一歩を踏み出したい人へ。挑戦する経営者の声を届けるメディア

Challenge+(チャレンジプラス)

コラム

~障害者雇用コンサルカウンセラーが贈る~ 職場で使えるやさしい心理学 Part4
社会に出たものの周囲とのギャップから生きづらさを感じたり、仕事でトラブルに巻き込まれてしまったりする軽度知的障害者や発達障害者が年々増えている。その中で、「障害者雇用カウンセラー」として障害者の就労サポートや、家族や周囲の人を含めたメンタルヘルスケア・カウンセリングを手がけているのが、「minoritas Lucet」の代表、宮田満代氏だ。当コラムでは、軽度知的障害児の育児やそううつ病を経験した同氏が学んできたメンタルヘルスや心理学の知識、さらには障害者の特徴や思考パターンなどを紹介していく。

皆様ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。一般の民間企業における障害者雇用率が2.3%になり、約1年が経過しました。障害ごとの職業紹介状況は、精神障害者が45%を超えています。これは、ハローワークに障害者雇用の申し込みをした場合、半分ほどの確率で精神障害者の方を紹介されるということです。しかし、まったく知識や準備がない状態で精神障害者を雇用するのは、お互いに戸惑いや不安を感じると思います。

そこで今回は、多くの精神障害者に当てはまる、仕事上で生じやすい疑問点や、実際の作業時の指示の仕方について、お話ししてまいります。

精神障害者の方に指示をする際には、担当者を決めておくと混乱が軽減されます。しかし、担当者が別の仕事をしていて手が離せない状況だと、精神障害者の方は話しかけづらさを感じて、作業が中断されてしまう可能性もあります。そこで、担当者が忙しい時の対応まで、あらかじめ決めておくと安心です。「メールでまず報告する」「メモを机の上に残す」「副担当者を決めておき、担当者が不在の場合は対応を任せる」など。

また、担当者は「誰かと話している時は少し待っていてね」「『お話中すみませんが』と声をかけてください」など、話しかける際の注意点を先に伝えておくことも大切です。

精神障害者の方に割り振る作業は、要素をなるべく細かく分解して、シンプルな形で指示することが重要になります。

私たちが普段行っている仕事・作業は、要素の多さに応じて「シングルタスク」「ダブルタスク」「マルチタスク」と分類することができます。例えば、「〇月〇日に2人で出張に行きます。出張準備をお願いします」と指示された場合、人数の確認や現地宿の手配、さらに資料作成や交通手段の検索まで、たくさんの作業を同時進行で行う必要があり、これを「マルチタスク」と言います。

そのマルチタスクの工程を分解して、「〇月〇日に出張に行きます。資料の作成をお願いします」と優先するべき作業を抽出したものが「ダブルタスク」です。しかし、この作業にも「資料データを受け取る」「部数を確認する」「印刷してファイルに入れる」など、細かく見ると複数の工程がありますよね。このように「○○してから○○」と1度の作業でいくつもの手順を踏んでいくことは、精神障害者の方にとっては難しい場合が多いです。そこでお勧めしたいのが、次に紹介する「シングルタスク」になります。

「シングルタスク」とは、ダブルタスクをさらに分解して、工程を1つだけにしたものです。例えば資料作成をお願いする際には、「この資料を〇枚ずつコピーして持ってきてください」と指示を出し、それが完了した後に、改めて「この順番に並べ替えてください」「それをこのファイルに入れてください」と1つずつ新しい作業を割り振っていきます。こうすることで、精神障害者の方も混乱することなく作業を進められるようになるのです。本人の障害特性や理解力・スキルを見ながら、少しずつステップアップしていくと良いでしょう。

精神障害者の方との面接では、仕事面・対人面・体調面を振り返り、今後の課題を明確化することで、本人の不安を払しょくしたり、モチベーションを維持したりすることができます。面接の頻度は、あくまで一例ですが、入社直後は毎日就業前に10分+週に一度30分、入社3ヶ月で2週に一度30分、入社半年で1ヶ月に一度と、少しずつ間隔を空けていくと良いでしょう。また、面接を行う時期については早めに予定を立てて共有しておくと、本人も心の準備をしやすいのでお勧めです。もし、本人から面接日や時間についての申し出があった場合には、臨機応変に対応してあげましょう。

面接時に聞いておきたいこととしては以下のポイントが挙げられます。

1:任せた業務は問題なく取り組めていますか?
2:業務の指示は理解しやすいですか?わからないことはありますか?
3:本人や指導する人が負担に思っていることはありませんか?
4:困った時に本人から、問題点を発信できていますか?
5:現場で孤立していませんか?

これらを1つずつ丁寧にヒアリングし、問題点が見つかったら本人と一緒に考え、解決してきましょう。

また、精神障害者の方と一緒に働くうえで何か問題点が見つかり、すぐに解決するのが難しそうな場合には、自分だけで抱え込まず各所へ相談することも重要です。相談できる職場外支援所について以下に列挙するので、ぜひ参考にしてみてください。

1:地域障害者職業センター
※「職業センター ジョブコーチ」と検索すると詳細が出てきます
2:地域の就労支援センター
※「就労支援センター」と検索すると詳細が出てきます
3:障害者就業・生活支援センター
※「生活支援センター」と検索すると詳細が出てきます
4:就労移行支援事業所
5:ハローワーク
6:医療機関

人というのはそもそも、一人ひとりに個性があります。同じ障害を持っていても「まったく同じ人」は存在しません。ですから、何か問題が生じても焦らず、少しずつ関わっていく中でお互いを理解し、誰もが安心できる職場を作っていきましょう。

同じ職場に精神障害者の方がいて、話しかけてみたいけれどどうすれば良いかわからない、という人も多いでしょう。いくつか例を挙げて、接し方のコツをご紹介しようと思います。

Q:初出勤してきたAさん(精神障害雇用)。話しかけても大丈夫かな?
A:まずあいさつをしてみましょう。もし、あいさつが返ってこなくても、緊張して固くなっているだけなので気にしないでください。話しかけてもらえると思っていないと、とっさに返事ができないことがあります。少しずつ緊張をほぐして関係を築いていきましょう。
Q:いつも1人で寂しそうだけれど、ご飯に誘ってもいいかな?
A:声掛けをしないと、と身構えずに、「よかったら一緒に休憩しませんか?」とソフトな感じで誘ってみてください。人との交流に慣れていない・情報量が少ないほうが安心する、などの理由で1人でいることを好む方もいるので、断られても気にすることはありません。

ここまで、仕事場での精神障害者の方との関わり方をご紹介してきました。皆様のご参考になれば幸いです。ご拝読ありがとうございました。それでは、また次号でお会いしましょう。

■プロフィール
宮田 満代(みやた かずよ)
minoritas Lucet 代表
 
発達障害児・軽度知的障害児の育児の中で、心理学に興味を持ち心理学について学びを深くする。2019年都立特別支援学校でPTA会長を経験し、障害児教育と保護者の関わり、社会との関わりを経験する。2020年日野市planTビジネスプランコンテスト ファイナリストとして、障害者雇用について発表。軽度知的障害者と発達障害者の可能性の開花には、保護者の健やかなメンタルヘルスと障害者雇用現場のメンタルヘルスマネジメントが必要だと実感し現在活動をしている。
 
※保有資格
【アイディア・ヒューマンサポート】
カウンセラー基礎 / メールカウンセラー / 心理テスト制作
JADP認定 メンタル心理カウンセラー / 上級カウンセラー
・日本メディカルセラピー協会
心理カウンセラー / カウンセリングアドバイザー /
アロマセラピーカウンセラー
・大阪府吹田市内精神科主催 広汎性発達障害児ペアレンツ講座
・東京都日野市 第11期創業スクール受講
(≪特定創業支援等事業≫認定)
・メンタルヘルス・マネジメントIII種
 
URL https://minoritas-lucet.tokyo/
保護者向けカウンセリングWebサイト https://lucet.link/
Facebook https://www.facebook.com/minoritas.lucet
Instagram @minoritslucet
Twitter @MinoritasL個人事業主様のためのビジネスオンラインサロン
「ビジネス相談室」を開催中。
ご希望の方はメール等でお問い合わせください。

<<職場で使えるやさしい心理学 Part3職場で使えるやさしい心理学 Part5>>

 
 
 

躍進企業応援マガジン最新号

2024年11月号好評販売中!