一歩を踏み出したい人へ。挑戦する経営者の声を届けるメディア

Challenge+(チャレンジプラス)

コラム

オフを充実させ、より良いビジネスライフを! 大人が楽しむアウトドア考

キャンプやサバイバルに関するアウトドアスクールを主催しているイナウトドア合同会社の森豊雪代表が、アウトドアの魅力をお伝えする連載コラム。今回は、キャンプの中でもとりわけ人気の高いたき火を中心に、人間にとって欠かせない「火」をテーマに論を進める。たき火を体験できるキャンプ教室を長らく主宰している同氏が、古来より人々が火に魅了されてきた理由などを解き明かしていく。
 

◎たき火という行為をめぐる現在の状況

「かきねのかきねのまがりかど たきびだたきびだおちばたき~」で始まる「たき火」という童謡・唱歌があるが、最近では、このような光景はほとんど目にすることがなくなってしまった。実に風情を感じる光景ではあるのだが、現在では違法と判断されるケースが多いとのこと。庭の落ち葉などでたき火をするのは、「ゴミの焼却」と判断されるのだそうだ。もちろん、規模の大小など細かな判断基準もあるようだが、たき火が公害の1つとしてとらえられてしまうというのは個人的には何ともやるせない。

◎キャンプで楽しむことができるたき火

一方、キャンプにおけるたき火などは例外とされているようであり、このあたりの線引きは何とも難しく感じる。ともあれ、昨今のアウトドア、とりわけキャンプブームは私が開催しているキャンプ教室などにも大きな影響をおよぼしており、「これからキャンプを始めたい」と口にされる方も多い。その中には若い世代だけではなく、子育てがある程度一段落したような中高年の方々も数多く含まれるのだから、その人気のすごさを日々実感している。

キャンプの中でもとりわけ「たき火をしたい」という要望が多いのは、冒頭に記した歌のような、街中で誰もがたき火を楽しんだ時代が遠い過去のものになってしまったためなのかもしれない。たき火をした経験がない方が思っていた以上に多いというのが私の率直な感想だ。また、たき火をしたことがあるといっても、その大半の人が小学校の林間学校などで行った飯ごう炊さんやキャンプファイヤー程度の経験しかない。つまり、自分で火おこしをしていないケースがほとんどなのだ。

他方、私が主催しているキャンプ教室では、極力、紙や市販の着火剤などを使わずに火おこしをしてたき火を行うということを可能な限り少人数で実践している。未経験といっても大人の方だと火を付ける知識はそれなりにお持ちなので、「こうやれば着火できるだろう」というおおよその見当はつけられるはずだ。しかしいざ着火をすると、最初は付いてもじきに火が消えてしまう。「あれ?おかしいな」という声とともに再チャレンジするも、たき火にまで到達しないことが多い。しかしそこがまた、たき火のおもしろさであり、自然の中での行為の難しい点であるとも言えよう。

時折、小学生を対象に「火おこしとたき火体験」などを実施することがある。その際に用いるまきは特別に用意したものでなく、山などにあるものを拾って使用してもらうのだが、それがなかなか難しいのだ。燃焼させるための3つの要素は事前にお伝えするが、思った通りにはいかないことが大半。それらの原因の多くは、まきのコンディションと組み方にある。この辺の微妙なニュアンスは、実際にたき火をしてもらえれば理解していただけると思う。最近では、バーベキューなどを行う際にガスボンベであぶって半ば強制的に点火している方を見かけるが、普段はバーナーでいい。私の教室ではなるべく自然物で点火をしているが、それは防災の観点もとり入れているためなのだ。

◎人間が火に魅了される理由とは

ここまで、主にたき火という行為が意外と難しいということを書いてきた。では、人々はなぜそれでもたき火をしたいと思うのだろうか。よく聞くのは、規則的な中にも不規則が混在している 「1/fゆらぎ」に人間が癒やしを感じることからたき火に魅了されるというもの。この癒やし効果は何もたき火に固有のものではない。自然界には多くの「1/fゆらぎ」があるのだ。例えば、木々のざわめき、小川のせせらぎ、波の音などの「不規則なもの」にも人は引きつけられる。

この現象に関しては世界中で長年研究が続けられており、人間は五感を通して外界から「1/fゆらぎ」を感知すると、その生体リズムと共鳴して自律神経が整えられ、精神が安定し、活力が湧くとされている。そうしたやや小難しい話は別にしても、自然の中に身を置くと多くの人は心地よさを感じるはずだ。

例えば、海岸で行うたき火には「1/fゆらぎ」がたっぷり含まれており、その渦中にいる人々の多くは「この光景をずっと見ていられる」と口にする。ことほどさように、人間はたき火が持つ「1/fゆらぎ」に強く引き付けられるのである。

人類が火を使い始めた起源には諸説あり、その中には、最初は落雷による火災のようなものがきっかけだったのではないかという説も含まれている。現代人であれば誰もが火に関しては理解しているはずだが、もし落雷によって初めて炎を見たのだとすれば、彼らはどのような思いを抱いただろうか。もしかすると落雷の他にも、火山の噴火などを契機に初めて火を目にした現生人類の祖先もいたかもしれない。

いずれにしても火は太古の昔から私たち人類の周りに常に存在し、生活するうえで必要不可欠なものだ。ところが、最近ではオール電化の住宅も増えてきており、家の中で火(炎)を目にすることがまったくないというケースも現れている。

そのような状況が、かえってたき火に引かれる人々を増やしている側面もあるかもしれない。自宅にまきストーブを入れられるご家庭はうらやましい限りだ。最近では、リビングに燃料で炎だけ出す「ミニたき火」のような商品も販売されている。それほどまでに、人は炎に魅了されているのだろう。

先述したように、「1/fゆらぎ」は長年研究されてきたほど奥の深い現象である。かく言う私もまた、たき火の魅力に取りつかれている人間の1人であることは間違いない。

さて、今日もたき火をしに出かけるとしようか。

▶イナウトドア(同)では親子向けスクールや焚き火体験なども行っております。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
 
https://www.inoutdoor.work/school
■プロフィール
森 豊雪

学業修了後はエネルギー関連の製造会社に入社し、30年以上にわたって勤務する。55歳を迎えて新しい道を模索。もともと趣味で活動していたアウトドア分野で起業することを決意し、イナウトドア(同)を立ち上げた。現在は、オリジナルアウトドアグッズの開発や、サバイバル教室などの展開、自然保護のボランティア活動に注力している。
 
※保有資格
・NCAJ 認定 キャンプインストラクター
・JBS 認定 ブッシュクラフトインストラクター
・日赤救急法救急員他
■企業情報
イナウトドア 合同会社
〒238-0114
神奈川県三浦市初声町和田3079-3
■URL
https://www.inoutdoor.work/
■Twitter
@moritoyo1

 
 

<< 第22回 車中泊を楽しむために...第24回 春の海風を受けて釣りを楽しむ...

躍進企業応援マガジン最新号

2024年11月号好評販売中!