コラム


俳優 / インフルエンサー 磯ヶ谷 典華 FUMIKA ISOGAYA 社会人3年目の時に、芸能の道へ進むことを決意。事務所に所属し、ライブ配信、舞台、CMと幅広く活躍する。現在はIT業界で働きながら、俳優・インフルエンサーとしてフリーで活動中。 SNS Twitter:https://x.com/f_umika_t/ Instagram:https://www.instagram.com/f_umika_t/ TikTok:https://www.tiktok.com/@fumipan |
「好き」に向き合い、自分の道を切り開く
大企業や組織に属することの価値が揺らぎ、個人の能力や選択がよりフォーカスされるようになった現代。「個の時代」とも言われる今、自分にとって本当に大切なものを見極めることや、自らの意志で決断し行動することの重要性がこれまで以上に高まっています。働き方も多様化し、兼業・副業といったスタイルが注目を集めるようになりました。
今回ご紹介する磯ヶ谷典華さんは、社会人3年目から芸能の世界に挑戦。現在はIT業界で働きながらフリーの俳優・インフルエンサーとして活動しています。「好きなこと」に全力で向き合い、自ら道を切り開いてきた磯ヶ谷さんのご経歴は、まさに現代における新しいキャリアモデルの1つ。磯ヶ谷さんが歩んできたユニークな道のりについて、ご自身の半生を振り返りつつ語っていただきました。
憧れを追いかけて芸能の世界へ
幼少期の磯ヶ谷さんは大のテレビっ子で、ドラマを見ることが大好きだったそう。ストーリーだけでなく、役者の演技にも強い興味を持っていたと言います。
「ドラマを楽しむだけではなく、演じる役ごとに役者さんの雰囲気が一変することに感動していました。例えば、上野樹里さんが『のだめカンタービレ』と『ラスト・フレンズ』でまったく異なるキャラクターを演じているのを見て、『同じ人が演じているはずなのに、全然違う!』と興奮したのを覚えています。その時から演じることに憧れを抱くようになり、大学時代にはエキストラを経験したこともあったのですが、本格的に役者を目指すことはありませんでした。芸能の世界に挑戦する決断をしたのは、大学卒業後、紳士服の販売員として働き始めて3年目のことです」
社会人経験を経て、芸能界へ。大きな挑戦の背景にはどのようなきっかけがあったのでしょうか。
「お仕事自体にはとてもやりがいがありました。ただ将来を考えた時に、その環境にとどまり続けるビジョンがどうしても描けなかったんです。『自分が好きだと思えることに挑戦したい』と思っていた時期に偶然、SNSで芸能事務所のオーディション案内を見かけました。『やらずに後悔するより、やって後悔したほうがいい』と、思い切って応募したんです」
舞台や配信活動で俳優としての基盤を構築
磯ヶ谷さんは見事オーディションに合格し、研修生として事務所に所属することになります。壁にぶつかりながらも、徐々に「演じる」という感覚をつかんでいきました。
「最初は与えられたセリフをただ読んでいるだけという状態でした。ですが、レッスンを担当してくださった先生がとても熱心な方で、自分の感情を役に“同期”させる方法論を丁寧に教えてくださったんです。そのおかげでだんだんと『その役になる』という感覚をつかんでいきました。また、お芝居の稽古と並行して、ライブ配信サービス『SHOWROOM』で配信活動も行っていたんです。『SHOWROOM』では、1600日もの間、毎日配信を行いました。大変なこともありましたが、『今日も私の配信を楽しみに待ってくださっている方がいる』というのが、配信を続ける大きなモチベーションになっていましたね」
地道な努力が実を結び、2019年には『デビルマン〜不動を待ちながら〜』の池田香織役で初舞台を踏みます。そして、2020年から約3年間は「劇団Miss女子会」に所属。舞台やYouTubeチャンネルを通じて、俳優としての基盤をより強固にしていきました。
「『劇団Miss女子会』では、自分たちで舞台やコンテンツをつくりあげる経験をさせていただいたんです。舞台では、舞台のセッティングやグッズ販売など運営の部分にも携わらせていただきましたし、YouTubeチャンネルでは、企画の立案から撮影、編集まですべてをメンバー自身で手がけました。運営や制作の部分に携われたことで、視野が大きく広がったと感じています」
「挑戦」と「継続」で壁を乗り越えていく
磯ヶ谷さんは舞台の他、CM、アシスタントMCなど幅広いお仕事に取り組まれてきました。その中で、諦めないことの大切さを痛感されたそうです。
「私は挑戦すること、やり続けることをモットーにしてきました。私はもともと『何事もやってみなければわからない』と思うタイプなんです。そして、一度始めた物事は、困難があっても継続する。『SHOWROOM』での配信も、最初は思うように数字が伸びませんでした。でも、『リスナーさんを楽しませたい』という一心でやり続ける中で、次第に多くの方々に見ていただけるようになったんです。演技に関しても同じです。繰り返し練習し、できなかったことを1つずつ解決していった先に、舞台出演という結果がありました。周囲の方々と協力して舞台をつくり上げる経験や、その役として舞台をやり抜けた達成感は自分にとって大切な財産で、『諦めないでよかった』と強く感じましたね」
磯ヶ谷さんは現在、IT業界で働きながら、俳優・インフルエンサーとしてフリーで活動されています。“第2の挑戦”とも言えるフリーへの転向。その背景にある思いについて、磯ヶ谷さんはこう語ります。
「事務所に所属していた時は、マネジャーさんをはじめ、周囲の方々に助けていただきました。ただ、『自分で考えて、思った通りにやってみる』経験をすることも大事だと思ったんです。今はSNSでの発信や、どのお仕事をお受けするかもすべて私1人で決めています。もちろん苦労もありますが、そのぶん得るものも非常に大きいんです」
ITの仕事をしながら、フリーで芸能活動をするというユニークな取り組みを続ける磯ヶ谷さん。最後に、「挑戦したい人」に向けてメッセージをお願いしました。
「これまでの経験を振り返って改めて強く感じるのは、『あの時こうしていれば良かった』と後悔するくらいなら、まずは挑戦してみるべきだということです。好きなことに関する苦労ならきっと乗り越えられるはずですし、例えその時はうまくいかなくても次につながっていくと思います。私は今、自分の考えで自由に挑戦できていることに大きなやりがいを感じています。会社員として働いていた頃よりも今のほうが大変なことは多いはずなのに、不思議と落ち込むことは減ったんです。だからこそ『挑戦することは悪くない』と自信を持って言えます。もし迷っていることがあるのなら、皆さんもぜひ、一歩踏み出してみてください」