コラム
株式会社 ブレインスイッチ
代表取締役 壁山 恵美子
ストレングスコーチ・経営戦略コンサルタントの壁山恵美子氏は、大学院在学中から個人事業主となり、芸能界・出版業界など多くの業種を経験。30歳で転職した上場企業ではスピード出世を果たすなど、さまざまなビジネスノウハウを蓄積してきました。本連載はそんな壁山氏が「マネジメントのヒント」や「強みを生かすストレングス・マネージメント」についてお伝えします。第8回目のテーマは「強みに気付くと自分に変化が起きる」になります。
「風の時代」と言われるこれからの世界について
2021年が始まると同時に2度目の緊急事態宣言が発令され、日本国内では「今後どのように行動していけば良いのか」を各自が考えなければならない日々がスタートしました。感染者数が増加するにつれて、商売が成り立たなくなる業種も増えている中、それぞれが自分のすべきことを淡々とこなし続ける2ヶ月が過ぎたかもしれません。皆様の2021年はどのようなスタートとなりましたでしょうか?
「風の時代」の到来、と世間では言われており、これからは今までと異なる価値観や思考パターン・行動パターンが表出し始め、まさしく個性を大切にしていく世の中へ変化していくと私も考えています。「風の時代」とは、風がどこからか吹いてきて、それに合わせて動いていく時代だという考え方をされている人もいるようですが、私の考えはそれとは少し異なります。これからの時代は、自ら風のごとく動ける人たちが、周囲を巻き込みながら世界を広げていくのではないかと考えているのです。一人ひとりがさまざまなフィールドで自由に動き、まるで多数の円がベン図のように重なり合うことで、そこに関わる人たちが無数の化学変化を生み出し、大きな社会的な変化をもたらしていく。そんなことを期待しながら、私自身も社会を形成する一個人として動いていきたいと決意を新たにしています。
これからの「個」の在り方
さて、先述したような「個」と「個」が何らかの一致条件を見出し、ベン図のようなものを形成しながらつながり広がっていく世界では、従来の「コラボレーション」の概念が覆されていくと予想されます。「個」と「個」がより密接に結び付く時代だからこそ、個としての強い軸を持っていなければ、生き抜くことは難しいのです。別の見方をすると、世界はまさに自分の「強み」を生かしていく時代へと本格的に突入したとも言えるでしょう。
実際、直近の社会的な事象を見てみると、新型コロナウイルスの蔓延によって、老舗の旅館や食品加工会社が経営困難に陥り、多くの飲食店やアパレル店が撤退・縮小を余儀なくされました。また、同じタイミングで後継者問題に直面している企業も少なくありません。これらは単に「ウイルス蔓延で起こった結果」と考えられるかもしれませんが、実はずっと前から水面下で存在していた問題に目を向けられていなかった、あるいは時代の変化を的確に捉えられずに将来的ビジョンを持てなかったことが原因となっている可能性もあります。そして、今回の事象をきっかけに課題が噴出し、独自の強みを打ち出せず、時代の変化に対応できなかった企業が残念ながら淘汰されてしまったと考えられるのです。
組織だけではなく、そこで働く「個」についても同様かと思います。組織に所属し、毎日決められた時間に通勤して働く常識が崩れ、自宅でのリモート勤務という新しい形態が生まれました。それによって、現場作業が必須になる業種と、リモートでも機能する業種とが二極化してきています。今後はさらに、人が行う必要がある仕事とそうでない仕事も分離され、最終的には人が関わらずとも成り立つ仕事から人間は淘汰されていくことでしょう。そうなると、私たち自身も「個」の在り方、生かし方を考えていかなければならなくなるのです。
「個」の強みが必要とされる時代へ
国家資格は別として、一般的に「スキル」と漠然と呼ばれるものでは、もう「個」として通用しない時代に入っていると感じます。「個」をいかに生かして変化に対応しながら生き抜いていくのか。そこでフォーカスされていくのが、前回からお話ししている、「強み」になります。
前回、私自身が強みと出会ってからいかに自分を理解できたか、そしてその強みをマネジメントの仕事でいかに活用できているかについてお話しいたしました。今回はそれを踏まえ、強みの活用についてもう少し掘り下げてみたいと思います。前回もご紹介した「クリフトンストレングス・テスト」の結果で、私は自分の仕事だけでなく普段の行動を客観的に理解することができました。私は若くして独立していたので、会社に所属して昇進試験や人事研修を受けるといった経験がなく、実は当時、自己啓発や自分を知ることへの興味がまったくありませんでした。約20年前、上司が社内ネットワーク内のサイトに掲載していた推奨本に『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』というものがあり、その本を就業後に同じビルの地下にあった書店で手に取り購入したのが、自分の「強み」を活用するスタートであったと記憶しています。
強みに気づくと自分に変化が起きる
さて、その本の裏表紙に付いていたコードでテストを受けてみて、出てきた結果に驚きました。全34項目のうち、「競争性」が33位だったのです。私はちょうど受験戦争と言われるような学力第一主義の時代に中学・高校生活を送っていて、当時を振り返ると、確かに相対評価で比較されることが当たり前の環境になじめていませんでした。音楽や体育といった技能教科の成績は良好だったものの、主要5教科の点数は伸び悩み、自分でも好き・嫌いと得手・不得手の感覚は一致していました。そんな私にとって、「競争性」が33位=「競争性」が自分の強みではないという結果は、大きな気づきであると同時に、自分の気持ちをすっと楽にしてくれたんです。
ちなみに、「クリフトンストレングス・テスト」において「競争性」の資質を持つ人は、自分の進歩を他人と比較する特徴があります。一番になるため、コンテストで勝つために、相当な努力をします。彼らは常に競争相手を必要とし、互いに比較をし合う中で、己を高めていくのです。一方で私は、普段から競争することや競争相手のことは意識せず、自分の好きなことをいかに集中して取り組むかを考えるタイプでした。「競争性」の資質が低いのは、当たり前のことだったのです。適性がない資質にもかかわらず、社会の流れに押し流されて幼少期から競争を強いられてきたことで感じてきた違和感が、急にクリアになりました。それと同時に、逆説的に自分の上位資質=「強み」が何であるかも理解した私は、それを伸ばしていこうという考え方に変わったんです。その日から、私の仕事に対する姿勢が変わりました。「競争性」を使うことなく、代わりに自分の上位資質を活用する機会を増やしたことで、どんどん行動がしやすくなっていったことを覚えています。社会の傾向や時代に流されず、自分が持っている本当の「強み」を発揮できるようになっていったということです。
次回は、この私の上位資質を参考に、どういった資質の生かし方ができるかをお話ししていきたいと思います。
【参考】
GALLUP クリフトンストレングス日本語サイト
URL https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja
壁山 恵美子(かべやま えみこ) 株式会社 ブレインスイッチ 代表取締役 YAMA HOTEL & ROOFTOP BAR(ミャンマー/ヤンゴン) Chief Information Officer(CIO) イベント・出版業界を経て、ソフトバンク(株)に入社。情報セキュリティおよびリスクマネジメントを専門分野とするグループマネジャーとして業務に従事。その後、J-SOX、IT統制、システム監査等の経験を経て独立。現在は、上場企業の経営企画部門およびPR・マーケティング戦略などのコンサルティングに携わる。また、中小企業の経営者向けコンサルティングや人材育成の研修カリキュラム開発なども展開。さらに、YAMA HOTEL & ROOFTOP BAR(ミャンマー / ヤンゴン)にてCIOとして人材育成をする傍ら、ミャンマー進出コンサルタントとしても活動。Gallup認定ストレングスコーチとして、組織のマネジャーなどにコーチングおよびコーチング型マネジメント手法を指導している。 ※保有資格 ・Gallup認定ストレングスコーチ ・Tony Buzan公認 マインドマップ・インストラクター ・Peter Walker氏 公認 ベビーマッサージ&ベビーヨガインストラクター ・高等学校教諭第Ⅱ種(公民)免許 URL https://brainswitch.jp/ 個人Webサイト https://kabeyama.jp/ Facebook https://www.facebook.com/kabeyama/ Instagram @kabeyama Twitter @Kabeyama_Emiko 個人事業主様のためのビジネスオンラインサロン 「ビジネス相談室」を開催中。 ご希望の方はメール等でお問合わせください。 |
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