コラム
人の生活に深く関わり、時にペットという領域を超えて“パートナー”として人生を彩ってくれる「犬」。たくさんの人に愛される存在である一方、その陰では捨てられて保健所送りになったり、ペットショップの繁殖場で不要とされたり、人間の都合で殺処分されてしまう個体が数多くいる。当コラムでは、トリミングサロンを運営しながら保護犬活動に力を入れる(特非)Happy Wan の原弥千代氏が、保護犬活動の実態や支援の必要性についてリアルな情報を発信していく。
(特非)Happy Wanの原弥千代と申します。2022年7月号からコラムを担当させていただき、6回目にあたる今回は最終回となります。最終回のテーマは、『私たちが活動をやめる時が来るのか』を考えてみたいと思います。
同じような活動をされている方たちは、一度は考えたことのあるテーマだと思います。
世界の動物愛護は
ヨーロッパには『動物愛護先進国』が多く、日本よりも100年進んでいると言われています。逆にいえば、それだけ日本は動物愛護に対する意識がとても低いということです。
ヨーロッパの中でも特に動物愛護に力を注いでいるイギリスやドイツでは、法律によってペットショップは許可制となっているため、ライセンスを持たないペットショップでの犬や猫などの生体販売は、ほとんど禁止されています。また、飼い主の意識も高く、しつけをされた犬が多いため、キャリーケースなどに入れなくても、一緒に電車やバスといった公共交通機関も利用することができるのです。
日本の動物愛護
このような国がある中、日本では動物取扱業の届出をして許可を得れば、ペットショップやブリーダーなど誰でも開業でき、誰でも命を“商品”として販売することができます。ただ、一般的な陳列販売している物と違う点は、売れなければその期間ご飯を与えたりお世話をしたりと、お金や時間がかかること。なので、販売者は一日でも早く売るほうがもうかりますし、疾患を持って産まれたとしても、値段を下げる、口外しないなどの対策をすれば問題ないと考えている繁殖者も少なからずいます。最悪の場合は売れなければ“不用品”となり、殺処分されたり遺棄されたりしてしまうこともあるでしょう。
そのような闇があっても現状の日本の法律では、それらを厳しく取り締まり、解決に導くことはできません。そのため、誰にも知られることなく、命を捨てられてしまっている犬もいると思われます。動物でも人でも、命の価値は同じです。だからこそ、人間が動物の命の期限を勝手に決め、粗末にすることはあってはならないと思います。命の期限というのは、保健所に持ち込まれた犬に対しても同じです。保健所判断で殺処分を決めてもいいのでしょうか?人に対して攻撃性があったり重篤な疾患を持っていたりするからと言って、それは殺処分していい理由にはなりません。攻撃性があるのは犬が人間を信用していないだけであって、そのような性格にしたのも人間ではないでしょうか?里親募集ができなくても、行政で飼養はできるはずです。疾患を持っていても、最後まで最善を尽くして看取ってあげればいいのです。
愛護センターによっては、動物病院同様に立派な医療設備が整っている場所もあります。地方などの医療設備が整っていないセンターの場合、センター同士が連携して対象犬を移送するなど、対策はいくらでもあると思います。家族と幸せに暮らしている子たちは病気をしても最期まで看取ってもらえる権利があるのに、行政に持ち込まれると権利を失うというのはおかしなことです。果たして、国民の税金で建設された施設や設備が十分に機能し、活用されていると胸を張って言えるのでしょうか?
マイクロチップ装着の義務化について
動物愛護法と言いながら、日本の動物愛護法は動物のための法律ではなく、人間を主体とした法律になっていることにも疑問を感じます。2022年6月に改正された動物愛護法でマイクロチップ装着が義務化されました。
マイクロチップを装着したからといって、何が動物のためになっているのでしょうか?動物の所有者を紐づけることにより、迷子などになった場合には役に立つかもしれませんが、動物・所有者情報は簡単に登録・削除できてしまいます。また、装着を義務化しても自身で登録しなければ意味をなさないのです。
当団体が繁殖場から引き取りした子の中にもマイクロチップが装着されている子が多くいました。登録状況を問い合わせても、そもそも登録をしていないのか削除したのかはわかりませんが、引き取った子たちに関する情報は何も得られませんでした。せめて個体情報だけでもわかれば、その子の誕生日など今後に必要な情報がわかるのに・・・と憤りを感じてしまいます。なぜ、システムで個体情報は削除できないよう仕組みを整えないのか。マイクロチップの装着を義務化するのであれば、人間同様に出生届や死亡届を義務化して、その子が生きた証を残していただきたいと強く思います。
最終回を迎えて
最後になりましたが、今回、コラムのお話をいただきましたCOMPANY TANKのご担当者様・編集者様には大変感謝しております。文章力のないコラムで購読者様の心に響いたか不安ではありますが、私自身新たな挑戦をさせていただき、保護活動や動物愛護への理解を広める活動の一歩を踏み出せた気がします。
今後の日本が『動物愛護先進国』と全世界から認知されることを期待して、今回の連載コラムの締めくくりとさせていただきたいと思います。
原 弥千代 甲子園球場のショップに販売されていた犬用の服に一目ぼれし、犬を飼い始める。絆を深めいつも一緒にいたいと思うようになったため、不動産会社を退職し2010 年にトリミングサロン「dogparadise Cocoe」をオープン。3店舗まで事業を拡大する。2020年には(特非)Happy Wan を設立し、大阪府枚方市を拠点に犬の保護活動をスタート。トリミングサロンの店舗スペースを活用した保護を行いつつ、多くの人に「自分にできる範囲での支援」を呼びかけ、着実に活動の幅を広げている。 |
<< Chapter 5 : コロナ禍でのペット需要について |