コラム
信用保証協会法改正について
エッジ・テクノロジー(株)の福本と申します。私は2017年に会社を設立しましたが、その際の体験を踏まえて、信用保証協会の法改正についてお話しします。これからスタートアップされる企業様をはじめ、融資を受けるにあたってぜひ知っておいて頂きたい内容ですので、1人でも多くの方にご覧頂ければ幸いです。
そもそも信用保証協会とは、大まかに言うと金融機関から融資を希望する際、貸し倒れのリスクヘッジのために同時に審査を受け、信用保証協会が保証できる範囲で融資を受けられる機関のことです。仮に、5000万円の融資希望者がいたとしましょう。その際、信用保証協会が3000万円しか保証を可決しなかった場合、現状では融資が受けられる金額は3000万円になってしまいます。すると、その不足した2000万円で会社が倒産してしまったり、追加融資を申し込んだとしても業績が芳しくない状況であれば、貸し剥がしに陥る可能性もあるのです。
ご存じの通り、日本銀行の当座預金は「基礎残高」「マクロ加算残高」「政策金利残高」の3種類があり、マイナス金利を採用したのは「政策金利残高」のみです。マイナス金利政策前は、個人の預金を全額、日本銀行の当座預金に入れていれば、少なくとも年率0.1%の利息を得られました。しかし、政策実行後、「政策金利残高」は何かしらの形で運用しない限り、プラスの利回りが得られないことになるのです。当座預金に金利が付くのは、日本銀行の当座預金だけであるということも前提となっています。
このことで、企業への貸し出しが増加すると想定されていましたが、現状では、銀行の貸し渋り、貸し剥がしが未だ20年にもわたって継続されています。こうした銀行の体質により、スタートアップの企業や早急にリスクを感じて融資を希望した企業に対して、お金が貸し出されない状況となっていました。よって、安倍政権でどれだけ経済の活性化を掲げていても、現在の銀行の体質のままでは中小企業に資金が回らず、経済活動が停滞したままになってしまうのです。
しかし、2018年4月から信用保証制度の改正が行われます。これは、言わば銀行もリスクを被って企業に貸出しをすることで、自らリスクヘッジをしなさいという金融庁からのお達しです。具体的には、信用保証協会は社労士などを雇うことで、企業の資金繰りを観察すること。同様に銀行にも、企業の資金繰りを観察し、適宜対応、融資を行うこと、といった指示が下されています。
ここで、著者自身の体験談をお話しします。
私は2017年10月10日に会社を設立し、それから1週間ほどで「全部事項証明書」が出来上がりました。その足で都市銀行、信用金庫の口座開設申し込みを行ったところ、都市銀行では業歴が浅いということで口座開設不可となりましたが、信用金庫はそのまま2週間ほど返答がきませんでした。そこで電話で確認をしたところ、営業マンが私のもとを訪れ、口座開設は1週間ほどで完了。その後、融資の話があり500万円の融資申込みを12月6日に行いました。その際、営業マン曰く、年内には決定するとのことでしたが、12月下旬にさしかかっても何の連絡もアクションもなく・・・。こちらから信用金庫に問い合わせを行ったところ、大変な事件が発覚したのです。何と、融資の書類が2週間、信用金庫内の融資課に放置されていたのでした。そこで、営業マンが信用保証協会に直接書類を持って行き、急いでもらうように伝えることになったのですが、本来持っていくべき信用保証協会の支店を間違えていたというさらなる手違いが発生します。そして時間はどんどんロスし、通常では書類や資料は銀行の営業マン経由で信用保証協会の担当者へ渡されますが、結局私が直接信用保証協会へ行き、担当の方とお話しするというあり得ない状況となってしまいました。
懸念していた通り、融資が受けられないまま時間は過ぎていきました。最終的には私と営業マン、その上司を含めて3名で話し合いの場を持ちましたが、こちらが何を提案しても、信用保証協会の結果を待つしかなく、銀行からの直接融資(プロパー融資)はあり得ないという回答のみだったのです。
さて、その後の対応としては、まず私から信用金庫に働きかけを行いました。信用金庫は融資後のフォローなどを含め、企業の成長を手助けする活動を行っていないので、社労士や税理士に毎月フォローされていない企業が貸し倒れしてしまうのは当然です。そこで、法改正も踏まえ、企業に融資を行った以上、返済の滞りや貸し倒れとなるリスクは自らの力で回避する必要があること、そして企業を中心としたチームを機能させなければ、一生貸し渋りは消えないということを伝えました。しかし、当初は一向に「NO」の返事のみ・・・。新しく改正される制度を踏まえれば私の主張に誤りはありませんし、このままでは今後新規で設立される企業の役に立たないと思い、金融庁の貸し渋り、貸し剥がし相談センターに、一部始終の説明も記載した文章を送信したのです。それを信用金庫の営業マンにも伝えると、慌てて副支店長まで話が行き、2名が自宅に訪問。そして翌日には、資金繰り計画書を再検討し、プロパー融資の実行を可決するまでに至ったのでした。これは、まさに創業融資でのプロパー貸し渋りを打開した一番手となる出来事だと思います。
ただ、決して勘違いをしてはいけません。元の事業計画や資金繰りの計画は、あくまで予定です。その通りに実行するのが社長含め社員一同の仕事ではありますが、そうならないことも想定し、リスクヘッジがきちんと詰め込まれた事業計画をつくっておくべきなのです。例えば、1年目は設備投資などで赤字となっても、2年目から黒字化できる資金繰り計画が必要になるということです。
また、目に見えない製品を販売する場合は、可視化されている資料を用意することも重要です。特にIT関係であれば、ITリテラシーがある人でないと理解し難い世界であるため、決済を下す銀行員などにもサービスが伝わるように工夫しなければならないでしょう。加えて、地域の活性化、ひいては日本の活性化を視野に入れている計画書が作成できればなお良しだと思います。そういったあらゆる資料を完璧に準備した上で臨むことで、新規創業プロパー融資を受けられる可能性がグンと上がるはずです。
最後に、今後この制度が施行されて正しく機能し、お金がもっと中小企業に回るようになること。そして、中小企業による経済活動の活性化が行われ、現場で働く従業員たちの給与アップを実現できる環境が出来上がり、さらにより多くの創業した企業が事業継続できる環境がつくられていくことを期待しています。
(2018年1月31日)
エッジ・テクノロジー 株式会社 代表取締役 福本英之