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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.14

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第14回は、アラブ人についてお話しします。

皆様こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載しております。

さて今回からは、アラブ人気質とアラビアでビジネスを行うポイントを2回にわたってお話しさせていただきたいと思います。本コラムでは、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、クウェートなど、ペルシャ湾岸を中心に取り上げてまいります。外務省ホームページ国(地域)別在留邦人数推計データ(2021年調査)によると、UAE、サウジアラビア、クウェートには邦人がそれぞれ4428人、635人、153人おり、外務省海外進出日系企業2022年版によると、日系企業拠点数はそれぞれ331拠点、108拠点、18拠点あります。特に資源エネルギー、インフラ、建設系の企業が進出をしており、太陽光・風力発電、水素・アンモニア関連事業、電力、水、都市開発などを中心に事業展開しています。最近では食品、医療関係の企業も増えているようです。

日本人が抱くアラブ諸国のイメージといえば、「灼熱の砂漠とラクダの隊商」、「オイルマネーによる億万長者がいる」、「局所的な超高層ビル群」などがありますよね。日本とはまったく異なる文化や宗教、環境で生まれ育ったアラブ人はどのような人々なのか、またアラブ人ビジネスマンの気質にはどのような特徴があるのか。筆者はUAE、サウジアラビア、クウェート、オマーン、カタール、バーレーン、トルコに30年以上にわたり頻繁に行き来し、特に食品や雑貨、部品などを日本から輸出する業務に携わってきました。それらを通じて筆者が感じたアラブ人気質やアラブ諸国でビジネスを進めるうえで重要なポイントをまとめましたので、順番に見ていきましょう。

① 時間に対する観念の違い

アラブ人はプライベートな時間はもちろん、ビジネスの現場においてもとにかく時間に対する観念が日本人や欧米人とは異なり、商談のアポイントメントでも時間を厳密に守るアラブ人ビジネスマンは(欧米や日系企業で仕事をする方以外)あまりいません。また、約束の時間に遅れることが悪であるという観念も、強く持ち合わせてはいないようです。アラブ諸国の方々はおおむね親日的であり、良く対応してくださる方は多いものの、時間感覚の差があまりに大きいため、ビジネスではストレスを感じることも往々にしてあるでしょう。

② ハムラビ法典の教え

アラブ人は日々の挨拶・コミュニケーションを重んじ、相手との友好関係を長い時間をかけて築いていく性質を持っています。一度信頼が構築された相手であれば、同性同士でも手をつないだり、腕を組んで飲食店へ入ったりするほどです。一方、相手の会社やビジネスマンからひどい仕打ちを受けたり騙されたりした時には瞬間的に機嫌を損ね、同様の仕返しをしてくる場合があります。これは「目には目を、歯には歯を」の復讐法で有名な「ハムラビ法典」の教えが今でも根強く伝わっていることに関係するようです。友好的平和的なビジネス関係を望む私たち日本人としては、このことは常に意識する必要があります。

③ 富裕層が多い

アラブ人男性の典型的な民族衣装といえば、白く足首まで丈がある「トーブ」に、頭の被り物「シュマッグ」と、それを留める黒い輪っか「イガール」が頭に浮かぶと思います。このような衣装を身にまとうアラブ人は経済的に豊かであることが多く、筆者もドバイやアブダビ、リヤドなどで現地ビジネスマンに招かれて自宅を訪れたことがありますが、どのお宅も広い敷地の中に芝生一面の庭やプールがあり、室内の調度品も豪華で、ゴールドを基調とした華やかなカーテンやタペストリーがかけられていたのを覚えています。

豪邸に住み、欧州の高級車を好み、日々高級でおいしい食事をしている――そうした生活の違いもビジネスにおける価値観や感覚の差を生んでいると言えそうです。

④ 明日のことは神のみぞ知る

アラブ人の会社と取り引きをしていて、契約を締結しても100%その通りに進むことはまずありえません。期日までに発注しない、最終発注内容確認後であっても平気で商品や仕様・数量の変更依頼が来る、契約書の内容に記載されていないことも「後出しじゃんけん」的に他の条件を出してくる、海外送金についても当然のように支払遅延がある等々…発注から納品までの間には通常のビジネスではあまり考えられない障壁が多々発生するため、日本人ビジネスマンはそれを乗り越える覚悟が必要です。

⑤ 素性を明かさない

アラビア人が営む会社は、中小企業だけでなく大手企業であっても、多くの場合は書面上で個人の素性や会社の内容を正しく明かすことはあまりありません。その背景や理由はいくつかあると思いますが、日本のように会社情報がホームページ上で公開されていたり、会社四季報が出版されていたりするわけではないので、企業調査をしたところで、私たちが期待するようなデータを取得することは困難なのです。

またそれに関連して、現代においても高額な支払いは振り込みではなく、現地で現金払いで行う場合が見受けられます。筆者自身も、実際に日本からUAEの取引先企業まで飛行機に乗って集金に行った経験が複数回あるほどです。

⑥ 高いプライドで自己主張し、自我を粘り強く通す

上述してきた内容からもうかがえるかと思いますが、アラブ人はとにかく自己主張が強く、自我を通すことについてはほぼ共通している性質であると思います。日本人ビジネスマンからすると自分勝手に見える部分も多く、話し合いについても粘着質なところが見受けられるため、欧米や日本人のビジネスマンは「アラブ人とのビジネスは疲れる」という印象を抱きがちです。相手方と折り合いがつくような接点を探したり歩み寄ったりという気持ちは、ほぼ持ち合わせていないと言っても過言ではないと思います。またプライドが極めて高いために、特に人前で大きな声で注意されたり反論されたりすると、態度を一変させるアラブ人も多く見てきました。

このように、宗教的にも文化的にも日本とは大きく事情が異なるアラブ人と上手にビジネスで付き合い、相互に良好な関係を構築していくために、私たちはどのような対応をしていけば良いでしょうか。次号ではアラブ人ビジネスマンと信頼関係を構築し、良好な環境で仕事を進めていくための対応方法、解決策を述べてまいりたいと思います。また、アラブ人の実態についても掘り下げていきますので、どうぞお楽しみに。

(次号へ続く)

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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