は自然と潜在意識の中に落とし込まれるという。潜在意識に根付いたイメージは、意思の力を超え、行動を生み出す。具体的には何が起こるのだろうか。
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