コラム
コロナ禍で支出の在り方が変わっている。外食費や遊興費が減り、巣ごもり消費への割合が増えているという。巣ごもり消費と言っても、使途は通信販売やケータリングに限らない。知識欲や成長意欲を満たすための支出も含まれるだろう。若者を中心に、人生の指針となる考え方を説いているポジティブ・エナジャイザーの髙島真太郎氏は、やがて来る「新しい物々交換」の時代に備え「お金の出口」を選ぶことが必要だと説く。
感染症のリスクは未だくすぶっているが、次第に人々の生活は元に戻りつつある。前回、人は行き詰まった状況下でどう生きるべきかをテーマに話を聞いた。自粛期間中、自分を見つめ直す時間ができたはずの今こそ、「心にスペースを持つべき」と髙島氏は語る。
少しずつ街に活気が戻ってきました。不安が和らぎ、人が前を向けるようになったことは喜ばしいことです。ただ、社会生活の様々なシーンにおいて、一旦変わってしまった人々の意識は、おそらく元には戻らないだろうと思います。そういった意味では、コロナウイルスは人々の価値観を変えたと言っても過言ではありません。
例えば、オフィスに行かなくても仕事はできる、と大勢の人が気付きました。また、オンライン・ツールを使えば、一堂に会することなく会議や面談ができることも分かりました。もちろん、リアルのようにスムーズに行かないこともあるけれども、それは技術の進化によって遠くない将来、改善されるでしょう。
そして、必要とされなくなった通勤時間や移動時間を、別の目的に利用できることに気付いた。これが最大の意識変革です。
そうして生まれた時間──「スペース」を、自分への投資にあてよう、というのが前回の主旨だった。
自己投資に時間とお金を使う。これは非常に意義のある「お金の出口」です。
──お金の…出口?
人は主に働くことによって収入を得ます。それが入口だとすると、出口はお金の使い方。生活費や養育費など様々な出口がありますが、生活に不可欠な支出以外のお金を、どのように使うかは個々の自由です。
例えば、ロレックスなど高級腕時計に惜しみなくお金を使う人や、ポルシェなどの高級車を何台も所有する人がいます。こうした物に興味のない人からすると、理解できないことかもしれません。しかし、当人からすれば、何千万円支払っても欲しいものは欲しいし、「マウンティング」のために、高級腕時計を着けたり、高級車に乗ったりしている人もいます。
あ、誤解しないでください。私は、お金の出口が高級品であることの賛否を論じているのではありません。これからの時代、人々の価値観が変わって、高級品の価値が失われる可能性があることを言いたいのです。
高級品は、いつの時代も人々のステータスとなってきた。そうしたステータスが失われる時代が来るのだろうか。
人間の価値は身に着ける物で決まるわけではないでしょう? 所有している高級車や高級腕時計、ブランドスーツ、地位、名誉、財産など、ひとつひとつ剥がしていって丸裸になった状態でこそ、その人の本当の価値が測れます。
丸裸の状態でも失われない人間の価値とは何でしょう? それは知性であったり、教養であったり。あるいは人に投資をしたり、人に感謝されることで得た人徳であったりするわけです。
今、あなたに自由に使える100 万円があったとします。それでステータスとなる腕時計を買うことに反対はしません。けれども、教養を得るために100万円を投資することのほうが、お金の出口としては価値があると私は思います。
価値観は様々だから、形の見えない物に投資するのは無駄だとか、実感がないと考える人もいるでしょう。でも、お金や物は盗まれますが、頭のなかは盗まれませんからね。
駅のどの出口を利用するかによって、行き先も、見える景色も違います。自分の選んだ出口は、「未来」に繋がっているか、考えてみることが大事です。
最近はキャッシュレス化で、現金そのものを利用する機会が減ってきた。お金を得ることや使うことに重みが感じられない人もいるらしい。
テクノロジーの進化で、この先、現金を目にする機会はなくなってしまうかもしれません。私はそんな世の中になれば、「物々交換」が着目されると思っているんです。
歴史をさかのぼれば、人間がお金を発明する以前は、物々交換により生活が成り立っていました。山の民と海の民が、肉と魚を交換する。近年では新聞と食糧を交換した時代もありました。そうした物々交換の形が、キャッシュレス化によって刷新されると思っています。
その1 つが、スキルの交換です。私は現在、『宇宙学校 しんちゃんねる369』というYouTube 動画を配信していますが、YouTube はパッと出の素人が人気者になるほど甘い世界ではありません。撮影や動画編集、YouTube のアルゴリズム解析など、ヒットメーカーとしてのスキルが必要になります。私は今、これらの作業を、ある方に無料で手伝ってもらっています。無料というのは語弊がありますね。スキルを提供してもらっている代わりに、このコラムでお話しているような、充実した人生を送るための
ブレインを提供しているのです。スキルとブレイン、どちらも目に見える物ではありませんが、お互いに欲しいものを交換することで利益を享受しています。これが新しい物々交換の在り方です。
自分一人では不可能なことであっても、第三者の力を借りれば可能になる。通常は協力の対価として金銭を支払うが、逆に相手の力になることで対価とする。それが新しい時代の物々交換なのか。
ただし、相手が求めるスキルを、自分が持っていなければ、トレードは成立しません。だからこそ日々、自分の引き出しを増やすための努力をしなければならないのです。
緊急事態宣言も解除され、徐々に慌ただしい日常も戻ってきましたが、心にスペースを持つことを忘れず、その空いたスペースに、新たなスキルを培うことが重要です。「何を培えばいいか分からない」という人は、好きなことから、自分に興味のあることから始めてみましょう。特技があるなら、それを伸ばすのもいいでしょう。何の役にも立たない特技やスキルと思っていても、それを熱烈に欲している人がきっといます。
近い将来、物々交換の場を提供するためのプラットフォームを作りたいと思っているんです。マッチングアプリのように、自分が求めるスキルと、自分が提供できるスキルを登録し、バーター相手を探す。作りたいと言いましたが、私にはそんなスキルはないので、誰か代わりに作ってくれる方が現れませんかね(笑)。その方の求めるスキルが私にあるなら、惜しみなく提供しますよ。
コロナ禍で、自分の将来像が見えなくなったと悲観する人も多いが、将来像は自ら描くものだ。髙島氏の言葉を人生の指針としていただきたい。
語り手 髙島 真太郎 WORLD JOYOUS LIFE 合同会社CEO。 建築設計の業務を営んでいたが、多くの経営者と出会う中で、セールスエージェント業務に着目。若い営業職を支援するコミュニティ作りに注力する。 『宇宙学校』しんちゃんねる369 https://m.youtube.com/c/shinchannel369/ |
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