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Challenge+(チャレンジプラス)

注目企業インタビュー

音楽の力で心身の健康をサポート
認知症予防に特化したピアノ教室

 

パーソン・センタード・ケアの思いを大切に

タージン 施設での生活は単調になりがちだと言います。ピアノのレッスンや音楽があれば、生活の彩りになるでしょうね。

吉沢 そうですね。施設では、スタッフが利用者様一人ひとりに十分な時間を割くことが難しいのが現実です。私はピアノのレッスンを通して、利用者様と一対一でしっかりコミュニケーションを取っていきたいと思っています。私たちが精いっぱい働きかければ、利用者様は応えてくれます。心も体も、良い方向に変化していくんです。これまでの介護経験で私はそれを体感してきました。

タージン そうした経験があったからこそ、「音楽を通じて高齢者の方々を変えられるはず」という手応えを感じられた、と。

吉沢 その通りです。施設で暮らす高齢者の中には、生きる意欲を失ってしまわれた方もいます。その方たちに、五感を使って音楽を楽しむ時間を持っていただき、生きる意味や、「私はここにいていんだ」という自信を取り戻していただきたいんです。入浴や排せつなどの身体的な介護だけでなく、心のケアもあわせて充実させることが、その方の尊厳を守ることにつながると考えているんですよ。

タージン レッスンや介護の現場などで実際に認知症の方々と接する際には、どのようなことを大事にしていらっしゃいますか?

吉沢 認知症の方を1人の人として尊重する「パーソン・センタード・ケア」という考え方を大事にしています。パーソン・センタード・ケアは、認知症の方を単なる「認知症患者」と捉えず、1人の「人間」として尊重し、その人の立場に立ってケアをしようという考え方で、現在日本の認知症ケアの主流となっています。対等な人間同士として向き合おうというアプローチなので、私たちが認知症の方々に一方的に与えるという関係性ではないんです。

タージン なるほど。人はついつい相手に「やってあげた」と考えがちです。そうした考えを意識するだけで、ずいぶんと接し方が変わるでしょうね。

吉沢 そうなんですよ。「すべて私がやってあげなければ」と思うと、介護する側も疲弊してしまいますよね。パーソン・センタード・ケアは、お互いにハッピーな関係を構築するために重要なものだと考えています。
 

訪問ピアノを介護保険内サービスに

タージン 最初に吉沢代表がおっしゃっていた通り、介護も音楽も「人の心を扱う」お仕事です。「kaigoピアノ教室」は、音楽や介護を通して人の心に触れてこられた代表だからこそできる事業だと感じました。

吉沢 ありがとうございます。認知症の方々は、先の予定も過去の傷のことも考えず、常に今を生きています。私も充実した「今」を積み重ねて人生を築いていきたいと思っているので、そういう意味では、認知症の方々は私の先生でもあるんです。

タージン 吉沢代表ご自身も認知症の方々から刺激を受けていらっしゃるのですね。お話をうかがっていると、代表は本当に天職に出合われたのだと感じます。それでは最後に、今後の展望についてお聞かせください。

吉沢 まずは施設を中心にこのサービスを広めていくつもりです。そして、ゆくゆくはこのサービスを介護保険内で利用できるようにしたいんです。そうすれば、すべての高齢者の方々が、経済状況にかかわらず心癒やされる時間を持つことができますから。
タージン 素晴らしいお考えだと思います。その大きな志でぜひ、福祉の世界にムーブメントを起こしていただき、介護の現場を変えてください!
 
 

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