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コラム

オフを充実させ、より良いビジネスライフを! 大人が楽しむアウトドア考

アウトドアのオリジナルグッズ開発を手がける、イナウトドア合同会社の森豊雪代表が、アウトドアの魅力をお伝えする連載コラム。今回のテーマは自然の象徴、「木」だ。太古の昔から、時に資源として、時に道具として人の営みを支えてくれた木との触れ合いについて、アウトドアの視点と具体的なワークも交えつつ、その魅力をたっぷりと紹介していく。
 

◎人と木の触れ合い

アウトドア=自然の中というイメージを持ち、自然と聞くと山や森を思い浮かべる方も多いだろう。そして、山や森を形成するうえでなくてはならないものが、「木」だ。今回は、アウトドアから連想される「木」との触れ合いについてお話をさせていただこうと思う。

木は日常生活の中に取り入れることによって「ぬくもり」を感じさせる。木製のテーブルや椅子などもその1つだ。ただ、木を生活に取り入れるためには加工が必要であり、そのために存在する数多くの道具が、人と木を結び付けてくれる。私も子どもの頃は図工の授業などで彫刻刀を使って、版画をしたり、のこぎりで木を切って簡単な椅子をつくったりしたものだ。今ではあまり見られないが、一昔前までは鉛筆も肥後守(ひごのかみ)などの折り畳み式ナイフで削っていた。

現代の私たちにとって身近な刃物といえば、ハサミ・カッター・包丁などが挙げられる。逆に、ナイフ・鉈・斧といった刃物はほとんど使う機会がないが、木を加工するためには、これらが欠かせない道具となる。では、実際に木と刃物が密接に関係する人の営みとして、「グリーンウッドワーク、」「ブッシュクラフト」「薪割り」の3つについてご紹介しよう。

◎グリーンウッドワークの唯一性

まずは、グリーンウッドワークについて。これは、乾燥させていない生の木をナイフや手斧などで削っていく工作だ。つくれるものはさまざまで、以前に私が参加したイベントでは「豆皿」を工作した。

まず、大きな丸太状の木を斧やくさびを使って割り、おおまかな材料を切り出す。そのあとは手斧などに持ち替えて粗削りをしていき、徐々に自分の思い描いた形へ整えていく。イベント会場では数名の大人がそれこそ無心になって木を削っていた。本当に一言も言葉を発さずに黙々と。大人をここまで集中させるものは少ないかもしれない。もちろん刃物を扱っている緊張感もあるのだろうが、それ以上に「削りすぎて失敗してしまわないか」という不安が頭の片隅にあるからこそ、より真剣さが増すのだと感じた。最近は何でも再生・やり直しできる世の中だ。特に、デジタルツール関係のものは簡単に複製が可能で、生活をするうえでの利便性はあるものの、それらに「唯一感」を感じることはない。絵画などの芸術品にも言えることだが、唯一性はそのものの良さを際立たせる上で重要な要素だ。グリーンウッドワークにも、同じ趣がある気がする。だから、「削り過ぎたなら後から貼り付ければよい」という味気ない話にはならないのである。長い年月、風雨にさらされて大きくなった一つの生木を削って整形していく。そこにロマンが生まれ、自然とともにあるという感覚が立ち現れてくるのだ。

道具についてもう少し補足すると、先述の手斧などに加えてクラフト用のフックナイフやカービングナイフと呼ばれるものも使われる。特にフックナイフは刃が湾曲しており、スプーンのようなくぼみがあるものをつくるのに適している。持っていると仕上がりにも差が生まれてくるので、本格的に取り組みたい人にはおすすめだ。

また、仕上げたものは生木なのでゆっくりと乾燥させて割れを防ぎたい。そうして完成した皿などはキャンプへ持って行って、さかなを入れたりインテリアとして飾ったりして、存分に活躍させてあげよう。

◎時間を忘れて熱中してしまうブッシュクラフト

次は最近はやっているブッシュクラフトを紹介しよう。ブッシュクラフトとは、必要最低限のアイテムを持って森の中に入り、自然にあるものとサバイバル技術を駆使しながらキャンプなどを楽しむ活動だ。

ブッシュクラフトの場合は、倒木や落ちている枝などを活用し、簡易な椅子やたき火のための風よけ、調理器具をつるすものなどを、その場でつくっていく。既製品のキャンプ道具があふれる世の中で、あえて自然物で自分だけのオリジナル道具をつくって楽しむのは趣深い。私も時折、ブッシュクラフトのできるキャンプ場に行くことがあり、タープだけ使って泊まる場合にペグ(テントなどのロープを地面にとめるための杭状のもの)をつくったり、たき火でお湯を沸かすポットをつり下げるハンガーをつくったりする。気を付けたいのは、夢中になってこだわっているとあっという間に時間が過ぎてしまうということだ。それぐらい大人を夢中にさせてくれるものなのだが、キャンプ中はある程度、時間を考慮した仕上がり具合を考えた方が良いだろう。ある程度の雑な見かけでも、しっかり使えれば問題ないのだから。

◎薪割りがもたらしてくれる無心

最後は「薪割り」について。都会に住んでいる方にとってはたき火はもちろん、薪割りもなかなかに縁遠い存在だと思うが、私のスクールでは鉈や手斧を使ってちょっとした薪割りを体験することができる。

薪割りの魅力は、やはりあの音だろう。「パカッ!」という小気味よい音がなんとも心地よく、そんなにたくさん割る必要がなくとも、ついつい割り続けてしまう。実際に、体験者の多くは「不思議と音が良い」「いつまでもやっていられそう」と語ってくれる。焚き火は、不規則な炎の揺らめきが人の心を癒やしていると聞くが、薪割りの“音”にも、きっと人の心に働きかける何かがあるのだろう。

このように木との触れ合いは日々忙しい人たちの心を和ませ、癒やしてくれる。グリーンウッドワークでさまざまなカトラリーを手がけるもよし、ブッシュクラフトでその場を過ごすためのものをつくるもよし。また、薪割りのような単調さに癒やされる作業に没頭するもよし。あえてアウトドアに繰り出さずとも、自宅でできることもあるはずだ。お気に入りのナイフがあればさらに良い。時間をつくって箸づくりなどに没頭すれば、それが自分の心にゆとりを与える時間になるだろう。

▶イナウトドア(同)では親子向けスクールや焚き火体験なども行っております。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
 
https://www.inoutdoor.work/school
■プロフィール
森 豊雪

学業修了後はエネルギー関連の製造会社に入社し、30年以上にわたって勤務する。55歳を迎えて新しい道を模索。もともと趣味で活動していたアウトドア分野で起業することを決意し、イナウトドア(同)を立ち上げた。現在は、オリジナルアウトドアグッズの開発や、サバイバル教室などの展開、自然保護のボランティア活動に注力している。
 
※保有資格
・NCAJ 認定 キャンプインストラクター
・JBS 認定 ブッシュクラフトインストラクター
・日赤救急法救急員他
■企業情報
イナウトドア 合同会社
〒238-0114
神奈川県三浦市初声町和田3079-3
■URL
https://www.inoutdoor.work/
■Twitter
@moritoyo1

 
 

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