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コラム

コンサルタント・小田切社長が指南!海外進出成功への道 第11回

昨今の国内市場の縮小化を危惧し、多くの日本企業がグローバル化に乗り出しています。その中で、言葉や文化、ビジネスの進め方の違いなど、さまざまな壁にぶつかることがあるでしょう。本コラムでは、海外ビジネス経験が豊富な(株)サザンクロスの小田切社長による、海外進出におけるアドバイスをお伝えしています。前回は「人財」か「人材」か?というテーマについて考えてきました。今回は「人事規程の重要性」という内容のお話です。

 
こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。対談記事が掲載されている「躍進企業応援マガジンCOMPANYTANK」2018年3月号、そして2018年5月から連載中の本コラムには目を通して頂けましたでしょうか?

今号では、人事規程の重要性について話を展開していきます。就業規則を中心に、人事関係、賃金関係、福利厚生関係、その他の関連規程は、会社の最重要ルールです。諸規程(以後、人事規程)があることで、社員は安心して業務にまい進できます。

人事規程は、会社が社員に対するさまざまな期待や目的を持って、その意志を文章にして表現しています。その中で、最も重要になるキーワードは「公平性」です。社員によって依怙贔屓があってはならず、また、規定で社員をがんじがらめにして、正当、正常な業務活動に支障をきたすようであってもなりません。

公平性の追求

東京に本社を構えるメーカーを想定して例を挙げます。統括部長Aさんが2泊3日で静岡に出張、一般職社員のBさんが7泊8日で札幌に出張したとしましょう。交通費実費は会社が全額負担します。その上で、1日の出張日当を2000円とし、掛ける日数分をそれぞれに支給してあげられるような規程であれば、果たして公平でしょうか?筆者としては、答えはYESともNOであるとも言えます。

もし会社として、役職・職位の違いによって1日の出張日当に差異をつけない、という方針であれば答えはYESになります。同様に、国内の出張地域による差異をつけないことが会社として公平性がある、と認識、判断していれば答えはYESになります。

一方で、役職・職位や国内の出張地域をそれぞれいくつかに分け、日当の金額に差異をつけている会社もあります。また、宿泊が伴う場合には別途宿泊日当を付与し、その日当額を日帰り出張の場合と区別・差異をつけるかどうか。さらに、1日の出張日当を2000円とすることが、出張をしない社員との間での公平性を保てているか。このあたりが処遇の公平性を決めるポイントになります。

人事規程は会社の方針を示す

会社は社員のことをポジティブに考え、さまざまな検討を重ねて現在の人事規程をつくり上げてきました。この公平性というのは、実は社員の間だけのことではなく、会社と社員との間も含まれています。

上記一例をとっても、社員からしてみれば日当が高ければ高いほど嬉しいことはありません。しかしながら会社経営の視点からすると、日当手当てを高く設定するほど経費が膨らみ、利益確保という点から経営に支障をきたすことにもなりかねません。

大事なのは一つの規程だけをとって処遇の良し悪しを決めることではありません。人事規程全般をとらえて社員をどのように処遇してあげるのか、それが会社として公平性を最大限追求でき、社員の仕事に対するモチベーションを継続的に維持できるのか。それらが重要になってきます。

海外出張者や海外勤務者(海外駐在員)の処遇について

では、海外でビジネスを行う場合、海外出張者や海外駐在員の処遇はどのようにすれば、公平性が保てるのでしょうか?

国内出張者や国内における関連会社、提携先企業への転勤者(特に地方転勤)への処遇をベースに、海外出張者や海外駐在員に対する処遇を決定していく。このやり方が、社員に対して一番合理的な説明ができる一つではないでしょうか。

筆者の経験から申し上げますと、多くの企業様は真っ先に営業活動、つまり数字ばかりを気にしながら事業を進めようとします。しかし、それでは短期的に売上面だけの追求に前のめりになり、結果的に良好な展開にならず苦労するでしょう。

一方、国内・海外の出張規程も、海外駐在員の規程も今後の展開に合わせ、営業活動と並行し再整備しながら海外展開を推進されてきた企業様はどうでしょうか。この場合、多くが事業を順調に進めていらっしゃいます。
皆様の会社ではこの点をどのようにお考えになるでしょうか?

備えあれば憂い無し

筆者がここ最近コンサルティングをさせて頂く企業様を例にしましょう。その企業様は、数年前より東南アジア複数国に食品事業を展開していらっしゃいます。筆者に依頼があったのは、すでに海外出張者も海外駐在員も派遣された後でした。海外関係者の処遇に関して当のご本人方はもちろん、社内からも何かしっくりといかないとの相談でした。そこで現状の確認をしていくと、次々に問題が湧き出してきました。

まず、国内における会社の出張規程はあるものの、東南アジア関係国に日本より海外出張者を派遣する場合も、国内の出張規程をほぼそのまま適用していること。さらに同地域には海外駐在員も派遣されているものの、その給与をはるかに上回る海外出張日当を、海外出張者は会社から支給されています。ちなみに海外駐在員給与は国内給与とほぼ同額とのことです。また、現地での税金を個人で支払っている海外駐在員に比べ、海外出張者は、現地滞在期間のその国での納税が義務付けられているのにも関わらず、会社も個人もお支払いになっていないようです。

これでは大きな期待とコストを掛けて海外に派遣した出張者や海外駐在員が、安心して仕事に集中できないでしょう。いくら経営者の方が毎月数千万円の売上を目指す売上計画を策定し、叱咤激励したところで、人事処遇に公平性がなければモチベーションも上がらず、実現できるわけがないのは明白です。

海外の新規開拓地での立ち上げ直後より売上・利益を確保したいのであれば、売上計画を立てると同時に、人事処遇規程についても見直しを掛けることが肝要です。でなければ、一番大切な社員に高いモチベーションを持って効果的に海外で活動をしてもらうことは、困難であると言わざるを得ません。備えあれば憂い無し、ということでしょうね。

今回は、人事規程の重要性について一例を挙げてご紹介しました。次回は「いつまでも日本からの海外進出?」というタイトルでお話を進めていきます。どうかお楽しみに。

≪追記≫
読者の皆様からは毎回、さまざまなお問合せを頂いております。海外展開をお考えの方々で、もし国内あるいは海外の人事についてご相談があれば、弊社ホームページのお問合せフォームから必要事項をご記入の上、送信ください。いつもご覧頂き、ありがとうございます。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス 代表取締役社長
小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
■企業情報
株式会社 サザンクロス
〒167-0032
東京都杉並区天沼1-16-9
■URL
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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