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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.20

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第20回は特別寄稿編として、コロナ禍で韓国が変わったことについて、現地状況とデータを踏まえてご紹介します。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニュケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載し、このシリーズでは皆様から特にご要望が多かったタイ国関連から、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と執筆を続けてまいりました。
前々号、前号では、実際に海外で生活・仕事をしてみて初めてわかる大変さや、実感できることについて、タイを例に挙げて仕事編と日常生活編を述べました。今号では前号でお伝えした、特別寄稿編として「コロナ渦で韓国が変わったこと」と題し、2023年9月に約4年振りに訪韓をしましたので表題の小考察をお送りします。(なお本稿において、コロナ渦での3年という期間を2020年から2022年としております)

① 食料品と物価の上昇

韓国に到着し、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、韓国レストランに訪れて価格を見て回りましたが、2020年の頃と比べてパンや生鮮食料品、ラーメンなどの日常食料品はどれも価格がかなり上がっていることを実感しました。特に、輸入原材料を使用しているものは高騰しています。例えばオーストラリアビーフを使用している韓国焼肉店では以前、センカルビ1皿KRW7,000くらいであったものがKRW12,000となっていたり、パン類も菓子パンで大体KRW2,000以下であったものがどれもKRW2,500程度になっていたりしました。(9月20日現在の為替レートはKRW1,000≒¥111、因みに2020年9月9日のレートはKRW1,000≒¥87)

当然最近の円安の関係で為替レートによる円換算の見方をすれば為替の影響も大きいことは事実ですが、2020年の韓国における消費者物価指数を100とすると2022年は107.71、本年2023年は111.53と全品目の平均であっても上昇を続けています。※1知り合いのビジネスマンや友人達が口を揃えて食料品価格の高騰にはついて行けないとため息をもらしていました。

②韓国における自動車販売

JETRO(日本貿易振興機構)の資料では、下記のような記述があります。

「韓国自動車産業協会(KAMA)が発表した自動車産業統計によると、2022年の国内生産台数は前年比8.5%増で、2015年以来の増加に転じた。輸出は12.7%増と好調で、エコカーの輸出も増加した。一方で、国産車の国内販売台数は3.2%減となった。(中略)輸出台数は、ウォン安ドル高と市場拡大により売り手市場となったため、前年比12.7%増の230万333台となった。地域別には、欧州以外の全地域で増加した。また、輸出金額は前年比16.4%増の約541億ドルと、2014年に記録した過去最高額(約484億ドル)を上回った。現代自動車の高級車ブランドのジェネシス(GENESIS)をはじめとする高級車の輸出が大幅に増加したことが寄与した。※2」

この記載からもわかる通り、韓国の一般ビジネスマンの日常食料品の物価高騰に対する言葉とは裏腹に、乗用車については少し別の現象がみられます。現在、現代自動車で製造販売している超高級車である「ジェネシス」が大きな人気と販売実績をほこり、車種や車格によっても違いますが、概ねKRW70,000,000からKRW100,000,000を超える価格帯の車の納入に、半年から1年超かかる販売状況となっています。また韓国では道路を走行している乗用車のほぼ7割は韓国製ですが、残り3割はメルセデス、BMWなどが乗られています。それに日本と比較して、大型車種を若い世代の人達が購入するケースがここ数年激増しているのです。

自動車業界に詳しい方に話をうかがうと、輸入車の場合には日本と違い関税がかかり、また韓国ウォン安状況下で車両価格が日本より高いにもかかわらず、多くの若者が「見栄」や「虚栄心」で購入していることが多いとのことです。自分のステータスを高く見せたいということ、そしてなおかつ、韓国の場合、地下鉄網が拡充してきている首都ソウルなどでも生活の足として日本以上に自動車に頼っていること、この両方の理由が、韓国での車両販売台数の上昇に深く関わっているのだと感じました。

③韓国の不動産価格

韓国では超富裕者層は、ソウルやその近郊都市を中心に、土地付きの一戸建てに住んでいます。また、それ以外の富裕者層の多くは最新設備と広さ、生活の利便性が充実している高級アパート、コンドミニアムを購入し暮らしています。私が2000年当時ソウルに住んでいた頃からソウル、仁川、水原、文壇といった首都圏における住宅認可・着工件数は毎年右肩上がりで、ソウルの町中どこを見渡しても超大型重機を使って高層アパートを建築していました。しかし、今回の2023年9月の訪韓の際には同様の地域において明らかにその数が減っていました。また韓国の前政権時には、住宅供給戸数が特にソウル市内で不足していたこともあり、不動産価格の高騰が止まらず、新築中古物件であっても、ソウルやその近郊エリアの中心部にあるアパートの価格はKRW 500,000,000~KRW2,000,000,000が1つの相場でした。

ところが2022年に米国連邦準備理事会(FRB)の政策金利政策で米国の大幅利上げに踏み切り、韓国と米国の政策金利の差が大きく広がったため、韓国銀行が韓国の政策金利を引き上げています。(2020年5月は0.5%のボトムであったものが、2023年1月は3.5%)。そのことで住宅ローンに対する金利負担も急増し、韓国5大銀行(KB国民、新韓、ハナ、ウリ、NH農協銀行)住宅担保ローンに対する変動金利も2022年1月にはおおむね3.5~5.07%であったものが、2023年1月には5.27%~8.12%まで上昇してしまいました。※3結果として、それが購入予定者の不動産投資を躊躇させる要因になり、アパートが売れなくなり、2022年末より価格が暴落し始めているのです。※4このことは、不動産バブルがとうとうはじけてきたことを示します。

いかがでしたでしょうか。今回の韓国滞在は1週間弱と短期間ではありましたが、少しでも読者の皆様に現在の韓国の状況の一部でもお伝えできたら嬉しい限りです。次号も引き続き、「コロナ禍の3年で変わったこと 韓国 特別寄稿」の後編をお送りしてまいります。韓国における最低賃金の推移や、所得格差の現状について掘り下げていきますので、どうぞお楽しみに。

引用元:
※1 「IMF WORLD ECONOMIC OUTLOOK DATABASE」より
※2「JETRO(日本貿易振興機構)」より
※3 「韓国銀行ホームページ」より
※4 「韓国不動産院2023年1月発表 全国住宅価格動向2022年12月のデータ」より

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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