巻頭企画天馬空を行く
3本の柱を軸に
夢の1000店舗へ
「生き物全般が好き」という大東は、社長室では何百匹もの鈴虫を飼う。
今後の目標は、全国で1000店舗を展開すること。店が少ない関東と、まだ一店舗も展開していない東北への出店を狙う。その上で軸となるのが、「よりおいしく、より安く、より早く」の基本部分だ。「餃子の王将」を「餃子の王将」たらしめているとも言えるこの理念は、大衆をターゲットとした外食産業の永遠普遍の骨子でもある。
「時代がどんなに変わっても、餃子の王将の礎は絶対に変わらへん。値段、品質、サービス。それをいかに高めていくかを、真摯に突き詰めるところに会社の成長がある。今現在、餃子の王将が多少なりとも成長しているとすれば、その積み重ねを怠らんかったからやと思ってる」。
レベルを高めるという意識を全社で共有するにはどうするか。スタートは常に「自分」にあると大東は言う。
「僕の意欲が幹部社員に伝わり、幹部社員の意欲はエリアマネージャーに、エリアマネージャーの意欲は店長に、そして店長の意欲は従業員に伝わって、最後にお客さんに届く」。
そうして一度伝わった熱い思いは、今度は従業員から店長へ、店長からエリアマネージャーへと逆流していく。気持ちが渦を巻いて循環すればするほど、その流れは強まって伝播していく。
「心は伝えなあかん。伝えるのは言葉や。言葉は気迫から生まれる。気迫を生み出すのは日々の思いと行動や。いかに、店やお客さんに対して熱い思いを持つか、それが肝要やと思う」。
そう語る大東は、上に立つ者にとって最も大切なのは「情熱」だと口にする。
「例えば20人の従業員を店長1人で管理しようとしたら、無理が生じるのは当たり前。下が自ずとついていきたいと思える器。店長にはそれがないとあかんのや。背中で語れる度量がないとあかん。そのために必要なんが情熱。情熱いうんは絶対に忘れたらあかん、上に立つ者にとっては一番大事なことや。情熱を持って、自ら汗をかかな。汗をかくことから、仕事や生き様への誇りも生まれてくる。汗をかいて、自分の力を惜しまんもんに、下はついてくるんや」
1000店舗を展開するために必要なこと答えはやはり、原点の「人」に還る。店長を育成するために、経営と現場の垣根なく大東は走り続ける。時に叱咤怒号し、時に大声で笑いながら。
「何やかんや言っても、僕が考えてるのは単純なこと。従業員が喜ぶことは何や、みんなが楽しく安心して働ける職場とはどんなや。それが一番大事ちゃうの」。
(取材/2009年8月7日)
大東社長を知る10の質問
「餃子の王将」を色に例えると?
赤やな。贈り物でネクタイをいただくときも、ほとんど赤やもん。
その理由は?
やっぱり「炎・情熱」のイメージやろなあ。
20歳の自分に一言 。
自分に自信を持て。
自分を動物にたとえると?
鳩…かな。鳩好きやからな(笑)。でも違うか…猫か、トラ…そのへんかな。
経営者に最も必要なものとは?
人、そして愛。
その理由は?
人なくして経営はできんし、愛なくして人は集まってこん。
オフの日には何をする?
休みはない。たま?にある休みには、家族と旅行とか。
行ってみたい場所は?
エジプトと、アフリカのサファリ。
世界で一番好きな時間は?
朝はよう起きて、飛ばした鳩を見ているときのベランダ。飛んでいる鳩をぼーっと見るんが好きや。
生まれ変わったら何になる?
鳩。
株式会社王将フードサービス
1967年創業、1974年設立。1967年に創業者、加藤朝雄が京都四条大宮に餃子の王将1号店を出店、その後京都市内を中心に店舗展開を進める。現在、直営店353店舗、FC店186店舗を展開。(2009年8月末現在)
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