コラム
新入社員の教育と心のケア、今年はここからが勝負
新型コロナウイルス感染予防のため、2020年は4月から在宅勤務を取り入れる企業が多かったことでしょう。特に、新入社員は入社初日から在宅勤務となり、最初の数ヶ月を自宅で過ごした人が多くいます。これを踏まえ、今後の新入社員への対応はどのように進めればよいでしょうか。今回は、今年の新入社員教育と心のケアについて解説をします。
◆ 4月以降の新入社員対応、各企業それぞれ
こんにちは。本コラムの連載をしている、キャリアコンサルタントの森ゆきです。日頃は、企業の従業員向けに、研修やキャリア面談を実施しています。このコラムでは、企業の人材活用の視点から「働き方改革の進め方」について、毎号、解説をしています。
全国で長く続いた、新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛。特に首都圏では、多くの企業や店舗が、活動の休止を余儀なくされました。“Stay Home”が合言葉となり、従業員を在宅勤務に切り替える企業も多かったです。そんな企業は、“4月に入社した新入社員の教育をどう進めていくべきか”と悩んだのではないでしょうか。
新入社員への対応は、企業によってさまざま。予定していた新入社員向けの研修をオンラインに切り替えて自宅で毎日受講させた企業もあれば、オンラインでの対応は取り入れず、個人で取り組む自宅学習などを新入社員へ課した企業もありました。また、毎日行う朝礼や会議などをオンラインで実施して、新入社員もできるだけ出席させるといった工夫をした企業もあったと思います。
新型コロナウイルス感染の第一波が少し落ち着き、やっと新入社員の出社が始まっている企業も多いのではないでしょうか。今年の新入社員育成は、これからが勝負といえるでしょう。
◆ 2020年度の新入社員は「厚底シューズタイプ」
産労総合研究所の発表によると、2020年度の新入社員のタイプは、「厚底シューズタイプ」だそうです。最新のテクノロジーとこれまでのノウハウを集めてつくられた厚底シューズはマラソンや駅伝などでの好記録に貢献し、注目を集めてきました。今年度の新入社員は、ITの進歩と共に育ち、先輩たちのノウハウを十二分に生かして成果を出すのが得意であるということでしょう。他の言い方をすれば、今年の新入社員が成果を出すためには、上司や先輩からの適切な指導やノウハウの伝承が欠かせないということになります。また、今年の新入社員に対しては、「テレワーク・ネイティブ」という言葉も使われています。社会人生活を在宅勤務からスタートした新入社員たちにとって、テレワークという働き方に対する抵抗感はまったくありません。彼らが職場に入ってからの働き方は、これまでの常識とは違う価値観がベースにあるのです。
◆ 新人指導のポイントは「褒める」と「手順をしっかり教える」こと
民間の人材育成会社の調査によると、新入社員自身が「成長した」と感じるときと、管理職が「新入社員が成長したと感じているだろう」と感じるときでは、ギャップ(思い違い)があるようです。双方ともに「褒められたとき」に上記のように感じるという声が一番多くあり、その点の意見は一致していました。しかし、二番目に多い意見には、違いがあります。管理職は「責任ある仕事を任されたとき」に新入社員が自分の成長を感じているだろうと考えているのに対し、新入社員自身は「教えてもらったことが実践できたとき」に自分の成長を感じると答えていました。つまり、上記の調査の結果から言えるのは、「褒めること」と「やり方をきちんと教えたうえで実践させること」が新入社員の指導に大切であるということです。褒めるポイントは、下記を参考にしてください。
<褒めるポイント>
・できて当然のことでも、ねぎらいを込めて褒める
・結果だけでなく、工夫したことや頑張ったことなどプロセスを褒める
昔の指導感覚で、十分に説明をしないまま「とにかくまずはやってみろ」とやらせたうえに、指摘ばかりするような指導では、新人は自信をなくしてしまいます。今年の「厚底シューズタイプ」の新入社員は、ノウハウをきちんと伝えてあげることで力を発揮するのです。ぜひ活用してみてください。
◆ 新入社員指導、メンタルケアも忘れずに
コロナ禍において、「抑うつ感」や「不安感」を感じる社会人が増えています。特に新入社員は、社会人経験のある人たちと比較して、ストレスを抱えている割合が高いという調査結果もあります。新人がストレスや不安を感じやすい理由の一つに、まだ、周囲とのつながりが持てていないということが挙げられます。職場の人間関係の中で、まだ十分に信頼関係が築けていない新入社員は、不安な気持ちを自分から相談することが難しいです。新人を指導をするときは、メンタル面も気にかけてあげましょう。「困っていることはないか」「気持ちが落ち込むことはないか」など、指導の際には声をかけてあげてください。
今年の新入社員育成は、今からが勝負です。組織全体で育成を実施して、組織に貢献する人材に育てていきましょう。
森 ゆき(もり・ゆき) 22年間の企業勤務の後、2015年にキャリアコンサルタントとして独立。さまざまな企業に向けて従業員の「働き方面談(キャリア面談)」を年間約100名実施する他、講師としてキャリアデザイン研修、メンタルヘルス研修など、年間約100本の研修に登壇している。プライベートでは2男1女の母親。 ▼ 保有資格 ・国家資格 キャリアコンサルタント(登録番号:16185111) ・メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種(マスターコース) ・女性労働協会 認定講師 ▼ 著書 『働き方改革は社員のモチベーション改革~プロの活用で、即効性と持続性のある真の改革を~』 (2019年5月出版) 『キャリアコンサルタントの稼ぎ方~企業領域でキャリア支援の専門家として活躍する~』 (2019年5月出版) 『~未来の挑戦に迷っているあなたへ~「女性のキャリア」のつくり方』 (2018年6月出版) ▼ Webサイト[マイキャリア・ラボ] https://www.mycareer-lab.co.jp/ https://www.facebook.com/Yukimori.Careernet/ ▼ メールアドレス yuki.mori@mycareer-lab.co.jp |
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