一歩を踏み出したい人へ。挑戦する経営者の声を届けるメディア

Challenge+(チャレンジプラス)

コラム

目の前の助けることのできる命を救いたい ~愛護活動で知るペットに対する想い~

人の生活に深く関わり、時にペットという領域を超えて“パートナー”として人生を彩ってくれる「犬」。たくさんの人に愛される存在である一方、その陰では捨てられて保健所送りになったり、ペットショップの繁殖場で不要とされたり、人間の都合で殺処分されてしまう個体が数多くいる。当コラムでは、トリミングサロンを運営しながら保護犬活動に力を入れる(特非)Happy Wan の原弥千代氏が、保護犬活動の実態や支援の必要性についてリアルな情報を発信していく。

はじめまして。(特非)Happy Wanの原弥千代と申します。2022年5月号にて鳥谷敬さんと対談させていただいたご縁で、今回から本コラムを担当させていただくことになりました。初回は自己紹介を兼ねて、私が今行っている活動をお話させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

活動を始めるきっかけ

私は本業では、大阪府でトリミングサロンを3店舗経営しております。幼少期から犬と暮らしていたため、自身の独立を機に愛犬との生活が始まりました。トリミングサロンでたくさんのワンちゃんたちと触れ合い、日々癒やされていたのですが、テレビなどで「保護犬」が取り上げられているのを見てから、幸せに暮らしている子の裏では人間の都合で殺される子がいるという現実を知り、「自分の手の届く範囲でできることはないか」と考えるようになったのです。とは言え、もちろん1人での活動は難しいため、トリミングサロンのスタッフや家族にも協力してもらい、おかげで現在に至っております。

日本の殺処分の現状

日本で殺処分されているワンちゃんは、飼い主などによって保健所に持ち込まれた子や、迷子になって家族が迎えに来てくれなかった子、繁殖場で不要とされた子など人間都合で不要とされた子たちです。どんな理由であれ、命の重みを理解していない人たちが多くいるのが現状だと痛感しています。当団体にて保護した子の中にも、重篤な病気を抱えている子が少なくありません。闘病の末、亡くなってしまった子もいます。

ペットに関する最も深刻な問題である「殺処分」は、2020年は約2万4000頭で、10年前に比べると88 %の減少率です。その背景には、私たちのような民間の愛護団体による殺処分を防ぐための懸命な引き取り活動があります。行政と愛護団体が協力して殺処分数を減らしていると思われている方も多くいらっしゃるでしょうが、愛護団体は引き取りをしても行政から援助がもらえるわけではなく、治療費などの資金をすべて自分たちで工面しているのが現状です。動物の治療費はとても高額なうえ、健康なワンちゃんでも狂犬病予防接種などの予防が必要なため、1頭の犬を引き取り1年間お世話をするだけでも、何万円という費用がかかってしまうのです。

主な活動方法について

当団体はトリミングサロンの店舗スベースの一部を活用して活動しており、保護する犬の頭数を上限5頭と決めているため、1 頭のご縁が見つかれば、1頭を保護するという形で、自分たちの無理のない範囲での活動をしています。

保護した犬は病院で初期検査や不妊手術、予防接種などを行い、その後トリミングサロン店舗への募集POP の掲載や、里親サイトやインスタグラム上での告知、譲渡会開催などを通じてご縁探しを進めることになります。犬の性格や過去の境遇もさまざまで、詳細な過去については私たちもわかりません。中にはトラウマを抱えている子もいます。

まずは私たちがそれぞれの子を理解してあげて、信頼してもらうことを第一優先にしています。時にはかまれることもありますが、ワンちゃんたちもかみたくてかむわけではなく、その原因も元をたどれば人間がつくったものだと思っています。病気が発症した時に適切な治療を受けていたら重症化することもなかっただろうと、腹立たしい気持ちにもなりますが、それでも時間をかけて接する中で心を開いてくれたり、元気になったりした瞬間はとても嬉しいです。

ワンちゃん同士で学ぶことも数多くあります。トイレシートの認識がない子が他の子を見て覚えたり、犬同士で遊び方を覚えたりと、ワンちゃんたちも必死に日々頑張ってくれています。ただ、先ほどもお伝えしたとおり、行政からの援助がない以上は、資金は自分たちで集めなければなりません。そのため、譲渡会などを開催しながら寄付を募り、家族探しと同時に募金活動も行っているんです。しかし、すべての愛護団体が善意のある団体とも限らず、見知らぬ愛護団体に寄付をすることをためらう方も多いと思います。そこで、寄付していただいた資金は治療費として使用することを優先し、必要な物資についてはその都度、ご支援をお願いしています。支援していただけることはとても嬉しいことですが、それ以上に活動を応援してくださっている方からメッセージをいただいたり、里親様からお迎えいただいた子の楽しそうな写真や近況報告をいただけたりすることが、私たちにとって何よりも励みになっています。

さいごに

他国ではすでに、ペットショップでの生体販売の中止や繁殖の廃止など、さまざまな規制がある中で、日本はまだまだ法律に抜け穴があると感じています。日本も愛護国となれば、本当の「殺処分ゼロ」も夢ではなく、私たちの活動も必要なくなるはずだと信じています。私たちが引き取りをして殺処分から免れることができても、まだその子の幸せではありません。家族として迎えてくれるお家が見つかって、初めて幸せになるチャンスを得られるのです。

今回より始めさせていただいた本コラムの連載を通じて、1人でも多くの方に動物愛護について興味を持っていただければ幸いです。

次回は、当団体にて引き取りをした後に、余命宣告された子のお話をさせていただきたいと思います。

■プロフィール
原 弥千代
 
甲子園球場のショップに販売されていた犬用の服に一目ぼれし、犬を飼い始める。絆を深めいつも一緒にいたいと思うようになったため、不動産会社を退職し2010 年にトリミングサロン「dogparadise Cocoe」をオープン。3店舗まで事業を拡大する。2020年には(特非)Happy Wan を設立し、大阪府枚方市を拠点に犬の保護活動をスタート。トリミングサロンの店舗スペースを活用した保護を行いつつ、多くの人に「自分にできる範囲での支援」を呼びかけ、着実に活動の幅を広げている。

 
 
 

躍進企業応援マガジン最新号

2024年11月号好評販売中!