コラム
在宅勤務のコミュニケーション、相手によって対応の工夫と配慮を
長引くコロナ禍においても、企業の活動は続きます。特に、首都圏など人口の多い地域では、感染予防と経済活動を今後も両立させていく必要があるでしょう。そこで、在宅勤務を引き続き取り入れていく職場も多いのではないでしょうか。今回は、効率の良い仕事を実現する、在宅ワーク向けのコミュニケーションについて解説します。
◆ 自粛解除後も、半数以上が「在宅勤務を続けたい」
こんにちは。本コラムの連載をしている、キャリアコンサルタントの森ゆきです。日頃は、企業の従業員向けに、研修やキャリア面談を実施しています。このコラムでは、企業の人材活用の視点から「働き方改革の進め方」について、毎号、解説をしています。今回は嬉しい節目の連載10回目を迎えました!いつも読んでくださっている方々、ありがとうございます。
それにしても、本コラムのテーマを「働き方改革の進め方」に決めた当時は、まだ新型コロナウィルスが流行する前でした。当時と、コロナ禍が続いている現在では、「働き方改革」という言葉が持つ意味合いが変わったと感じています。その中でも最も変わったのが、「在宅勤務」の取り入れ方だと言ってよいのではないでしょうか。事務所以外の場所で仕事をするという働き方は、日本では諸外国に比べてなかなか浸透しなかったものの、コロナ禍で一気に広がりました。
民間の調査によると、感染防止のために在宅勤務をしていた人に尋ねたところ、半数~7割の人が「在宅勤務を続けたい」と答えています。また、在宅勤務を続けたいと答えた人の多くが、「仕事の効率が上がった」と答えており、在宅勤務は組織にとってもメリットがあると言えるでしょう。
◆ 在宅勤務で効率よく働くカギは、コミュニケーション
一方で、在宅勤務は「仕事の効率が下がる」と感じている人たちもいます。仕事の効率が上がる人と下がる人との違いは何でしょうか?業務内容や、自宅の通信環境の違いなどもあるでしょう。しかし、全般的に共通しているのは、関係者同士のコミュニケーションです。直接顔を見たり、会話をしたりすることができないときのコミュニケーションには、工夫と配慮が必要だと言えます。
特に重要なのは、上司が部下に働きかけるコミュニケーションです。「仕事の指示をするとき以外は部下に声をかけることはない」と言う上司は、在宅勤務の場合は要注意。気が付かないうちに、部下のモチベーションが下がっていたり、業務が進まなくなっていたりするかもしれません。具体的な用事がなくても、部下に声をかけるようにしましょう。
また、新入社員のような若手や、新しい業務についたばかりでまだ慣れていない部下には注意が必要です。このような新人には、本来なら、いつでも質問ができるようなOJT担当者が近くにいてほしいところ。しかし、在宅勤務の場合はOJT担当者がついていることができませんから、必ず始業時に、上司または担当の先輩が、新人がその日のやることなどの確認をしてください。そして、特に用事がなくても、1~2時間に1度は、進捗確認として声かけをしましょう。声かけは、メールでもSNSでも良いです。また、1日に2回は、オンライン会議ツールなどを使って顔を見て会話をしましょう。
◆ 新人は「信頼残高」がまだない
誰かとメールのやり取りをしているとき、相手の言葉のニュアンスがわかりにくいと感じた経験はないでしょうか。例えば、相手からのメールに「もっとやってくれると期待してたのに」と書かれていたら、あなたはどのように受け止めますか?日頃からよく知っている相手であれば、きっとその人の普段の様子を思い浮かべながら読むでしょう。そして、その相手と自分との信頼関係を思い出し、安心して「ごめんごめん、次はもっと頑張るよ」なんて返事を書くかもしれません。しかし、あまり良く知らない相手からのメールであれば、心配な気持ちになってしまいますよね。周囲との信頼関係の大きさを「信頼残高」と表現することがあります。職場で十分な信頼残高を持っている人は、在宅勤務でメールだけのやり取りになっても、トラブルになる心配はないでしょう。しかし、信頼残高がまだない新人や、異動してきたばかりのメンバーは、ちょっとした言葉で傷ついてしまったり、相手を怒らせてしまったりするものです。
◆ 在宅勤務中のコミュニケーションに、新たなルールを決める
あるIT企業では、今後も在宅勤務を継続していくという方針の中で、コミュニケーションのルールを設けたそうです。そのルールの一つに、「1つの話題でメールが5往復したら、オンライン会議ツールを使って顔を見て話すこと」というのがあります。メールのやり取りだけで変な誤解が生じてトラブルになる前に、対話をすることをルールとしているわけです。これは、どの職場でも当てはまりますし、特に新人とメールのやりとりをする上司や先輩が、心得ておかなければならないことでしょう。
新型コロナウィルスの影響で、一気に進んだ在宅勤務。対面とは違ったコミュニケーションに気を配って、効率よく仕事ができる働き方をしていくことが大切です。
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森 ゆき(もり・ゆき) 22年間の企業勤務の後、2015年にキャリアコンサルタントとして独立。さまざまな企業に向けて従業員の「働き方面談(キャリア面談)」を年間約100名実施する他、講師としてキャリアデザイン研修、メンタルヘルス研修など、年間約100本の研修に登壇している。プライベートでは2男1女の母親。 ▼ 保有資格 ・国家資格 キャリアコンサルタント(登録番号:16185111) ・メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種(マスターコース) ・女性労働協会 認定講師 ▼ 著書 『働き方改革は社員のモチベーション改革~プロの活用で、即効性と持続性のある真の改革を~』 (2019年5月出版) 『キャリアコンサルタントの稼ぎ方~企業領域でキャリア支援の専門家として活躍する~』 (2019年5月出版) 『~未来の挑戦に迷っているあなたへ~「女性のキャリア」のつくり方』 (2018年6月出版) ▼ Webサイト[マイキャリア・ラボ] https://www.mycareer-lab.co.jp/ https://www.facebook.com/Yukimori.Careernet/ ▼ メールアドレス yuki.mori@mycareer-lab.co.jp |
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