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コラム

Special Voice お笑い芸人 カトゥー
コロナ禍や低迷する日本経済、戦争や環境問題など、混迷する現代社会において、各分野で挑戦を続け、わが道を歩んでいる方々の言葉を通して、一歩を踏み出したい読者の背中を後押しする企画。今回は、お笑い芸人のカトゥー氏に、ピンチをチャンスととらえる思考法や、ビートたけし氏との思い出、長年仕事を続けてこられた秘訣などについて語ってもらった。

 
――2023年で芸歴27年目になるカトゥーさん。現在、取り組んでおられるお仕事について教えてください。
 
メインの仕事はお笑いライブと営業になります。今はそれに加えて、昭和にはやった“流し”のようなこともやっているんです。東京の新宿や大塚には“のれん街”と呼ばれる飲食店が密集している地域がありますが、そのエリアに赴き、一軒一軒でネタを披露して、おもしろいと思ってもらえたら投げ銭をいただきます。私は「昭和テイストの芸風」と評されることが多いのですが、その自覚はありません。むしろ、自分ではポップな芸風だと思っていました(笑)。ただ昭和生まれですし、やっぱりその頃のネタが好きなのかもしれませんね。お客様は40代後半から50代の女性が中心です。私の持ちネタの1つに新宿2丁目のニューハーフ「カトリーヌ」というものがありますが、そのキャラクターのファンだという方が多いんです。「カトリーヌ」を演じるためにかなりのお金と時間を費やして勉強しました。そのかいがあって、「動きがとてもリアルだね」と喜んでいただいています。

――座右の銘は「ポジティブ」とのことです。どんな仕事をするにもポジティブであることは大切だと思いますが、元来の性格がそうなのですか?
 
もともとの性格がポジティブなんだと思います。そうでないと、27年間お笑いの仕事を続けてこられませんでした。私がもしネガティブな性格だったら、どこかで辞めていたのではないでしょうか。それから、お笑い芸人というのは何か嫌なことがあってもそれを笑いにすることができる職業なんです。だから、自然と周りが自分のことをポジティブにしてくれるという面があるとも感じています。

――ネタを考える際に大事にされていることは何でしょうか?差し支えなければ、良いネタを生み出すコツもお聞かせください。
 
まずは自分が楽しめるかどうかを大事にしていますね。時代のトレンドに合わせることも大切かもしれませんが、そればかり重視して自分が楽しめないと、ネタのおもしろさがお客様に伝わらないと思うんです。良いネタを生み出すコツに関しては、ひと言でいうと考えすぎないことですね。不思議なもので、コンビ時代、何週間もろくに寝ないで考えたネタを披露しても評価されないことが多かったんですよ。一方、アイデアが尽きて「もう、何でもいいや」と思って作家さんたちと一緒に30分ほどでつくったネタが大変好評で、「笑点」の大喜利の前に披露させてもらえたことがあったんです。先ほど話した「カトリーヌ」も、正直言うと深く考えずに思い付いたもので、最初はあまりやりたくないネタでした。でもそれを、所属しているマセキ芸能社の夏のライブで披露したら、たまたま人気テレビ番組「ぐるぐるナインティナイン」のスタッフさんが見ていて、番組に出演できることになったんです。このような経験則から、あまり考え過ぎずにパッと思いついたネタのほうが意外と評価されることが多いと言えます。

――過去にお仕事で経験された中で印象的なエピソードがあれば教えてください。
 
北野武(ビートたけし)さんが監督された映画『龍三と七人の子分たち』に出演させてもらった縁もあり、武さんが出演される深夜の生放送番組に呼んでいただいたことがあったんです。その番組には30組くらいの芸人が出ていたのですが、収録後に武さんが私たちに向かって頭を下げながら「今日は本当にありがとうございました。この世界は本当に大変で、誰が売れるかはわかりません。でも、僕は1つだけ確実に売れる方法を知っているんです。それはとにかく続けること。続けていれば必ず芽が出る時がきます」とおっしゃったんです。その言葉がずっと心に残っているので、今でもブレずにお笑いの仕事を続けられている面があります。

――実際、これまで順風満帆な道のりではなかったと思います。逆境に立たされた時、どのようにすればそれを乗り越えられるとお考えですか?
 
長年この仕事をしてきて1つわかったのは、逆境やピンチの後には必ずいいことがあるということなんです。例えば以前、すごく頑張ってネタをつくってゴールデン番組に出られたのに、ある大物のテレビ局関係者が私のことを気に入らなかったらしく、出演部分がカットされてしまいました。でもそれを知った別のテレビ関係者の力で他の番組に出演でき、自分にとってより良い結果につながったんです。また、ある舞台で手をケガして3針ほど縫ってネタができなくなったことがありました。直後はひどく落ち込みましたが、その数日後に北野武監督の映画への出演が決まったんです。だから、何か悪いことが起きるたびに「今はむしろチャンス。この後は絶対にいいことがある」と思えるようになりました。

――『COMPANY TANK』は一歩を踏み出したい人の背中を後押しする雑誌です。最後に、そのような方々に向けてメッセージをお願いします。
 
人間、一歩を踏み出さなければいけない時はいろいろと考えてしまいがちです。でも、行動してみないと気付けないことは多いと思います。過去、私にも動きが取れなくなった時期はありましたが、いろいろと試行錯誤しながら動いてみると、何が自分に向いているのかが見えてくるものなんです。だから、一歩どころか五歩、十歩踏み出してみるのがいいのではないでしょうか。その十歩が削られて、一歩になるかもしれません。私もそうすることで、最近、映画への出演が決まりました。何かを前に逡巡されている方には、ぜひ思い切って動き出してほしいですね。
 

カトゥー
 
1976年生まれ、大阪府出身。大学在学中の1997年からお笑いコンビ「ハレルヤ」として活動。NHK「爆笑オンエアバトル」で決勝大会に出場するほどの実力派コンビだったが、2007年9月に解散し、ピン芸人としての活動を開始する。ポジティブな性格と、どこか昭和のテイストを感じさせる芸風が特徴。ニューハーフ「カトリーヌ」や、片岡鶴太郎氏の物まね「カトゥ岡鶴太郎」などの強烈なキャラクターで、お笑いライブを中心に活動している。

 
 
 

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