コラム
「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第3回は、韓国人についてお話しします。
韓国について
皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。「躍進企業応援マガジンCOMPANY TANK 2020年9月号」より現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスを当てたコラムを連載しています。
さて、今回から次号にかけては、多くの皆様よりお問合せをいただいた韓国人気質と韓国で(韓国人と)ビジネスを行うポイントについてお話を進めていきます。
外務省の「海外在留邦人数調査統計」(2018年要約版)によれば、2017年10月1日現在、韓国における日系拠点数は945拠点となっており、極東アジアでは中国に次いで2位です。韓国は日本の隣国であり、韓国現地に拠点はないまでも、日本とのビジネス往来が頻繁に行われており、日本で韓国人の方とビジネスで関わりを持たれているケースも、非常に多く存在しています。
日本人と韓国人では同様の部分も多くあるものの、その気質や物の考え方では大きく異なる部分もあると言えるでしょう。お互いのビジネス環境や性格、ビジネスのやり方などを十分に理解し合い、尊敬の念を込めてコミュニケーションを図っていくことが、円滑なビジネス活動を行っていくうえで重要です。以下では、韓国人(韓国のビジネスパーソン)の一般的な気質を5つピックアップしてみました。
① 仕事上における上下関係について
古来より儒教の教えが根付いている韓国では、親や親戚、会社でも相手に敬意を持って接していくことと、年長者や役職の上の方との上下関係がしっかりとしています。例えば、中途入社して新しく会社に入った場合、男性でも女性でも必ずと言っていいほど「何年生まれで何歳」という確認が入社初期の段階で行われます。これによって、ひとまず口の利き方、接し方が決まるわけです。対日本人スタッフとの間でも、明確な役職上の上下関係がない場合などのケースで同様の確認を行う傾向があります。日本では、現在でも年功序列や自分より年齢の上の方に対しては節度を守り、言動に気を付ける傾向がありますよね。韓国の場合には、特にその傾向がより顕著に存在しているのです。
② 超学歴偏重社会
最近では、多少の柔軟性は出てきてはいるものの、大手企業になればなるほど、依然として出身大学による明確な入社時と入社後の配属ルートなどのランク付けがあります。高給を目指して優秀な人材が集まりやすくなるため、それが大手企業の成長の礎になるものの、このことが大手と中小企業間の格差をさらに広げる要因の一つです。極端な話、小学校低学年より名門大学に入ろうと競争社会でもまれてきた若者が、入社後も残業や休日出勤を行い、成果を早く上げようとする傾向が強く見受けられます。
③ 仕事に対するスピード感
先述したように、韓国は超学歴社会で、苛烈な競争の中で他者よりも早く結果や成果を出したいという気持ちが、多くの韓国人の根底にあります。特に製造業の場合では、研究・開発速度が日本や他国と比べても相当早く、それなりの新製品を生み出しているのが現状です。
しかし、いわゆるアフターケアやアフターサービスの部分については、希薄さがあることは否めません。日本や欧米諸国の仕事のやり方と比較するならば、「過程」はともかく、スピード感のある「結果」「成果」に重点を置いていると考えて良いでしょう。そのためか、途中経過や報告、連絡などについては、一般的に日本企業ほど緻密にはなされていない。私自身、30年近くにわたってこうした光景を目にしてきました。
④ せっかちな一方で、時間にはルーズ
多くの韓国人ビジネスパーソンはせっかちな方が多いようです。とは言っても、韓国人の時間に対する観念は、日本人ほど強くはないです。マイペースな方が多いためなのか、待ち合わせをする際の約束の時間については、正確性はないようです。その原因の一つには韓国国内、主にソウル近辺における慢性的な渋滞にあると考えます。韓国はまだまだ車社会ですから、平日の出勤時は早朝より大渋滞です。また、経済が急成長して急な都市開発をせざるを得なかったために、駐車場が圧倒的に足りていないことも大渋滞に拍車をかけています。この大渋滞によって、ビジネスミーティングを行う場合も約束の時間に遅れてしまうのでしょう。
⑤ 契約書に対する考え方
韓国においてビジネスを行ううえで、意外と認知されていない重大な点があります。それは、契約書に対する考え方です。欧米や日本などは法律が国を治める法治国家であり、法律によって国が成り立っている思想が根本になってくる。それゆえ、あらゆるビジネスシーンでは契約主義が根幹にあります。
一方で、韓国は儒教の国です。儒教は「徳」が国を動かす徳治主義で、すなわち徳のある人が国を治めるべきだという思想が根本にあります。道徳が国を治めると考えていて、法律や決めごとを守ることは二の次です。「徳」の内容はその時々で揺れ動いてしまいます。極端に言えば、白が黒に、白を灰色だということに罪悪感はありません。欧米や日本企業が韓国企業との間で契約書を締結する場合、契約書をきちんと守ろうとする意識に温度差が出てしまい、大小多くのトラブルを発生させてしまうわけです。
まとめ
日本人と韓国人は同じような顔つきで、料理の仕方や食べ方の違いはあるものの、同じようなものを食しています。しかしながら、宗教的、文化的背景もビジネス環境も異なることは多くありますから、人の気質も考え方も当然違うわけです。それらについて、日本が正しいとか韓国が違っていると早急に決めつけるわけでも、どちらが正しいか正しくないか、あるいは勝っているか劣っているかを問うものでもありません。約束を双方で尊重し励行すること、日常的に時間やルールを守るということについては、どの国籍のスタッフであっても同じです。
いかがでしたか。まだまだお伝えしたい韓国人の気質は多くあるものの、紙面の関係上ご容赦ください。
次回は、今回取り上げた代表的な気質と韓国でビジネスを行うポイントについて、どのように理解、対応をしていけば相互信頼を構築させ、友好を深めビジネスを円滑に進めていけるのか筆を進めていきます。どうぞお楽しみに。
株式会社 サザンクロス 代表取締役社長 小田切 武弘 海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。 http://sc-southerncross.jp/ |