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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.13

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第13回は、前回に引き続きロシア人についてお話しします。

はじめに

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載しております。

さて今回は、ロシア人気質とロシアでビジネスを行うポイントの2回目のコラムとなります。前回本誌7月号の1回目のコラムの際、①陽気だがなかなか心を開かない、②上流階級か否かで所得・教育・語学に格差がある、③企業の信用調査がしにくい、④超短視的に取り引きする、⑤自己主張は強くないがプライドは極めて高い、と主に5つのポイントについてお話ししました。このような気質を概ね共通事項として持ち合わせているロシア人と、いかに友好関係を構築しながらうまくビジネスを展開すればよいか、今号では主な対応・対処の仕方についてまとめて行きたいと思います。

① 陽気だがなかなか心を開かない

ロシア人ビジネスマンは概ね内弁慶的な性格です。またビジネス取り引き上の相手がどのような人物かを理解、把握しないうちはたとえ名の知れた大きな企業が相手であっても、まず個々の人がどうか、という点に重点を置いている印象を持ちます。したがって日本人ビジネスマンであればロシア語がある程度できるか否かで、スタート地点が大きく変わってきます。そして何より大切なことは、付き合いや取り引きが浅い段階から、誠実にこちら側の心の扉を開いて一つずつ丁寧に話を進めていくことです。その際には折々自己紹介や自己アピールも入れておくと多少でも私たちを理解してくれることが速まります。根気よく誠実に応対を積み重ねて行くことが肝心です。またできることとできないことをメール等文章で明確にしながらコミュニケーションを絶やさないようにすることです。

② 上流階級か否かで所得・教育・語学に格差がある

ロシアに限ったことではないかもしれませんが、裕福でイギリス等に留学をしたり、ロシア国内で大学や大学院に進学したり、また家庭における教育もしっかり施されたいわゆる上流階級に分別される人と、それ以外の人とでは大きな格差が生じます。そしてこの厳然とした「差」は、ほぼ一生埋まることはありません。私たち日本人ビジネスマンが注意をする点として、特に初めての客先については相手の英語力や国際取り引きに関する知識・経験、業務の専門分野の知識・経験がどの程度あるかを冷静に見極めることが肝要です。

③ 企業の信用調査がしにくい

この点が一番の難関かもしれません。筆者の今までのロシアビジネスの経験では、企業情報を事前に取得できた例がほとんどありませんでした。それでも日本企業が売り手の場合、ロシア企業の経営・財務状態がわからなければ、そのぶん支払条件の項目のハードルを上げざるを得ません。取り引き金額の大きさに関わらず、最も安全度が高いのは「事前に全額銀行振込」という条件を堅持することです。またサレンダーB/Lは発注先からの依頼があっても支払条件項目に絶対に入れないことです。さらに、商取り引きが複数回、無難になされた後でも、全額事前銀行振込や取消不能信用状での取り引きを引き続き堅持し、掛け売りだけはしないようにすることをお勧めします。

④ 超短視的に取り引きする

ロシア人ビジネスマンとのビジネスで代金回収以外の部分で留意しなければならないのが本ポイントです。たとえ契約書上や発注書で発注商品の種類、型式、数量が確定していたとしても、出荷直前あるいは船積み後であっても数量の変更や商品の種類自体の変更をしてくる場合がどの業種においても必ずと言っていいほどあります。このような事態に陥らないためにも、先に述べた全額事前銀行振込が確認されてから商品の手配、製品の製造開始を行うことが重要です。ロシアではほぼどの業界・業種においても品質の優れた日本商品の需要があります。コストや納期がかかってもロシアの富裕者層向けにした商品などです。それだけに輸出者である日本企業にとっても、ロシアマーケット向けに受注先を確保したいところですが、超短視的な取り引きで揺さぶられないよう、腰を据えてビジネスと向き合っていくことを心がけましょう。

⑤ 自己主張は強くないがプライドは極めて高い

ロシア人ビジネスマンはプライドが極めて高く、自分を低く見られたり、相手から指図されたりすることにネガティブな反応を強く示す場合が多いです。この部分でつまずいてしまうと突然、取り引きや契約の停止、中止まで発展してしまうこともあるため、注意が必要になります。その対応・対処法としては、たとえ些細なことでも事実を冷静かつ論理的に文章に残しながら取り引きを進めていくことです。何か不都合やロシア人ビジネスマンの心情的にプライドに触れることがコミュニケーション上で発生すると、それが誤解だったとしても次の日から急に音信不通になるケースを筆者は目の当たりにしてきています。特に電話でのやり取りがあった場合には、即座にその内容を文章にして相手に再確認のメールを入れるようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ロシア人ビジネスマンはともすると冷徹で笑顔がなく、恐ろしいという印象を抱くかもしれませんが、基本的には心優しく相手の気持ちを察してくれる人がたくさんいます。ビジネスの場合には日本や日本人のことを十分に知らない場合も多く、どうしても彼らの土俵で物事を考えて進めていきがちな面がありますが、地道に丁寧に接し続ければ相互理解を少しずつ深めていくことが可能であると筆者は信じています。

次号からはアラブ人(主にUAE、サウジアラビア)気質とアラブ諸国でビジネスを行うポイントについて2回にわたってお話ししたいと思います。日本とは宗教的、文化的、民族的にまったく異なる地域の人々とのビジネスにおいて、多くの日本人ビジネスマンが困難な局面に出会う機会が多くあります。その中で友好的にビジネスを展開していくためにはどのようにすればよいかをお届けします。お楽しみに。

(次号へ続く)

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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