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コラム

~障害者雇用コンサルカウンセラーが贈る~ 職場で使えるやさしい心理学 Part2
社会に出たものの周囲とのギャップから生きづらさを感じたり、仕事でトラブルに巻き込まれてしまったりする軽度知的障害者や発達障害者が年々増えている。その中で、「障害者雇用カウンセラー」として障害者の就労サポートや、家族や周囲の人を含めたメンタルヘルスケア・カウンセリングを手がけているのが、「minoritas Lucet」の代表、宮田満代氏だ。当コラムでは、軽度知的障害児の育児やそううつ病を経験した同氏が学んできたメンタルヘルスや心理学の知識、さらには障害者の特徴や思考パターンなどを紹介していく。

軽度知的障害と発達遅滞について

こんにちは。前回は私の自己紹介的なコラムでしたが、今回は軽度知的障害という少し不思議な障害について、より掘り下げてお話ししたいと思います。

「知的障害」と聞くと、皆さんはどのような印象を抱くでしょうか。所かまわず叫ぶ人?何を言っているかわからない人?いろいろな印象があると思います。

私は、広汎性発達障害の長女と軽度知的障害の娘を育てています。2人は2歳差。軽度知的障害の次女は、4歳まで耳が聞こえづらく、手術をして聞こえるようになりました。6歳くらいになるまでは言葉も発せず、「耳が聞こえないせいだ」と思っていたのですが、幼稚園の先生に勧められて医師の診断を受けたところ、「発達遅滞」という診断が下りました(軽度知的障害というのは教育現場で使われる言葉だそうです)。

目安としては、IQ50~IQ70までの知的障害の子どもたちを「軽度知的障害」と呼びます。ただ、IQではそのような分類になっていますが、障害の内容によってはIQは軽度の範囲内でも中度知的障害者に分類されることもあります。

我が子が発達遅滞と言われたときに、「遅滞」だから時間はかかるけれど知能が正常に追いついていくのかな、と私は思っていました。ですが、それは違っていたようです。主治医に話を聞くと、軽度知的障害の子どもたちの認知や判断力は、小学4年生程度でストップするということでした。人生経験はどんどん積んでいくのですが、大人びていても判断力はやはり10才程度なのです。

さて、軽度知的障害という言葉は、あまり一般的ではありません。知的障害には重度・中度・軽度があるということ自体、私は子どもを通して初めて知りました。きっと娘が軽度知的障害でなければ、一生耳にすることはない言葉だったでしょう。娘と関わる前、私が知的障害のある人に抱いていた印象は、一言でいえば「なんだかよくわからない変わった人たち」という、決して良いとは言えないものでした。ですが、娘を通して知的障害のある子どもたちと触れ合ううちに、いろいろなことがわかっていきました。

大人になって障害に気付くケースも

私は2019年に都立特別支援学校のPTA会長をさせていただきました。その経験の中でいろいろと印象的なことがありましたが、まず子どもたちの礼儀正しさに驚きました。私がPTA会長だということを知っている子どもたちが、駅などで私を見かけると元気よくあいさつをしてくれます。また娘のことを知っている子たちも、あいさつをしてくれるのです。障害の出方は本当に人それぞれで、決めつけることは何もできないと痛感させられます。

軽度知的障害は知的障害の中でも、最も軽度です。それゆえに社会に溶け込んで、知的障害者と知られないまま過ごし、「大人になるまで自分が知的障害だということを知らなかった」という方もいらっしゃいます。これは個人差もありますので一概には言えないのですが、IQによって大きな差があると私は感じています。以前、「障害があるために社会生活がうまくいかずうつ病などを発症してしまい、検査をしてみたら軽度知的障害だった」という方とお話しさせていただきましたが、文章なども何の違和感もなく健常者と変わらないように感じました。その方はIQ60以上だそうで、「自分が知的障害だと知ってびっくりしました。突然奇声を上げ、変わった行動をとる人が知的障害だという認識だったので、まさか自分が···と思いました」とおっしゃっていました。それだけ、軽度知的障害者は社会に溶け込むことができる能力が高い方も多いのです。重度・中度・自閉症と軽度はそれぞれ出てくる障害が違い、一人ひとりに合わせた助けが必要となってきます。軽度の方は多くの場合「どこが知的障害なの?」と見た感じではわからず、しっかりしている部分も多いのですが、全体的に幼いのが特徴です。

保護者の心のケアも必要

さて、私は軽度知的障害児の保護者さんのカウンセリングも行っています。お子さんのことを相談する窓口はたくさんあるのですが、保護者さん自身のお気持ちに寄り添うカウンセリングにはなかなか出合えないというのが私の実感だったため、サポートしたいと考えたのです。

子どもの療育には保護者さんの心の安定が不可欠です。自分がうつ状態にあるのに、子どもの様子をしっかりと観察しいろいろな人に伝えるというのは、かなり難しいでしょう。保護者さん自身の心のケアを行うことで、子どもたちの心の健康につなげていきたいというのが、私が保護者さんのカウンセリングを行うもう1つの動機となっています。

子どものことはいくらでも相談できるけれど、子どもに障害があるからこそ自分のことを相談するのが難しく、内にこもってしまう。ママ友と言っても重度の障害を持つ子たちの親御さんは押しが強い場合が多く、カーストのようなものを感じる場合も多いです。私自身、かつてはなかなか相談できるママ友ができず孤立していました。転勤族で引っ越しが多かったのも一因ではありますが、同じ軽度知的障害のママ同士で話す機会は想像以上にないものです。

ちなみに、“ママカースト”では、子どもの障害が重いほどカースト上位になります。嘘みたいな話ですが、本当あるんですよ、“ママカースト”。もちろん、重度のお子さんを持つママたちの活動は素晴らしく見習うものがあると思います。でも軽度の子どもたちを持つママたちは委縮してしまいがちなんです。以前、身体障害を持つお子さんを育てているママさんとお話しした際に、「知的障害児のママさんは個性的な人が多い」とおっしゃっていました。・・・もっとも、私自身もそうかもしれません(笑)。

私が尊敬しているママさんは重度のお子さんを育てていらっしゃいますが、やはり行動力が違います。軽度の子を持つ親は、つい「重度ほど大変じゃないから」と遠慮してしまうのですが、軽度児は軽度だから楽、ではないんです。それはそれで大変なこともたくさんあります。

軽度知的障害は社会で活躍できる可能性を大きく秘めている障害の1つだと私は思っています。ですが、それには幼児期からの療育が欠かせません。社会の認知や補助だけではなく、保護者を通した療育が大切なのではないかと今、切に感じているところです。

軽度知的障害でも療育によって資格を取り、働ける人はたくさんいます。そんな人たちを見つけて、人材発掘にも尽力できれば幸いです。

■プロフィール
宮田 満代(みやた かずよ)
minoritas Lucet 代表
 
発達障害児・軽度知的障害児の育児の中で、心理学に興味を持ち心理学について学びを深くする。2019年都立特別支援学校でPTA会長を経験し、障害児教育と保護者の関わり、社会との関わりを経験する。2020年日野市planTビジネスプランコンテスト ファイナリストとして、障害者雇用について発表。軽度知的障害者と発達障害者の可能性の開花には、保護者の健やかなメンタルヘルスと障害者雇用現場のメンタルヘルスマネジメントが必要だと実感し現在活動をしている。
 
※保有資格
【アイディア・ヒューマンサポート】
カウンセラー基礎 / メールカウンセラー / 心理テスト制作
JADP認定 メンタル心理カウンセラー / 上級カウンセラー
・日本メディカルセラピー協会
心理カウンセラー / カウンセリングアドバイザー /
アロマセラピーカウンセラー
・大阪府吹田市内精神科主催 広汎性発達障害児ペアレンツ講座
・東京都日野市 第11期創業スクール受講
(≪特定創業支援等事業≫認定)
・メンタルヘルス・マネジメントIII種
 
URL https://minoritas-lucet.tokyo/
保護者向けカウンセリングWebサイト https://lucet.link/
Facebook https://www.facebook.com/minoritas.lucet
Instagram @minoritslucet
Twitter @MinoritasL個人事業主様のためのビジネスオンラインサロン
「ビジネス相談室」を開催中。
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