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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.22

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第22回は総集編として、海外赴任をした際の仕事・生活をマネジメントするための方法と対策についてご紹介します。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニュケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載し、このシリーズでは皆様から特にご要望が多かったタイ国関連のコラムからはじまり、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と執筆を続けてまいりました。

今回はお約束していた、海外赴任をした際の仕事や日常生活をどうすればうまくマネジメントできるのか、筆者なりに結論が出ましたのでお伝えしてまいります。

① 語学

海外赴任をした際に最も重要になるのが語学です。どの赴任地においても基本となる英語、場合によっては現地の母国語まで、語学に対するたゆまぬ努力が必要です。語学講師でも語学学校でも良いので、正しい言葉を一定のプログラムを持った内容で学ぶことをお勧めします。昨今非常に安価で自由な時間に気に入りそうな相手とできる会話形式のレッスンが一部で流行っていますが、筆者はお勧めしません。フリートークと言うと聞こえは良いですが、結局、ご自身の知っている単語やセンテンスの範囲内でできる趣味や旅行などの話題についてしか話せず、幅や奥行を広げることが困難になってしまうからです。

② 心身の健康管理と維持

国内で働かれている皆様もそうですが、海外勤務をしていて急に体調に異変を感じることは筆者自身の経験も含めて少なくありません。緊急時に備え、ご自身の体調についてドクターに正確に伝えられるよう準備をしておく必要があります。ご自身の持病や既往症をあらかじめメモしたものを財布やパスポートに挟んでおいたり、急な事態の際に運んでもらいたいかかりつけの病院やドクターの電話番号・住所等を記載しておいたりと、備えを大切にしておきましょう。筆者は、歯の治療や抜歯、肘や膝の半月板の痛みなどで、米国やタイで実際に病院やクリニックにお世話になった経験があります。肉体面だけではなく、精神面の健康管理と維持も日々気を付けなければなりません。赴任地の気候条件にも左右されますが、適度な運動と十分な睡眠、そしてストレスをなるべく溜めない自助努力が日本にいる時以上に重要になってきます。

③ 年間の行動計画予定表

年間を通じ、ご自身の仕事とプライベートの活動を主にした行動計画予定表をなるべく具体的に作成し、それに基づいて活動を行うことが、日々を有益に過ごせるかどうかのポイントになります。筆者の場合は、システム手帳におよそ2年先までの現在考えられる予定を、なるべく5W1Hを明確にしながら作成し、こまめに修正を入れるようにしています。特に仕事面とプライベート面をボールペンの色を分けて1冊の中で記述しています。このようにしておくと、仕事面もプライベート面もある程度目標が設定されるので、逆算方式で何をするべきか決められ、その優先順位も明確になってきます。

④ 仕事関連とそれ以外の勉強

海外駐在に慣れてくると、ご自身の担当業務以外の勉強をほぼしなくなります。特に技術職の方にこの傾向が多く現れます。もちろん時間的な制約もあり、業務回り以外の勉強まで手が伸ばしづらいこともあると思います。しかし、そのような状況であっても市場開拓、戦略営業、経理・財務、人財管理、経営等の実務知識と理論は、ビジネススクールや通信教育、独学でも良いので学ぶことが大切です。

⑤ 教育

教育というととても固いイメージがあると思いますが、筆者はいつも4つの教育がバランス良く必要だと考えています。それは、家庭の教育、学校での教育、会社での教育、社会における教育です。それらの教育は、ほとんどの場合、自身が所属しているコミュニティなどが施してくれると思われますが、最も重要なのは、ご自身で勉強をして、自力で感じ取るセンスやフィーリングを養うことです。例えば、「お客様から問い合わせが来て回答に少し日数を要する場合には、必ずつなぎのメールや連絡を入れる」「報告書を書く時には読んでいただく方の気持ちを思い、枠からはみ出したり誤字脱字をしたりしない」「電車やバスに乗り降りする際には下車する人が最初」「歩行者が横断歩道を歩いているならば、必ずその前で車を止めて待つ」などが、学びを得る行動として挙げられます。常に意識して広い心と優しい気持ちを持ち、周囲に気配りができることが、とても大切です。これは、筆者自身も含めて多くの方ができていない部分が多いですね。

⑥ 社員教育

この部分も、まだまだ改善の伸び代がある企業様が多いと感じます。社員教育が充実しない要因としては、「転職のリスクがあるため、あまりコストをかけたくない」「スキルアップの勉強は自費を前提にしている」など、さまざまなケースが考えられます。しかし、社員教育は、それぞれの会社の従業員勤務規定に応じたやり方や対策が講じられる部分でもあります。会社は、人が命です。良き人財を確保し、それぞれの部署で良い仕事をしてもらえるよう、社員教育は会社として最も考えるべき点の1つだと言えます。

⑦ 自己研鑽

上記項目にもつながることですが、海外駐在員の方は多くの企業様の場合、通常の国内勤務者と比べて処遇や給与面において少なからずアドバンテージがついています。また多くの場合は、海外勤務の代表という看板もついてくるため、得てして自分を見失うこともままあります。そうした面を解消するためにも、仕事以外にスポーツでも趣味でも興味あることでも良いので、1つでも集中して一生懸命になれるものを持つと良いでしょう。それによって直接的、間接的にご自身に厚みや幅、精神的なバランス感をもたせることにもつながります。

いかがでしたでしょうか。大切なのは、より謙虚な姿勢と感謝の気持ちを持ち、自身の行動を律しながら仕事に取り組み、生活を送るということ。それが、筆者として述べたかった重要な点です。また、これは今までの筆者の海外業務、海外駐在歴を通した、筆者自身の反省の裏返しともとっていただければ幸甚です。

次号からはタイトルも新たに読者の皆様からご要望が高い、海外の国々における代表的なビジネス習慣、商慣習について述べて参りたいと存じます。米国、豪州、シンガポール、中国、韓国、インド、タイ、UAE、トルコ、ドイツ、ロシアを今のところ予定しています。どうぞお楽しみに。

※毎号発刊後多くの読者の皆様より好評をいただき、社員教育の一つとして当コラムを中心に研修までしてくださっていらっしゃる企業様もおありとのこと、筆者として大変嬉しく感謝に堪えません。この紙面をお借りして御礼申し上げます。

※一昨年より海外赴任前のビジネス英語研修や経営を含めた国際教養研修をご希望される企業様が多く増えており、厚く御礼申し上げます。特に中国企業の伸び悩み・頭打ちによる昨今の株価暴落に伴い、海外案件だけではなく、国内営業や人事管理処遇についても見直しを図るタイミングでもあるので、ご検討中の企業・団体様がいらっしゃる場合には、引き続き弊社ホームページのお問合せ欄よりご希望をお聞かせください。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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