コラム
読売ジャイアンツで20年間にわたり現役生活を続けた鈴木尚広さんが、現役引退後、パーソナルトレーナーの岩館正了さんと共に2018年からスタートした「鈴木尚広のベースボールクリニック」を紹介する。
◆ 鈴木さんがベースボールクリニックを開講したきっかけは、自身の実体験にあったという。
若い頃は、がむしゃらに練習を重ねれば技術が身に付くと思い込んでおり、無理がたたってケガに悩まされることが多かったんです。その中で、パーソナルトレーナーの岩館さんと出会ってからは、10年以上にわたって選手生活をサポートして頂きました。トレーニングを通して、体にしっかりした動きを覚えさせなければいけないということを学んだんです。
◆ ベースボールクリニックは、選手の育成だけではなく、指導者やトレーナーのスキルアップを図ることを目的として立ち上げられた。スクールや講座を通じて、体のケア、トレーニング、野球スキルを総合的にサポート。技術面の指導だけでなく、パフォーマンスを向上させる体の動かし方を、理屈を含めて座学で学んでいく。そうして多角的な視点を持った指導者を育成することが、ケガをせずに長年にわたって活躍できる選手のサポートにつながるのだ。
シンプルに言うと、“センスをつくる”ということです。センスが良いと言われる選手というのは、頭で思ったことを瞬時に体の動きで表現できる人。これは先天的なものではなく、運動技能を学ぶことによって後天的に身に付けていくことができるんです。実際にクリニックでの指導を受けた後には、その変化を如実に感じることができます。そうして正しい体の動かし方を学べば、おのずとケガも減ってくるんです。
◆ 基本的な動作は「打つ、投げる、守る、走る」とさまざまで、ポジションによって必要な筋肉が異なるのが、野球というスポーツだ。そのため、選手を全面的にサポートするには、野球に関する幅広い知識が必要になってくる。
ベースボールクリニックは明確に役割分担がされていることも特長です。野球のプレーに関する知識や体の動かし方は私が指導し、なぜそうなるのかという身体的な根拠やメカニズムについては岩館さんが指導しています。さらに、脳科学者の方をお招きして科学的な視点から運動を分析してもらうセミナーなど、他分野のゲスト講師を招いての講座も開催していきたいと考えています。野球界には、幅広い視点からのアドバイスができる指導者が必要。そうしてさまざまな知識を取り入れることによって、選手にとって新たな視野が広がっていくはずです。
◆ 鈴木さんが語るように、ベースボールクリニックは非常に明確なビジョンを基に運営が進められている。そして、年齢やプロ・アマを問わず、幅広い層に、その専門的な知識やスキルを伝えていくという。
ベースボールクリニックは、私の思いに賛同して、それを共有し合える人々が集まる場。選手を本気にさせるのもトレーナーの重要な役割ですから、熱い思いを持って選手をサポートするプロ意識の高いトレーナーを育成し、全国で活躍して頂きたいと思っています。それによって、パーソナルトレーナーの評価にもつながり、野球選手はもちろん、より多くの子どもたちの体づくりやスキル向上に貢献していくことができるはず。その好循環をつくっていくことが、私たちの目標です。
(取材:2018年11月)
鈴木尚広のベースボールクリニック
URL https://www.tsbbc.pro/