コラム
ハラスメントを防止して
コロナ禍を従業員みんなで乗り切りましょう!
2020年6月に、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行されました。コロナ禍の状況の中、ますます重要性を増してきている法律です。なぜ今、ハラスメント防止に取り組まなければならないのか、職場のハラスメントにはどのような種類があるのか、コロナ禍との関連性は何なのか、解説したいと思います。
◆ パワハラ防止法施行、中小企業は2022年から
こんにちは。本コラムの連載をしている、キャリアコンサルタントの森ゆきです。日頃は、企業の従業員向けに、研修やキャリア面談を実施しています。このコラムでは、企業の人材活用の視点から「働き方改革の進め方」について、毎号、解説をしています。今回のテーマは「ハラスメント防止」です。
職場における2大ハラスメントはパワハラ(パワーハラスメント)とセクハラ(セクシャルハラスメント)です。どちらも職場環境を悪化させ、従業員の離職や、やる気の低下、作業効率の低下などを引き起こすという共通点があります。しかし、それぞれのハラスメント防止のための対応策は異なるのです。まずはパワハラについて解説していきます。
◆ パワハラの経営に与える重大影響とは
代表的なパワハラ例を 3 つ挙げると下記のようになります。
A.殴る・蹴る・物を投げつけるなどの身体的攻撃
B.「お前なんか辞めてしまえ」と言うなどの精神的攻撃
C.こなし切れないほどの大量の業務やノルマの強要
Aの身体的攻撃は、相手にけがを負わせてしまった場合、加害者は刑事責任を問われる可能性があります。Bの精神的攻撃はパワハラの中で最も多く発生していて、被害者がメンタルヘルス不調を引き起こすケースが多発しているのです。被害者が、休職や退職を余儀なくされるなどした場合、加害者と経営者は損害賠償を求められる場合があります。Cは長時間労働につながりますので、残業時間の上限規制を超えて法令違反になったり、働き過ぎによって健康を害して労災申請がされたりする場合があるでしょう。
このようにパワハラは、被害者が心身の不調を引き起こすリスクがあるだけでなく、加害者や、管理監督責任のある経営者にも大きな影響があります。例えば、従業員が退職してしまったり、被害を受けた従業員から損害賠償請求をされたりするかもしれません。また、訴訟や事件となった場合は、会社名が公表されますので、顧客からの信頼を失い、新規の人材採用も難しくなります。これらのことを考えると、パワハラ防止に取り組むことは、被害者の救済の意味だけでなく、経営に対するリスク管理と言えるのです。
◆ セクハラ、およびセクハラと関連の深いさまざまなハラスメント
セクハラと言えば、「男性上司が女性部下に対して、性的関係を求める」や「男性職員が女性職員に対して卑猥な言葉をかける」などの、よく見られる女性への人権侵害を想像するかもしれません。残念ながらそのような事例は依然としてあるものの、昨今では、より広範囲にわたるいやがらせが問題となっています。
ジェンハラ、マタハラ、パタハラ、ケアハラと言う言葉に代表されるハラスメントです。ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)は、男らしさ・女らしさを強要するようなハラスメントで、「男のくせに」「女のくせに」といった言葉で相手を傷付けるいやがらせです。また、LGBT などの性的少数派の人たちに対する差別的な言動もジェンハラとなります。
マタハラ(マタニティハラスメント)は、女性が妊娠・出産・育児をする際にいやがらせを受けること。本人が希望していないのに妊娠・出産を理由に異動させる、正社員からパートになれと強要する、契約社員に契約の打ち切りをするなどが該当します。パタハラ(パタニティハラスメント)は育児を理由に休暇を申請したり、勤務時間の変更を望んだりする男性に対して、ケアハラ(ケアハラスメント)は男女問わず介護・看護を理由に休暇の取得などをする人に対して、職場でいやがらせをすることを指します。
◆ ハラスメント防止は、多様な人材・多様な働き方につながる
パワハラも、セクハラも、その他のさまざまなハラスメントも、これらを防止することは「多様な人材、多様な働き方」につながります。仕事の成果の出し方は人それぞれ。また、ワークとライフのバランスの取り方も人それぞれです。経営者や上司が自分の価値観を押し付けてしまうと、先述したパワハラやジェンハラなどが起こります。その結果、経営に悪影響が出たり、上司や管理職の人たちの立場も悪くなってしまったりするのです。
また、ハラスメントを受けた従業員たちは、会社への信頼を失い、仕事へのやる気が下がり、他社への転職を考えるかもしれません。コロナ禍の厳しい状況の中、会社が大切にしなければならないのは、経営側と従業員同士が信頼し合う気持ちです。そのためにも、ハラスメントは職場から撲滅しなければいけませんね。経営側と従業員が一体となって、厳しいコロナ禍を乗り切っていきましょう。
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森 ゆき(もり・ゆき) 22年間の企業勤務の後、2015年にキャリアコンサルタントとして独立。さまざまな企業に向けて従業員の「働き方面談(キャリア面談)」を年間約100名実施する他、講師としてキャリアデザイン研修、メンタルヘルス研修など、年間約100本の研修に登壇している。プライベートでは2男1女の母親。 ▼ 保有資格 ・国家資格 キャリアコンサルタント(登録番号:16185111) ・メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種(マスターコース) ・女性労働協会 認定講師 ▼ 著書 『働き方改革は社員のモチベーション改革~プロの活用で、即効性と持続性のある真の改革を~』 (2019年5月出版) 『キャリアコンサルタントの稼ぎ方~企業領域でキャリア支援の専門家として活躍する~』 (2019年5月出版) 『~未来の挑戦に迷っているあなたへ~「女性のキャリア」のつくり方』 (2018年6月出版) ▼ Webサイト[マイキャリア・ラボ] https://www.mycareer-lab.co.jp/ https://www.facebook.com/Yukimori.Careernet/ ▼ メールアドレス yuki.mori@mycareer-lab.co.jp |
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