コラム

現役時代は日本を代表するキックボクサーとして世界中の注目を集めた武蔵氏と、多彩なアイデアで不動産業界を変革する日本リアライズ(株)の大橋社長。同年齢で、互いをあだ名で呼び合うほどフレンドリーな関係を築いている2人は共に、熱いハートの持ち主だ。武道を通じた教育の重要性や、精神的な成長にもつながる努力の意義など、いまを生きる日本人へのメッセージとなった両者の対談は、ビジネスパーソン必読の内容である。

大学卒業後、東京リコー(株)に入社。トップセールスマンとして活躍した後、30 歳で不動産業界に転身し、2009年に日本リアライズ(株)を創業した。以来、ライフプランの提案を通じた住宅販売により着実に業績を伸ばす。2018年頃からは「ライフメイクプランナー」として、人生100年時代における理想の人生設計に積極的に貢献。2022年11月に(一社)人生診断協会を設立し、今までにない新たなマイホーム販売の形として新規事業「ライフメイクパートナーズ」を推し進め、その加盟店を増やすべく尽力している。
元K-1ファイター
武蔵
1995年にK-1REVENGE Ⅱでパトリック・スミスとデビュー戦を行い、2ラウンドKO勝ちを果たす。日本人の体格では難しいとされるスーパーヘビー級の世界中の強豪が集まるK-1のリングに日本代表として参戦し続け、K-1 WORLD GPの 2003、2004年大会で準優勝するなど数々の偉業を成し遂げた。2009年8月に惜しまれつつ引退を表明し、同年9月に行われたK-1 WORLD GPでのジェロム・レ・バンナ戦でK-1を引退。2009年に弟であるキックボクサーのTOMO氏と(株)パウンドフォー パウンドを設立。タレントとしても活動している。
大橋社長は「理想を現実にする熱い男」
――お互いを「むーちゃん」「おーちゃん」と呼び合う仲の武蔵さんと日本リアライズ(株)の大橋社長。お二人は同世代とのことですが、どのような経緯で出会われたのでしょうか?
大橋 むーちゃんと面識を持ったのは、5年ほど前に、以前当社がサポートしていた元プロボクサーの内山高志さんを交えた食事会の席でした。もちろん、むーちゃんは当時から有名人でしたから、「おお、本物の武蔵だ!」と感激したことを覚えています。
武蔵 おーちゃんに対する私の第一印象は、貫禄もオーラもあったので、ちょっと怖い人なのかなと(笑)。しかし実際に話してみると、とても「熱い男」で、同時にフレンドリーな人物でした。いろいろなことを平易に話してくれて、すぐに意気投合しましたし、大好きになりました。最初はお互いに敬語で話していましたが、同い年ということがわかってからは敬語で話すのをやめ、「おーちゃん」「むーちゃん」と呼び合う関係になったんです。周囲に同い年の人間が少なかったということもあり、おーちゃんと仲良くなれて嬉しかったですね。
――わずか5年ほどでこれほど深い関係を築かれたというのは驚きです。大橋社長は以前ボクシングをやっておられましたし、日本リアライズ(株)さんは現在もボクサーのサポートをされています。そんな大橋社長の目から見た武蔵さんはどのような格闘家ですか?
大橋 私の世代はK-1の全盛期を知っており、その中心選手の1人であった武蔵選手は世界のヘビー級の猛者たちに戦いを挑む、武士道精神を兼ね備えた侍のような存在でした。われわれ世代のトップをいく男―そんな印象を持っていましたし、純粋に憧れの存在でもありましたね。また、仲良くさせてもらうことになってからも、人柄が素晴らしいと感じるようになったんです。
武蔵 ありがとうございます。私は第一印象で「いかつい、威圧感がある」と思われることが多いのですが、実際に話すと「しゃべりやすい方なんですね」と言われるので、内心では人を見た目で判断しないでください、といつも思っています(笑)。もちろん、格闘家は厳しい面も持ち一本筋が通っていないといけませんが、また同時に優しいところもあるということを伝えたいですね。
――他方、武蔵さんは2009年に弟のTOMOさんと(株)パウンドフォー パウンドを設立され、実業家としての顔もお持ちです。そんな武蔵さんの目から見て、大橋社長はどのような経営者に映りますか?
武蔵 理想的な経営者ですし、男としてもカッコいいですね。一聴すると夢物語のように聞こえることを実現するすごさがあります。よく「理想と現実は違う」と言われますが、おーちゃんは理想を現実にしてしまう。ですから、やることを見ていてもおもしろいですよね。私は、自分がやりたいことを楽しそうに話すおーちゃんの笑顔が大好きなんです(笑)。例えば、スポーツの世界や職人の世界ではしばしば「匠」という言葉が使われますが、私はおーちゃんを不動産業界の匠であり、プロだと思っています。彼の話を聞くたびにそう感じますね。プロというのは自分が勝つことももちろん大事ですが、お客様に喜んでもらうことも重要です。おーちゃんは、お客様をいかに楽しませ、満足してもらうかということを最優先に考えている。その意味でも、本物のプロではないでしょうか。
大橋 むーちゃんにそう言ってもらえると嬉しいですね。
努力するためにはまず「目的」が必要
――今のお話にも関係しますが、お二人は共に、お仕事を通じて「人を楽しませる」「人を幸せにする」ということに重きを置いておられるように見受けられます。「自分さえよければ」といった拝金主義の企業や人間が少なくないと言われる現代社会において、どうやってそのような考えにたどり着かれたのか教えてください。
大橋 私は長年、不動産業界で、賃貸に住んでいる方々にマイホームを販売してきました。そうした中で、家を買うことによりワクワクする気持ちが生まれるなど、マイホームを持つことで人生が楽しくなることをお客様に伝える努力をしてきたんです。以前のインタビューでもお話ししたように、営業というのはエンターテインメントなので、格闘技を通して多くの人を楽しませてきたむーちゃんから学びたいという気持ちもあります。そしてマイホームを通じて得た幸せの先にお客様の笑顔があり、そこからまた違ったエンターテインメントが生まれるのではないか――そうしたことをずっと考えてきました。とにかくお客様を笑顔にすることが大前提にあり、ずっとそれを目指してきたんです。特に私の仕事は暮らしと直結しているので、ダイレクトにその目的に向かうことができる。常にお客様と接し、相談を受けてご提案することを繰り返してきたからこそ、こうした考えを持つようになったのではないかと思います。
武蔵 私の場合、人に喜んでもらう、楽しんでもらうことの快感は、アマチュアの空手の大会に出場していた頃からありました。空手の大会で実績を残すようになると、私の名前がアナウンスされるたびに、試合をするコートにお客様が集まってくるんです。努力をすれば自分のやってきたことがお客様に伝わるんだなと強く感じたのは、東京ドームで行われたK-1 WORLD GP 2003の準決勝でピーター・アーツ選手に勝ち、会場から引き揚げる際に超満員のお客様から武蔵コールがわき起こった時でしたね。その時、自分の戦い方がどれだけ批判されようと、それをやり続けてよかったなと、長年の努力が報われた思いがしました。
――半ば次の質問にお答えいただいた形になりました。武蔵さんのブログのタイトルは「為せば成る」であり、これは大橋社長の座右の銘である「覚悟して努力をする」と通じるところがあります。ともすると「根性論」として片づけられがちな現代社会において、お二人から「努力」の大切さをぜひお聞かせください。
大橋 努力するためには、まず「目的」がないといけません。だから、自分の中でまず目的を決めて、そこに向かっていくプロセスがそのまま努力になります。ただ、私はそれをあまり努力とは思わないんですよ。振り返った時、結果それが努力だったという感じですね。
武蔵 確かに、やりたいことや好きなことであれば、どれだけつらいことでもそれをしている最中は「楽しい」と感じる気持ちのほうが上回ると思います。
大橋 別の言い方をすると、目的がないと努力はできないんです。今は不動産のステージも上がっており、例えば、当社であれば「子どもたちの笑顔を増やすために、親が子どもを抱っこする機会を増やす」という目的があります。この大切さを、親になる世代の人たちに伝えていくという使命感を持っており、それに必要なプレゼン資料をつくるという「努力」をしているんです。このような努力をしている時はとても楽しいですね。
武蔵 それは最高のことですし、「覚悟して努力する」というのはすごくいい言葉だと思います。
大橋 現在、努力できない子どもたちが増えているとすれば、それは目的が決まっていないからです。目的に向かって努力することの大切さを、われわれの世代が示すことができればと考えています。
――大橋社長はご自身と同じ「昭和47年組」の格闘家の代表として昔から武蔵さんを応援されてきたとうかがいました。特にアーネスト・ホーストやピーター・アーツら世界の圧倒的強者に立ち向かう姿、武士道のような精神性に感銘を受けたそうですね。武蔵さんのそうした強靭な精神力はどのようにして培われたのでしょうか?
武蔵 私は、先ほどの質問にあった「根性論」をそこまで否定しないんです。逆に「あなたには根性はあるのか?」と問いかけたくなる。「根性」というのは、言い方を変えれば「忍耐」であると考えています。私は自分が武道をやってきて本当によかったと思っているんですよ。武道を通して、文字通り人の何倍も痛みを知り、苦しい思いもたくさん経験し、また自分の体をいじめ抜きました。そのことによって、忍耐を養うことができたと感じています。自らを追い込んだり、血のにじむような努力をしたりすることで、自分よりも体格の大きい強敵と戦って怖い思いをした時にそれまで出し切れていなかった力が発揮できるんです。そうした経験を通しても、自分を追い込む努力は重要であり、だからこそ強い精神力が養われたのだと感じています。
大橋 その考えには共感しますね。自分を追い込んで限界を突破した時に人は成長できますし、そうした努力をしないと先には進めません。例えば筋トレもそうですが、日頃から己を追い込むことで精神的な成長にもつながると思っています。
子どもの幸せのために親への教育が重要
――かねて大橋社長は「日本を救うには子どもの自己肯定感を高めることが必要であり、そのために家計と住環境を最適化する必要がある」と力説されています。武蔵さんは子どもたちの自己肯定感を上げるためにはどうすればよいとお考えですか?
武蔵 自分の経験を通して言わせてもらいますと、私は武道の素晴らしさを子どもたちに教えることが大切だと感じています。かつて日本では素晴らしい武道教育がなされていました。教職免許にも武道資格がありますが、それを取得することにより強い先生が生まれる。人間というのは強くなることで、痛みを知ることができますし、それによって他人の痛みもわかり、相手に暴力を振るおうとも思わなくなります。そのことがいじめの撲滅にもつながり、高い自己肯定感を持つ、本当の意味で強い子どもたちが増えると思うんです。私自身、武道があったから今の自分ができたのだと感じています。例えば、子どもたちの空手の試合を見ると、負けそうになっている子どもが泣きながら相手を倒そうとしている姿を目にすることがあるんです。そういう光景を見ると「この子はすごい大人になるぞ」と思います。武道の試合で悔しさを知ることが、子どもたちの成長につながるのではないでしょうか。
大橋 今のむーちゃんの話を聞きながら、子どもたちの親に武道を教えるのもいいのではないかと感じました。
武蔵 その発想は、私も素晴らしいと思います。
大橋 子どもの自己肯定感を高めるためには、まず親への武道教育が大事なのかな、と。間違った教育を受ける親が増えていることで児童虐待などの問題が頻発していますからね。
武蔵 おっしゃる通り。井上尚弥選手のお父さんである井上真吾さんも元ボクサーです。また、おーちゃんはよく「明るい家庭をつくることが一番大事」と言っていますが、それについてもその通りだと思います。素晴らしい住環境で育った子どもは立派に成長するので、おーちゃんの取り組みは本当に意義があると感じますね。
大橋 ありがとうございます。そうした住環境をつくるのは親なので、親の精神環境をサポートするコンテンツとしての武道、というのは非常に有効だと思いますね。むーちゃん、ぜひ一緒にやりましょう。
武蔵 ぜひ。少林寺拳法の教えに、「力愛不二」「拳禅一如」というものがあります。前者は「愛なき力はただの暴力であり、力なき愛は無力」という思想で、後者は「体と心が1つにならなければ何も成し得ることができない」という思想なんです。そのような真理を体得するためにも、武道教育は有意義だと思います。
――最後に、お二人がお互いの今後に対して期待すること、あるいは弊誌読者へのメッセージがあればお聞かせください。
大橋 むーちゃんは格闘技界を背負っていますし、私は不動産業界を背負う覚悟で今後も事業を続けていきます。前述した通り、今の一番の目的は子どもたちの明るい未来をつくることです。繰り返しますが、子どものことを考えると、まずは親御さんを教育しなければなりません。親になる人の大半はその前段階で社会に出て、会社に勤めますよね。そして会社には社員の親代わりとしての経営者がいて、社員たちを成長させてくれる。それであれば、会社がそれぞれの社員に家計や住環境を最適化させるための知識を福利厚生の一環として提供するべきなんです。そうすることで社員は親になって自分の子どもが生まれた時に、そこで得た知識を生かして良い家庭をつくることができます。『COMPANY TANK』さんの読者は経営者の方が多いので、ぜひこうしたことを真剣に考えていただきたいですね。今の日本の企業はこのような教育を行っていません。ですから、私は先ほど話に出た武道教育を含め、むーちゃんや、前号で対談させてもらったAK-69さんたちと組んで子どもたちの明るい未来をつくっていきたいと考えています。ご期待ください。
武蔵 おーちゃんは一緒にお酒を飲むとよく「不動産王に俺はなる」と言うんですよ。先ほどお話ししたように、おーちゃんは「理想を現実に変える男」ですから、私は本当に不動産王になり得ると思っています。分野は異なりますが同い年ということもあって、おーちゃんには大きな期待を抱いていますし、これからも2人でおもしろいことをやっていきたいですね。
取材 / 文:徳永 隆宏
撮影:竹内 洋平