注目企業インタビュー
建設
足場工事・町内会業務で地域に貢献
両国の伝統を守り歴史をつなぐ鳶
和庫 株式会社
代表取締役 石橋 和也
PROFILE
39歳。中学校卒業後、東京・池袋で左官職人として住み込みで働いた後、18歳で墨田区の建設会社に転職。鳶として修業を始める。町内会の仕事で祭事やイベントなどの準備にも携わり、両国の文化を守る使命も担う。2019年に独立し、2023年に和庫(株)を立ち上げた。
COMPANY DATA
- 住所
- 〒 132-0025
東京都江戸川区松江3-9-19 - URL
- https://www.wakura-11.com/
水野 鳶として足場工事で奮闘し、町内会業務でも両国という街に貢献されている石橋社長。まずは、これまでの歩みから教えてください。
石橋 私は中学を卒業してから、15歳で左官職人として働き始めました。しかし、時代の流れとしても当時は鳶が憧れの存在で、とある雑誌に掲載されていた求人を見て18歳で転身を決意したんです。その就職した会社は墨田区の緑にあり、頭が緑・両国・亀沢・石原・横網地区の祭礼や地域行事の仕事を担う町鳶でした。元来、鳶というのは建設現場で働くだけではなく、町会や地域に密着した人足のことを鳶と位置付けてきました。その文化を担う頭のもとに入社した私は修業を重ね、頭が亡くなられたことを機に、「お世話になった両国の方々にもっと貢献していきたい」という強い思いを抱き、2019年に独立を決意し、2023年に当社を設立したんです。
水野 まさに運命的な出会いをされたのですね。ぜひ、現在の事業内容について教えてください。
石橋 当社では足場工事を中心に、内装解体や重量運搬などを手がけています。それに加えて、江戸時代に始まった町火消の伝統を受け継ぎ、お祭りで使う御仮屋や神輿の製作をしたり、本番時の段取りや警備を担当したりと、さまざまな町内会業務を行っているんです。また、お正月になると、お正月飾りの製作もお任せいただいています。
水野 それは素晴らしい。江戸時代から続く文化を承継する重要な存在だと思いますし、お仕事に対する石橋社長の熱い思いが伝わってきます。
石橋 ありがとうございます。基本的にこの役目は世襲制で、地域の方々が大切に守ってきた文化です。それにもかかわらず、両国で生まれ育ったわけではない私を皆快く受け入れてくれました。また、鳶の先輩方も、普段の立ち居振る舞いから冠婚葬祭の礼儀まで、たくさんのことを教えてくださったんです。だからこそ、この街を絶対に裏切ることなく、一生この仕事を続けてこれまで以上に信頼される人間になることが、一番の目標なんです。
水野 ぜひ、その心意気を後継の方々にも伝えていっていただきたいです!
石橋 ええ。お世話になった両国の方々の期待に応え、文化を伝承することこそ私の使命だと感じています。鳶や町内会の仕事は、一見すると門をたたきにくい雰囲気を感じるかもしれませんが、外部から来た私をかわいがってくださった先輩方の姿を見ている今の時代の人たちも、それを良き前例として、同じように後継を育ててくれる環境を整えています。これまでに学んできた技術や伝統は必ず次の世代に伝えていかなければなりません。そのために今後も、両国の皆様といつまでも素晴らしい信頼関係を築いていけたら幸せです。
GUEST COMMENT
水野 裕子
両国の伝統を守る鳶の方々の知恵と技術が、このような形で江戸時代から連綿と受け継がれていることに大変驚きました。その時間の流れには感慨深いものがありますし、文化を受け継いでいくことはとても大切なことです。これからも石橋社長の熱意で、両国という街をより一層盛り上げていってください。