一歩を踏み出したい人へ。挑戦する経営者の声を届けるメディア

Challenge+(チャレンジプラス)

コラム

コンサルタント・小田切社長が指南!海外進出成功への道 第13回

昨今の国内市場の縮小化を危惧し、多くの日本企業がグローバル化に乗り出しています。その中で、言葉や文化、ビジネスの進め方の違いなど、さまざまな壁にぶつかることがあるでしょう。本コラムでは、海外ビジネス経験が豊富な(株)サザンクロスの小田切社長による、海外進出におけるアドバイスをお伝えしています。前回は「日本を起点とした海外進出が必ずしも優れた策であるか」というテーマについてお話ししました。いよいよ最終回となる今回は、これまでの総括をしていきたいと思います。

 
こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。対談記事が掲載されている「躍進企業応援マガジンCOMPANYTANK」2018年3月号、そして2018年5月から連載中の本コラムには目を通していただけましたでしょうか?

最終回となる今号では、「まとめ~海外進出の心得~」というタイトルで話を展開してまいります。折しも本コラムを執筆している3月下旬に、COVID19(新型コロナウイルス)の日本国内における爆発的な感染を防ぐべく、政府や各自治体から土日の不要不急の外出自粛要請が発せられました。この件との関係性も念頭におきながら、お話を展開していきます。

海外進出の意義

内閣府の高齢社会白書(2019年版)を見ると、日本の総人口は2010年の1億2806万人をピークに減少の一途をたどっています。2020年は1億2530万人に、そして30年後の2050年には1億190万人、2055年には9740万人程度に減少するものと推定。一方で高齢化率は、65歳以上が総人口に占める比率は28.9%、2025年には30%と、急激に高齢化が進んでいきます。ここから言えるのは、人口の減少に伴ってほとんどの業種で日本国内の市場規模はシュリンクしていくということ。そして高齢化率の増加のため、就業可能な従事者数が減少するということです。

すでにこの社会構造の変化を真摯にとらえ、企業全体の見直しや、市場確保のために海外進出を推進しているケースが見られます。しかし、企業体質の根本的な見直しの必要性に気が付かない、あるいは直視できていない企業が多く散見されるのも事実です。さらに今回のCOVID 19の猛威で、国内の製造や消費市場が劇的に負の動きに陥ってしまいました。おそらく今後5年の間に、垂直落下のごとく経営が根本から崩壊してしまう企業が激増するものと、私は予測しています。しかし、いかなる事態に陥っても、人・お金・物・情報の面できちんとした対応策を講じている企業は、厳しい状況下でも何とか凌いでいける可能性があるでしょう。海外進出はその一つの方策とも言えます。

最悪の状況を想定するべき

COVID 19の影響は世界中で巻き起こっています。世界の工場と言われてきた中国や、多数の日本の製造業の工場があるタイでは製造ラインが停止、あるいは稼働率が大幅に減少し、多くのサービス業が実質上、営業活動の休止を余儀なくされました。仕事ができないため収入がなくなり、生活必需品の購入や、病院での治療を受けることができないなど、最低限の生活すらもできなくなっているケースも見られます。

いずれにせよ、最悪の状況は待ったなしで一瞬にして訪れるものです。希望的観測をしている方にとって現在は、辛抱の時期ということになるのでしょう。しかし、辛抱していればいずれ状況が好転し、自然と会社が元通りに立ち直り、従業員やその家族が救われると思いますか?もし、皆様の会社の従業員がこのような状況になったときに、会社としてどのように対応してあげられるでしょうか?

不変と可変を見極める

おそらく日本企業の大半の経営者は、「いつになったら最悪の状況から抜け出せるのか」「どうしたら企業存続ができるのか」「従業員やその家族の生活をどのように守ってあげられるのか」など、頭を抱えていることでしょう。しかし多くの方々は、COVID 19への恐怖感から何も手に付かない状態となり、日々の感染者数の推移を見守っているだけだとも推察します。

このような状況下でも弊社には、業界・業種を問わず数社の企業様からお問合せや経営サポートの依頼が届いております。例えば、海外進出の計画自体はほとんど変更せず、それに並行して国内の経営基盤の再検討を行いたいという相談。他には、さまざまなケースに対する緊急対応策をつくりたい、不測の事態に陥った際の従業員のプロテクトの方法やその処遇を考えたいなどという相談が主な項目になっています。

経営者の皆様と会話している中でわかるのは、今回の感染問題が経営改善を進めるトリガーとなったということ。「社内に持ち帰って関係者で、予算も睨みながら検討を重ねて判断をしていくというようなやり方が通用するほど、世界は待ってくれないということが、身にしみた」と、全員の方が語っておられました。

依頼を受けたそれぞれの企業様に対し、まず私が申し上げているのは、「変えてはいけないことと、すぐに変えなくてはならないこと」を明確にし、そこから海外展開を含めた対応策を至急練り上げていくということ。この部分の見極めをしっかり行ったうえで、軸がぶれないことが肝要です。

理想の経営者像

本コラムでは「海外進出成功への道」というテーマの中で、全13回にわたりさまざまな切り口からストーリーを展開してきました。繰り返しにはなるものの、海外であっても国内の展開であっても基本は一緒です。つまり、海外進出に成功している企業は国内の事業についても同様にうまく展開しています。一方で、海外に進出したが成功しなかった、あるいは進出展開の途中で頓挫してしまった企業は、国内の事業展開においてもうまく回っていないという事例を今まで数多く拝見してきました。

企業の業種や業界、規模を問わず、成功を収められている経営者には、共通する部分があります。最後に、その経営者像をいくつか挙げてみましょう。

① 絶対に一人で突っ走らない
② 役員、管理職、一般職とのコミュニケーションを良く取る
③ それぞれの分野の専門家を必ず付ける
④ 正しく、公平な判断を瞬時に行うだけの知識、学習を怠らない
⑤ 単独暴走はしないものの、強いリーダーシップを持つ
⑥ 世界情勢に明るい
⑦ 不変と可変を見極める力を持つ
⑧ ブレないこと

毎号コラムをお読みになられた多くの方から感想を寄せていただき、感謝に堪えません。あらためて読者の皆様、そしてCOMPANYTANKの皆様に厚く御礼を申し上げます。

≪コラム新連載の予告≫
多くの読者より海外展開を進めていくうえで、特にタイ人の気質やものの考え方について教えてほしい、というご意見をかなりいただいていることは前号の追記でもお話ししたと思います。

そこで、次号からはまずタイ人気質とタイにおけるビジネスを成功させるために気を付けることを中心に、コラムを新連載させていただく予定です。どうかお楽しみに。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス 代表取締役社長
小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
■企業情報
株式会社 サザンクロス
〒251-0027
神奈川県藤沢市鵠沼桜が岡1-14-4
■URL
http://sc-southerncross.jp/

 
 

<<  第12回 いつまでも日本からの海外進出? 第1回タイでビジネスを行うポイント①>>

躍進企業応援マガジン最新号

2024年11月号好評販売中!