コラム
人生100年時代と言われ、仕事でもプライベートでも、自分の夢や目標を達成するまでには長い時間が残されているように感じられる現代。しかし時間の有限性を意識せずにぼんやりと過ごしていると、時というものはあっという間に過ぎ去ってしまう――そんな着眼点から、時間をいかに有意義に使うかを助言しているのが、Time Craft Consultantの奥村哲次氏だ。当コラムでは、大病を乗り越え自らの決意と行動によって成功をつかんできた同氏から、ビジネスに必要不可欠な「マインドセット」について学んでいく。
はじめに
皆様、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。株式会社ラフティ代表取締役、奥村哲次です。
ビジネスにおいて信頼関係はすべての基盤です。強固な信頼が築かれた環境では、プロジェクトは順調に進み、困難な局面でも互いに助け合いながら乗り越えることができます。今回は、私が経験を通じて学び、書籍『乗り越え力』でも触れている「人との信頼関係を築く方法」について、4つのポイントに分けてお話しします。
1. 信頼の基本は「誠実さ」から始まる
信頼関係を築く最初のステップは誠実さです。誠実であるということは、相手に嘘をつかない、約束を守る、そして自分の言葉と行動が一致していることを意味します。私が経営者として、またプロジェクトマネジャーとして多くの経験を積む中で、誠実さは多くの成功の要因となってきました。特に、難しいプロジェクトでの誠実な対応は信頼構築において重要です。例えば、ある時、重要なプロジェクトで技術的な問題が発生し、予定していた納期に間に合わなくなる恐れがありました。ここで重要なのは隠すことではなく、クライアントに問題を説明し、対策を提示することです。私は早い段階でクライアントと協議を行い、状況を正直に伝えました。結果として、クライアントと合意の上で納期をリスケジュールすることができ、開発側の焦りも減り、プロジェクトの品質をしっかりと担保できるようになりました。もし問題を隠して進めていたら、後に後手に回り、プロジェクトが破綻していたかもしれません。この経験から、誠実さこそがプロジェクトを正常化し、成功へと導く鍵であることを学びました。オープンに問題を共有し、誠意を持って対応することで、信頼が深まり、より健全な協力体制を築くことができるようになるのです。
2. コミュニケーションの重要性
コミュニケーションは信頼関係の礎です。しかし、単に話すだけでは不十分です。相手の言葉に耳を傾け、理解し合うことが本当のコミュニケーションです。私のプロジェクトの1つで、チームメンバー同士に誤解が生じて進行が停滞したことがありました。その時、私は一度全員を集め、意見交換の場を設けました。各自が抱えている課題や意見を共有することで、メンバー同士が共感し合い、結果的にチームワークが強まりました。
また、おもしろい事例として、以前あるプロジェクトで、クライアントとの会話中にちょっとしたジョークを交えたところ、その場の空気が和らぎ、以降のやり取りがスムーズになった経験があります。軽い笑いやリラックスした雰囲気は、コミュニケーションの潤滑油となります。これらの経験から学んだのは、情報を共有し続けること、相手の意見を尊重することが信頼の構築に大きく寄与するということです。
3. 信頼を築くための「一貫性」と「透明性」
一貫性と透明性は、人と築いた信頼をさらに強固なものにします。一貫性とは、どんな状況でも変わらない姿勢を貫くことです。たとえ難しい状況でも、言動や判断がブレない人は信頼されやすいのです。私はこれまでの経験から、特に一貫した行動を示すことが信頼を深めることを実感してきました。例えば、プロジェクト中にクライアントから急な仕様変更があったとき、私はまず、会社の方針や価値観に基づき柔軟に対応しながらも、基本的な方針を変えないよう努めました。
また、透明性も非常に大切です。例えば、あるプロジェクトで進捗に遅れが出た際、あえてその情報をクライアントに詳細に伝え、共に改善策を検討する姿勢を見せました。このように、隠し事をせずオープンな情報共有を行うと、相手は「この人は何が起こっても誠実に対応してくれる」と思い、信頼を深めることができます。透明性は不安を取り除き、相手の信頼を得るために必要不可欠な要素です。
4. 信頼は時間と努力によって築かれる
信頼関係は一朝一夕で築けるものではありません。小さな積み重ねが長期的な信頼を生み出します。私が特に思い出に残っているのは、あるクライアントから「奥村さんだから任せたい」と言われた瞬間です。その言葉を得るまでには、小さな成功を何度も積み重ねてきました。例えば、システム納品後にバグが発生した際には、ただ修正をするのではなく、丁寧な説明と運用支援を行うことで、お客様が安心できるよう努めました。最初は小さな対応でも、その誠実な姿勢が信頼を築く基礎となります。
さらに、信頼を築く過程ではポジティブな態度や仕事を楽しむ姿勢も欠かせません。ある時、チームで行ったアイデアソン(アイデアを持ち寄って意見交換する会)では、新しい企画を一緒に考えるという「楽しさ」を共有しました。こうした体験は、メンバーのモチベーションを高めるだけでなく、信頼関係の深化にも役立ちました。信頼を築く過程では、失敗から学び、その後に生かすことも重要です。失敗は信頼を損なうものと考えられがちですが、正しく対処し、次の成功に変えることで、むしろ信頼を高める要素になります。
まとめ
人との信頼関係を築くことは、ビジネスの成功に欠かせない要素です。誠実さ、コミュニケーション、一貫性と透明性、そして時間をかけた努力とポジティブな姿勢が、信頼構築の基盤を形成します。信頼は苦労を重ねることで築かれ、最終的には人を結びつける強力な絆となります。このコラムを通じて、人との信頼関係を築くヒントを見つけ、日常のビジネスシーンで生かしていただければ幸いです。
次回は、「失敗を乗り越える方法」と題して、失敗をどう糧にし、成長へとつなげるかについての具体的な戦略を共有します。どうぞお楽しみに。
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